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令和時代のリーダー論

部下を持つ人が一番悩む、「上司の在り方」「リーダーの役割」。
私も係長として何人か部下を持つ身になりまして、日々至らなさに辟易としております。

下っ端の頃には持っていた理想の上司論がいざ当人になると上手くいかない。自分の仕事で手一杯な中、部下のフォローができずチームが瓦解しそうになる。そんな自分を見直すために、今一度理想のリーダー論を見直すため記事にしました。
参考にいただければ幸いです。

令和のリーダー論

昭和は、上意下達※の軍隊式根性論。ボスの命令は絶対の24時間働けますかの時代でした。
(※「ジョウイカタツ」って読むって知ってました?)

平成は、チームワークでマルチタスク。「マネジメント」という言葉が浸透し、下からの命令と部下からの突き上げに板挟みになる中間管理職の悲哀が生まれ、リーダーシップという概念が浸透し始めた時代でした。

こんな比較があります。
「ボスは部下を追い立てる。」「リーダーは人を導く。」
「ボスは権威に頼る。」「リーダーは志、善意に頼る。」
「ボスは失敗の責任を追わせる。」「リーダーは黙って失敗を処理する。」「ボスはやり方を胸に秘める。」「リーダーはやり方を具体的に教える。」

引用:https://corobuzz.com/archives/17326

Twitterでバズりそうなネタですね。
ボスはまるでパワハラ上司。リーダーは模範的な先輩上司といった感じで目に写りますが、本当はどうでしょうか?

例えば一番最後の比較をみてみましょう。
「ボスはやり方を胸に秘める。」「リーダーはやり方を具体的に教える。」

個人的には、問題に直面したときにボスは答えを知っていてもすぐに教えず部下に考える時間を与える。リーダーは具体的に教えてしまい、部下の思考経験を奪ってしまっている。とも見えます。

では、なぜボスだとパワハラ的に映ってしまうのか。あるいはリーダーだとなんだか優しそうで模範的なように感じてしまうのか。

それは、あまりに極端な対応がすぎるからです。
理想のリーダーとは、TPOに応じてボスにもリーダーにもなれるハイブリッド型の上司になれることであると私は思います。
それも絶妙な配合でボスでもありリーダーでもある存在になれることだと思います。
例えばこんな配合はどうだろうか。一つの事業のロールプレイングをもとに自分なりの理想論をまとめてみました。

キックオフはリーダー。出口戦略はボス。

①キックオフとして与件整理などのオリエンテーション
②企画概要のブレス
③作業ベースで企画設計
④予算確保・根回し
⑤KPIに向けて事業実施
⑥事業フォローアップ・見直し

私が企画系の仕事をしているので、それになぞらえて①~⑥までの業務ステップを記しました。
理想のリーダー論の結論としては、①~③はリーダーより、④~⑥はボスよりに振る舞うのがいいかなあと思っています。

ポイントは「自主性・多様性」と「規律性」のバランスの変化です。

①~③はたくさんのインプットが必要な作業であるため、多様な意見が必要になりますし、メンバーの熱意ややる気が必要になります。
どんどん攻めてもらうために、聞き役に徹してチームの熱量を最大限にしていくことが必要になります。これをボス型のスタンスでしてしまうと、

「部下にやれといったのに、なかなか思った企画が上がってこない。」
「自分の意図していたものと全く違うものが出来上がってくる。」

みたいな、担当者の理解不足・能力不足・経験不足として処理されてしまいチームのやる気はダダ下がり。暗礁に乗り上げ試合終了です。

これはよくない。ここはリーダーとしての性質をしっかり活かすべきです。

クライアントあるいは社内の決裁者からどういう仕事を発注されていて、それが何を意図しているものなのか、いつまでに誰の決裁を得る必要があるのか、想定されるターゲット・KPI・予算規模はいくらなのかをメンバーにきっちり説明して、枠の設定を共有します。
割合としては、ボス1:リーダー9くらいです。

このときいくつか、大切にしなければならないポイントがあります。

まずは、教育目的で苦手分野の仕事をさせないということ。
なんでもできる広く浅くできるジェネラリストを育てるっていうのは公務員でよくあるんですけど、ナンセンスな話だなと思います。
苦手分野に対しては最低水準を達成できればよくて、新しい価値を生み出せるように長所を伸ばす方がチームの力の総量としては必ずいい結果がでるからです。個人ではなくチームをみることが大切です。
デザインが得意ならその線の事例研究を、フレームワークが得意な人には企画設計の案だしをさせるのが適切です。

もう一つは担当者の責任の不在です。対外的には責任者(ここではリーダー)、決裁者の責任ですが、実態としては担当者の責任であることを明確にしておく必要があります。
担当者が責任感とやりがいを持たない仕事はハリボテのようなものばかりです。ではどうやってそれを持たせるのか。
一番は裁量を持たせることです。メンバー自身が物事を決めてそれを上にしっかり上げていく。そしてがんばりをしっかり評価してあげることが大切です。

最後にスケジューリングの曖昧さをなくすことです。締切いっぱいの仕事をやっていくと何でもギリギリのスケジュールになってきます。むしろ新しい仕事がどんどん入ってきて、後ろ倒し後ろ倒しになってしまいます。
大枠でしっかりスケジュールを共有しつつ、まずは80%を3日で仕上げさせること、残りの20%を一週間かけて詰めていくのが理想でしょう。
試作を作っておくことで、イメージのブレが減り、戻りや直しも少なく時間を有効活用できます。大きなプロジェクトほどタスクを細かに分解して小さな仕事をショートな時間でしっかり仕上げて積み上げていくことが必要なので、リーダーとしてしっかりマネジメントしましょう。

前提条件が明確になったところで、あとはメンバーとブレインストーミングです。企画のコアになるキーワードや事例を探してあやふやながらも道筋をつけていきます。リーダーは否定しません。ひたすら肯定して尾ひれをつけて話を広げていきます。

ブレストの終盤。ようやく方向性の絞りにはいります。ここら辺がボス2:リーダー8くらいです。メンバーの意見も重視しながら数案の方向性を決めて、企画の肉付けをメンバーにまかせます。あがってきた企画書をふるいにかけつつ、案を1つに絞りながら、企画の解像度を上げていきます。この過程で事例研究や見積もりの内訳なんかの調査もかけながらやっていきます。ボス3:リーダー7くらいの感覚です。

さぁいよいよ企画書が完成しました。ここから予想される問題点や課題感、過去の事例との比較、費用対効果をしっかり積み上げて、予算確保や企画採用のために幹部やクライアントとしっかり折衝していきます。当然リーダーはすべての情報を把握しなければなりませんし、メンバーは短期間でしっかりとリーダーの発注に応えつつ+αの情報を共有する必要があります。いよいよボス4:リーダー:6です。ちょっとづつボスのウェイトが上がってきてリーダーは苦しいところ、あんなに和気あいあいとやってたのにいざ提出になると詰められだす。部下からの冷ややかな視線にも耐えながらしっかり成型していきます。

企画が採用され、いよいよ実装です。ここからは計画に沿って淡々と処理をしつつ、情報の一本化、思考の一本化が必要になります。ここでメンバーの多様性を尊重しだすと現場が混乱します。

「上からはこう言われているんですが、自分は違うんですよね~。」
みたいな話がどんどんでてきます。
自分がクライアントだったらこんなこと言われたらどうでしょうか?


「やってることと、言ってることが担当者によって違うぞ。」
「この組織は意思統一もできないのか。信頼できないな。」
となるわけです。

多様性のターンはすでに終えていて、ここから先はしっかりと責任者が手綱を握り、叱咤激励しながら一本の道を進むだけです。ただ軌道修正はありえます。一本の道の行先を変えるだけです。
ただ、寄り道はありえません。寄り道を作るのはリーダータイプの悪い所です。実行すると決めたその瞬間からそのミッションを終える間は、ちゃぶ台返しになるような多様な意見など不要です。現場と連携して必要な意見だけを吸い上げることが大切です。
ただし、軌道修正するための多様な意見はしっかり活かす必要があるので、よい落としどころを探して感謝を示すことがリーダー的な性質として求められる部分です。

さて、事業もいよいよ中盤戦。進捗状況とKPIの達成率が気になるところ。
足りない部分に必要な戦力を割かなければならず、しわ寄せを受ける者がでて不満がでてきます。進捗が遅れメンバーを詰めなければならない場面がでてきます。KPIが未達成見込みでねじのまき直しが必要にもなってきます。
部下を導いている暇などありません。
なんて言ってたらチームは崩壊です。緊急事態とまではいかずもピンチである。こういうときはリーダーの存在が不可欠です。原因を追求しながら、必要な施策を短期間で処方するために、リーダーが現場に入って検証と試行を繰り返し、具体案を展開していくことが大切です。
ボス:2 リーダー:8の割合です。

ただ、ここでもしも緊急事態、トラブルや過失があり早急に物事に対応しなければならない場合。重大な事案によりプロジェクト実行の可否が分かれる場合は、ボス:8 リーダー:2の割合が有効です。
とにかく指揮系統を明確にすること、情報の集約とチームとして統一された動きが必要であるため、リーダーが現場に入ってしまうと上手く回りません。大切なのはTPOで、ここの見極めが本当に難しいところで、経験がものをいう世界だと思います。
ただこのリーダー:2を持たない上司は責任者失格です。ボス10の人間が何をするかというと部下をしかりつける、人格を徹底的に否定し、本人に向かって締め上げるように詰めだす、責任を部下に押し付けることをしだします。

必要悪なんだと自分に言い聞かせながら。

リーダー2をもつとはどういうことなのか。
部下に状況を確認し、解決策の考え方や指針を指導しながら明確な改善策を出させる。誰の何が悪いかではなく、事象に対する原因を究明して必要な処置をする。ヒトが悪いのではなくコトが悪いのだというスタンスでしっかり問題を締め上げます。ただし、日和っていては成果を達成できません。

大切なのはバランスです。どちらかだけによると成果を達成できないばかりかパワハラで大切なメンバーを失ってしまいます。適度な緊張感とプレッシャーを与える適切な環境づくりを心がけるべきです。ただし、上司が思っている以上に部下は負担を感じるもの。コミュニケーションを怠らず、適度にガス抜きをしましょう。

さぁ事業も最終盤。
大勢が決し、あとはモレなく、ダブリなく事業の点検をしながら、報告書作成のために成果と課題、分析と提案をまとめる必要があります。

より細かい、より解像度の高い作業が必要になります。ただこの段階ではある意味KPIも大勢が決しているところ、もがいてどうにかなるところではないので一番のプレッシャーを与える場面ではありません。よくKPIを達成できそうにないと檄を発する管理職がいますが、もはや無駄です。そういうのは中盤でやってくださいって話です。

精査には数字の分析も当然入ってくるので、それなりに厳しい視点が必要です。ここでようやくボス:9 リーダー:1です。

もうお分かりになると思いますが、ここでボス:9になっても定型的な業務になっているので詰める場面はもうありません。むしろ成果の管理は軍隊式でしっかりとした方が後々役に立ちます。お疲れ様です。もうボスの嫌な役割も終わりです。

どんなときにもボスであり、そしてリーダーであること。
TPOを間違えなければボスが有効な時もあること。
TPOを間違えればリーダーも害になること。

自戒を込めてボスとリーダーを持ち合わせた令和型のリーダーになれるよう精進しなければ、自分も部下も幸せになれません。
幸せになれなければいい仕事ができません。
自分のためにも部下のためにもしっかりリーダーとしての自覚と研鑽を積んでいきたいと思います。

おまけ:よりよい部下との関係性を作るために

①報連相

社会人の第一歩。新入社員にみんな口酸っぱく言っているかと思います。
「報告・連絡・相談」はしようねというやつです。
ただ、この報連相は部下に向けての言葉ではなく、上司に向けての言葉です。「あなたは部下が報連相しやすい環境を作れていますか?」ということです。
部下が話かけづらいコミュニケーションをとっていないか。イライラした様子を見せていないか。話しかけづらい雰囲気を作ったり、境界線をつくっていないか。ということです。
いつでも相談していいんだよ。あるいは忙しそうだったらチャットに入れてくれたらいいよ。というととても報連相しやすいと思います。
同時に、何かあったら自分が責任を持つからというしっかりしたメッセージを部下に伝えることで、よりよい関係性を築くことができるのではと思います。

部下があらしっかり上司に対してコミュニケーションがとれるような人間関係を作っていくためには仕事上の責任として上司がしっかり逃げずに部下と向き合うことが報連相しやすい環境づくりになると思います

②WHAT<WHY

仕事を発注するとき、WHAT(何をするか)よりWHY(なぜするのか)をしっかり共有すべきだと思っています。結局部下も資料作成したり施策を練っていく中で彼ら自身の判断基準を持って行います。
なぜするのかを議論しておかないとこの判断基準がブレて手直しの増加や無意味な施策展開につながってしまいます。

例えば10代の女性向け、それも学生向けの商品展開なのに、
「若い女の子が好きそうなポスターを作って。」
だけを伝えると、20代の社員は自分の好きなビジュアルを作ってしまいます。
これが、
「10代の学生。女の子が受験に疲れたときに使ってもらえる商品として、伝えたい。共感と認知を同時に得られるポスターを作って。」と伝えるとさっきよりもより伝わりますよね。
もちろん具体的なコミュニケーションをとるために上司自身が的確な知識を持っていることが大切ですが、不足していたとしても部下とコミュニケーションをとれば解決策はでてきます。WHATよりもWHYをしっかりチームとして掘り下げるようにしましょう。

③人は管理できない

チームワークの良くしていくために上司が一番してはいけないことは、人を管理することだと思います。
部下はこうあるべきというものを押し付けて、自分の分身を作ろうとする一番失敗に繋がります。では何を管理するのか、それは環境です。
①報連相もそうですが、部下が仕事をしやすい環境を作ってあげる、仕事がしやすいように根回しをしてあげる、行き詰まりそうなポイントにそっと入ってあげる、それだけで十分なパフォーマンスを発揮することができます。

厳しく指導しても何も生まれない、むしろ極端なストレスをかけることによって人の本来持つべきパワーを発揮できないことがほとんどです。
その人の得意を伸ばしてあげる、苦手な分野をカバーする、そのために適切な課題とプレッシャーをあたえることが環境づくりに大切なことだと思います。自分の思い通りに動かせる自分のものさしに合う人間を育てるというのは上司のエゴであることをしっかり認識することが大切だと思います。


すごい偉そうなことを書いてきましたが、すべて自分の失敗からの経験則です。つまり私が書いたことは自分自身の失敗としてやってしまったことでもあります。チームを崩壊に招いたこともあります。

また同じ過ちをしないように。みんながもっとよい仕事ができるように。
また今日から襟を正していきたいと思います。