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生粋の「台湾独立派」主席誕生でも「中華民国」の旗を降ろせない民進党

 「台北政府」(自称「中華民国」)の与党である民主進歩党は、今年1月15日頼清徳「副総統」を主席に選出しました。頼主席は台湾独立派であると見られています。
 一方で、マスコミ報道によると日本やアメリカは頼主席の思想に危うさを感じているということです。

 民進党は00年代の陳水扁政権で台湾独立を目指すような動きを重ね、中台の現状維持を望む日米から不信を招いた。日米の外交関係者によると、日米両政府には、頼氏の対中姿勢への警戒がくすぶる。
 頼氏は主席選での公約で具体的な対中政策に触れていない。

石田耕一郎「台湾与党党首に頼氏 蔡氏後継」『朝日新聞』2023年1月16日朝刊

 この記事から判るのは、①日本とアメリカが台湾独立に反対していることと②頼清徳主席は台湾独立の持論を封じていることの2点です。
 アメリカはあくまでも「中国内の民主化勢力」だからこそ「台北政府」を支援しています。それは香港のいわゆる「民主派」を支援するのと同じロジックで、アメリカは香港独立までは支持しません。
 チベットや東トルキスタン(ウイグル)でもアメリカはあくまでも「人権問題」としての位置づけです。中国がチベットや東トルキスタン、南モンゴル(中国名:内モンゴル)、満洲(中国名:東北地方)の独立を侵害しているとは認めないのです。
 少し話は逸れますが、露宇戦争により中長期的には米中接近は進むと考えられますので、アメリカはこの方針を変化させないでしょう。中国が露宇戦争で中立を保ち積極的なロシア支持をしないのは、ドネツクやルガンクスの独立を認めながらチベットや東トルキスタン等の独立を認めないのは困難である上に、中国国内にもロシア民族の居住区があるという現実的な問題もあるからで、さらに中国が中立を保っている以上は冷戦期のようにアメリカと戦略的連携の余地が残るということもあります。
 一方、日本の場合はそこまで深いロジックがある訳ではなく、「一つの中国」を認めつつ「中国の範囲は判断しない」という方針を維持するためには「どこが中国化の判断を迫られる状況」が生じたら困る、というのが本音でしょう。
 つまり、もしも台湾独立が宣言でもされたら日本としては「台湾は中国の一部か、否か」の判断をせざるを得ない状況になります。そう言う判断を避けるのが日本政府の一貫した方針です。
 また、頼清徳主席自身も台湾独立を貫くだけの強い意思は無いでしょう。
 台湾独立論を唱える場合、『中華民国憲法』を破棄するか当初から台湾及び澎湖諸島においては無効であった、というロジックになります。これは我が国におけるいわゆる「憲法無効論」と同様の結果を辿ることになります。
 つまり、日本でも鳩山一郎首相が国会の場で公然と『日本国憲法』が「本質的に無効のもの」と発言し、今でも立憲民主党の小沢一郎先生が「純粋法理上は、日本国憲法は無効」との見解を抱いていますが、これらの政治家は自分が権力を握っている時でさえ、積極的に『大日本帝国憲法』の復原・改正には動き出していません。ただ過去に小沢派の松木謙公先生が『大日本帝国憲法』の復原・改正を求める請願の紹介人になるようなことがあった程度です。
(余談ですが、小沢一郎先生は思想的にはかなり右寄りであるのに「自民党=保守」という印象操作を行いたい全マスコミ並びにネトウヨ及びリベラル派の共同謀議により、こうした事実は全て一般には知られないでいます。『大日本帝国憲法』の復原・改正の請願が行われていたことすら、知らない人が多いでしょう。)
 フランスでも第三次共和政の際にアンリ5世を再び国家元首とする案が浮上しましたがアンリ5世がフランス革命以降の憲法の無効に拘ったため頓挫したことがあります。
 頼清徳主席がもしも『中華民国憲法』の無効を宣言するだけの気骨があれば別ですが、現実の彼は孫文の写真に向かってナチス・ドイツ同様のローマ式敬礼をしている人物です。昭和天皇の前での「カニ歩き」を拒否した部落解放同盟の松本治一郎委員長のような気骨は無いでしょう。
 従って、今後の頼主席は「本音を隠して」権力の座を伺うことになると考えられます。
 こうした頼主席の「穏健化」に対し、中国国民党は徹底した「クリンチ作戦」で挑んでくると思われます。

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