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「不時着」

モノクロ作品「不時着(FATE IS THE HUNTER)」(64年・米、ラルフ・ネルソン監督)。

70年代に入って流行る航空パニックものの先駆的作品かなぁと思ったけど、ちょっと違った。

LAから飛び立った旅客機が突然、原因不明のエンジン・トラブルで事故を起こし炎上。たった一人のスチュワーデスだけが生存する。

事故調やマスコミが原因を調査するが、機長が飲酒したとか性格的問題に要因があったとされる。その結論に反発した同僚だった部長が関係者から事情聴取を行い、機長の過去を調査、次第に機長の人物像を明らかにしていくという機長の汚名挽回、名誉回復の物語だった。

で、事故当日の様子を生存したスチュワーデスとともに細部にわたって再現した結果、事故の真の原因は、操縦席の配線の蓋に、機長が、スチュワーデスにもらったコーヒーをうっかりこぼしたことで基盤がショート、操縦不能になったことだった…えー!そんなんかよっ!(笑)まあ、昔はスチュワーデスも自由に操縦席に出入りできたし、ありえないこともないとは思うけど。

機長と調査をした部長との第二次大戦時の体験などを盛り込みながら亡き機長の全てを明らかにしていくところはサスペンスのように面白かったけどね。

考えてみれば、こういうたくさんの人が死ぬ大きな事故も、生死を左右される出来事も、ほんのちょっとしたミスや気の緩み、判断が元になって引き起こされることが多いのだな。

引いては、人生が大きく動く瞬間も、決して予想できる大きなことだけじゃなく、小さな偶然の出来事の積み重ねかもしれないよね。

そして、他人から見れば、本人の真実は永遠にわからないことも多いし。

映画では、調査に走った部長が事故調の席で“運命論”を挙げるが、コーヒーをこぼした件のみならず、ひとつひとつの小さな偶然の重なりが一気に集まることで大きな悲劇が生まれる。つまりは、人間は、予測不能の偶然の連鎖をコントロールすることは絶対不可能で、ただ翻弄されるしかないのだということを教えてくれたような気がした。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。