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長崎大学にできたBSL-4とは何か/長崎日々日記


BLS4長崎大学マップ

 長崎市坂本1丁目の長崎大学医学部キャンパス内に先月30日、国の感染症研究の拠点となる「BSL-4」施設が完成した。

 BSLとは「バイオセーフティーレベル:biosafety level」の略称。レベル4は取り扱うウイルス・細菌レベルで危険度が最も高い。

 Wikipediaによると、その「リスクグループ4の病原体」について以下の説明がされている。

 「ヒトあるいは動物に生死にかかわる程度の重篤(とく)な病気を起こし、容易にヒトからヒトへ直接・間接の感染を起こす。有効な治療法・予防法は確立されていない。多数存在する病原体の中でも毒性や感染性が最強クラスである」

 具体例を挙げれば「エボラ出血熱」「ラッサ熱」など、致死性の極めて高いものが知られる。エボラ出血熱については直近の例で2018年にコンゴ民主共和国で流行、死者200人以上を出している(Wikipedia)。

 「(このような重大な感染症が)日本でいつ起きてもおかしくない」と研究者は警鐘を鳴らす。

 レベル3ながら、2001年にアメリカで殺人事件に使われた「炭疽菌(たんそきん)」や、エイズウイルスなども当然、研究対象に入る。

 炭疽菌は、第二次大戦中、生物兵器として各国で研究が進められた。国は、その真の目的を明言することはないが、細菌兵器による戦争、すなわち「バイオテロ」に備えるための本格的研究施設という側面も併せ持つのでは、という疑念は容易に成り立つように思える。

 長崎大学HPによると、世界の国・地域で59か所以上のBSL-4施設が稼働しているという(2017年12月現在)。

 現在、世界を混乱の極に陥れている「コロナウイルス」はレベル3対象の施設でも扱う。もちろん、長崎大の同施設でも研究の視野に入る。現段階で実際に発現、また未知のタイプが予見される「コロナ変異株」の研究、ワクチン開発、その他「防疫」の拠点を担うことは明らかであろう。

 まだ施設は完成しただけで本格稼働はしていない。「大学側は研究者の感染事故や災害・テロなどを想定したマニュアルの策定を進め、機材の搬入を経て来年度から研究者の訓練と検証を行う」(7月30日付朝日新聞)。厚労省査察を受け、対策が十分と認められた段階で、ウイルス実験に移る。

長崎大BSL-4②

わたしは8月のある日、現場へ見学に行った。その“巨大さ”に度肝を抜かれる。5階建て、延べ面積5300平方メートル。医学部キャンパス最大級の威容を見せるといっても過言ではない。その大きさに比較して、わずかに壁に抜かれた小窓に、不気味な「機密性」を覚えずにいられない。

 施設の建設計画が示されたのは2010年。

 2019年末から2021年にかけて世界を席巻、いまだ解決の見通しが立たないコロナウイルスの蔓延(まんえん)。その潜在的危険性を予知して建設を目指したとすれば、あるいは「卓見」と言えるのかもしれない。

 コロナウイルスの発生源については、「中国・武漢市にある動物市場で売られていた野生の中型哺乳類からヒトに感染した」自然発生説が、とりあえず有力とされている。

 しかし、ここにきて中国・武漢にあるBSL-4施設から、ウイルスが漏洩(ろうえい)したとの説が、再び取り沙汰されるようになってきた。これはトランプ前大統領が「武漢ウイルス」と呼んで、中国敵視策に利用した“陰謀論”のたぐい、とこれまで一蹴されてきたが、最近になって、一定の根拠がある可能性が示されはじめた。

 元共同通信記者の田中宇(さかい)氏は、開設するサイトで「米政府のコロナ対策の最高責任者であるアンソニー・ファウチCDC所長が、ずっと前から所長をしていたNIAID(アレルギー感染症研究所)で、武漢ラボのコロナウイルス研究に公金の支援金を不正なやり方で出していたこと」を指摘している。この疑惑について、ファウチ氏が窮地に立たされていることが先日、一般紙(朝日)でも一部報道された。

http://tanakanews.com/210604corona.htm
〈田中宇の国際ニュース解説〉

端的にいうと、「米中共同開発の生物兵器が漏洩して新型コロナに?(田中氏)」という疑惑が高まりつつある。科学的根拠による裏付けがないので、あくまで“政治的に有力視”されている段階にとどまっているが、田中氏の分析を読むと、あながち無視できる話ではないように感じられる。


 以下はわたしが知る医師(ドクター)との会話である。

わたし:「先生、BSL-4の施設があんなにでかい、とは思いもしませんでした。直感的に『しまった!』というか、認識不足だったと反省したんですが…もっと平屋の研究施設みたいなものを考えてました」

ドクター:「あ、それはボク、最初からわかってたよ。ほら、テロ対策とか災害対策とかあるじゃない。いわば原発と同じ感覚で衝撃に耐えられるように造ったら、ああなるよね」

わたし:「あの施設で、当然、これからコロナウイルスの研究とか進められますよね。あのう、まだ“陰謀説”の色が濃いのは免れないんですが、中国の武漢ではコロナウイルスの研究がされていて、その漏洩説がネット情報でにわかに再び注目を集めているんですけど。長崎大の施設からコロナの新たなウイルス株とか漏れる可能性はないんでしょうか」

ドクター:「……………」

わたし:「どんなにウイルスの安全対策とったとしても、仮にですよ、研究員が施設外に持ち出したりしたら、防ぎようがないじゃないですか」

ドクター:「研究者には、『自分の研究成果を試したい』という誘惑が常にあるからね。(遺伝子操作で)開発したウイルスとか細菌を実地で検証して結果を見たい、という気持ちからは逃れられない、かもしれないね」

わたし:「じゃあ、新種の弱毒性コロナウイルスを長崎市内でばらまかれて、あらかじめ準備したワクチンで収拾を図ることまで視野に入れ、実験が行われるということも、荒唐無稽な話じゃないってことですよね」

ドクター:「……………」

ドクター:「あの施設、例えば小型ミサイルぐらいの攻撃にも耐えられるようにできているんじゃないかと思うんだよね」

わたし:「なるほど、そんな感じの堅牢さがありますね」

ドクター:「だから、仮にどこかの国と紛争起きかけたとき、『脅し』に使えるよね。ミサイル打ち込むぞ、という…。原爆落下地点はすぐそばだからさ、その心理的効果は、ある意味抜群だよね。ナガサキ(と日本)を恐怖に陥れるにはね」

わたし:「……………」


 医師との話はそこで途切れてしまったが、「原発神話」と同じで、「世界のBLS-4施設でウイルスや細菌の施設外漏洩が起きて、事故につながった例はない」と大学側が強調しても、やはりさまざまなリスクは存在する。

 現場に立てば、その周囲を威圧する異様さと危険性が、じわじわと肌で実感できる。

 実は日本ではBSL-4の施設は2か所目で、最初に東京武蔵村山市にできた。だが住民の反対運動が激しく、稼働が著しく遅れた。2015年8月から実働しているが、武蔵村山市自体が「将来的な移転」を条件に実験開始を認めた経緯があり、既に移転に向けて協議会が設置されている(NHK2020年8月5日ニュース)。

 茨城県つくば市にある理化学研究所筑波研究所は当初BSL-4規格で建設されたが、完全稼働できず、BSL-3レベルでの実験しかできていない。

 今後、長崎のBSL-4施設が国の期待を一身に担って、その中心的存在を目指すことは自明の成り行きとみられる。

 運営を担うのは長崎大学熱帯医学研究所(熱研)。

 熱研はコロナ研究と熱心に取り組んでおり、天然のアミノ酸から合成される5-アミノレブリン酸(5-ALA)が、新型コロナウイルス感染症に対して強い抑制効果を発揮することを発見。製薬会社のネオファーマジャパンと協力し、「コロナに効く」サプリメントの開発に貢献して話題になった。

 長崎大が熱研を軸に「世界の感染症研究の最先端を行く」ことへ、「野心を燃やしている」というのは、言い過ぎだろうか。これは果たして市民と世界に望ましい結果をもたらすのか。

わたしは後悔している。

 「とんでもないものを長崎が抱えてしまった」。将来に禍根を残すようなものを容認してしまったのではないか。

 今はまだキャンパス内は自由に出入りできる。そのうち、医学部生であってもIDカードの提出をしなければ入構できないほど、キャンパスの警備は厳重になるだろう。その日はたぶん、遠くない。


追記:BSL-4施設の巨大な壁面を見たとき、「どこかで見たような建物だな」と思った。わかった。すぐそばに立つ「浦上天主堂」の色使いとそっくりなのだ。ビルの両脇に”ドーム”を思わせる「二本の柱」が立ち、壁面にもドーム状のデザインがある。つまり意図的に「教会建築」を模している。原爆落下中心碑から浦上天主堂に至る地区は、いわば長崎の「平和」を象徴する空間。そのエリアに溶け込むように? 隠れるように? 細かい配慮がされていると解釈した。

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