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芳华 -youth-

 1か月ほど前になりますが「芳华 -youth-」を見ました。
とてもしっとりして良い映画だったので、感想を書いてみます。

 舞台は70年代~80年代(文化大革命~改革開放の時代)に、日本でいう自衛隊の吹奏楽隊のような、軍のPR部隊「軍隊文工団」に青春を注いだ人達の物語です。

在充满理想和激情的军队文工团,一群正值芳华的青春少年,经历着成长中的爱情萌发与充斥变数的人生命运。(理想と情熱にあふれた軍隊文工団、まさに青春真っ只中の少年達が、愛情の萌芽と運命に翻弄されながら成長する物語)
本文:http://baike.sogou.com/v152679761.htm?fromTitle=%E8%8A%B3%E5%8D%8E

 芳华 [fāng huá]とは香しい花の意味で、比喩的に青春時代を表す言葉のようです。ストーリーは大まかに分けて「文工団での生活」「ベトナム戦争期」「改革開放~その後」の3段階です。

 文化大革命時代の生活・雰囲気を知らない私にとっては映画の一つ一つが新鮮でした。前半の「文工団での生活」では、いじめなどのいさかいもありつつも、社会主義時代の平等性(貧富の平等・男女の平等)や、生活の中の幸福、資本主義文化をこっそり楽しんでいる様子等が描かれています。特に女性隊員が自室でジーンズをはいてキャッキャとしたり、どこからか入手したテレサテンのカセットテープを聞いたりするシーン等、その時代を感じることができるシーンが映画全編に渡ってちりばめられており、とても勉強になりました。

 もう一つ、この前半場面で監督は、文工団の若者の「健康的な美しさ」を撮ることに非常に注力されています。その後の「戦争突入期」ではベトナム戦争への派兵や野戦病院の救護シーンで、その美しい若者達が戦争によって壊されていく姿を、「改革開放~その後」では、かつては寝食を共にした同志間にある競争社会の名言されない階級が描かれています。
 ストーリーは時系列かつ戦争や改革開放等の史実に基づいて作られているのですが、それだけに、この後半の歴史や社会の残酷さと前半の若者たちの美しさが対照的で、何となく若者の美しさが前半時代が美しいにすり替わるような錯覚が、、まさに「文工団」の広告塔としての威力を身をもって体験したのかもしれません。

 映画自体は文化大革命万歳な内容ではありませんが、若者の美しさを前編に用いたこと、戦争という分かりやすい悪を媒介に後編の現代社会の残酷さを描いたことは放映審査の目をかいくぐることに一役買っているのかな、と考えたりしました。
 なおこの映画は2015年前に放映開始予定だったものの、上映9日前に延期になり、2年の時を経てようやく放映されたそう。監督のインタビューによると、今回の放映に当たって削除されたシーンはないとのことです。南沙諸島等から北の方へ国民の関心が移ってきたから解禁されたのでしょうか。2015年頃は退役軍人の待遇に関する不満が高まっていたため、という記事もいくつか見ました。

 ちなみに主人公刘峰は以前感想を書いた「ブラインド・マッサージ」の主役を務めた黄轩。刘峰は主人公だし、映画を見る限り皆からの人気も高いしイケメン扱いなんだと思っていましたが、後から映画の登場人物紹介を見るとこんな設定でした。

刘峰:质朴善良,是文工团里最不起眼的男兵,但他主动包揽了团里的脏活累活,因此获得模范标兵表彰,因为经常为大家服务,深受整个文工团的喜欢,而且对别人也非常友善。 
(刘峰:素朴で善良、文工団の中で一番見栄えがしない男性兵士だが、団内の面倒な汚れ仕事を積極的に引き受け、模範兵士として表彰された。皆のために働くため、団員全員から好かれており、人当たりもよい)

 なるほど、だから皆彼に対して好意的なのに、あんなにあっさり振られちゃったのね…と納得。中国語がもっとできれば言葉の端々からすぐに見て取れたのかもしれない。勉強しなければ。

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