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文章で表現できるもの

気がつけばもう11月も終わろうとしている。ベランダに出て冷たい夜風を感じた時、小学校の教科書に載っていた物語の言葉を思い出した。

「霜月二十日の晩」

作品名は『モチモチの木』。斎藤隆介の文章と滝平二郎の強烈で幻想的な切り絵が印象に残っている。

思えば私は、国語の授業に随分と恩恵を受けてきたようだ。「文章」が持つ鮮やかさ、いさぎよさ、テンポの良さといったものに感動しながら、育ってきた。

中学校の教科書に載っていた、ねじめ正一の『六月の蠅取り紙』。「六月は乾物屋の地獄だ。」という、冒頭の一文は衝撃的だった。物語の最初に、ちょっと皮肉で切れ味のある、こんな文章を置いてしまうなんて、なんてカッコイイのだろう。

こちらは古文だが、中学校で習った平家物語。「那須与一」のリズミカルな文章が大好きだった。「与一、鏑(かぶら)を取って番(つが)ひ、よっぴいてひょうど放つ……」今でも一部を暗記している。

高校の現代文で習った、芥川龍之介の「羅生門」の最後の一文。「下人の行方は誰も知らない」。闇の中にタッタッタッタと足音を響かせながら消えてゆく男の姿が目に浮かぶ。元々はもう少し説明的な、別の文章だったらしいが、これ以上のラストはないだろう。

誰かを真似しても、「これだ!」と思って書いても独りよがりになってしまうけれど。私は、色彩や残響を、文章で表現したいと思っている。



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