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当たり前の「不便」にアンテナを立てる

雨の日の車

例えば、雨の日に車に乗るときありますよね。傘ってどこに仕舞います?

私は30年以上車に乗っていますが、これいつも迷うんですよ。小雨程度なら気になりませんが、大雨の時、いちいち後部座席のドアを開けて傘を入れようとすると、その一瞬でずぶ濡れになる。助手席の足下に置こうとしても、だいたい運転席やギアノブの部分がビショビショになる。これって、少なくともこの30年、変わらない不便なんですね

運転席ドアの内側に、傘をスッと挿せるものを作れないんだろうとか、運転席を開けたら雨に濡れないようにホロのようなものがガバッと開く構造にできないのだろうかとか(これは構造上難しそうですが)。いや、別に濡れることに神経質なオヤジではないんですよ。でも、大雨の時にいつもこれ思うんですよね。特に、荷物を持っていると最悪に不便じゃないですか。

最初に思ったのが20年くらい前で、まあいずれそんなのが出てくるだろうと思っていたら、いまだに「へー」と感心するような商品を見かけない。今も久しぶりに検索してみましたが、あまり変わり映えしない印象です。もしかしたら、傘のホルダーではなくて傘自体を工夫した方が早いのかもしれません。あるいは、私が思うほどみなさん不便に思ってないかな、とも思ったり。

お客さんの現場を見て

あるいは、これはニッチな話ですが、製造業って油が付きものなんですね。工業用の潤滑油とか切削油とか。で、あれを定期的に入れ替える必要があるわけです。特に水溶性の切削油剤はそうしないと、中の水分が腐って工場中が亀の水槽の臭いになります。えらいことです。また、水分のない純粋な油でも、長年放置していると腐ります。

そんなとき、工業用のバキュームクリーナーで油を吸い上げて、それをドラム缶に移して、産廃業者に処理を依頼するのです。その際、バキュームからドラム缶に手作業で移しているところが多いんですね。これ、やってみたらわかりますが、相当な肉体労働です。バキュームに設置している缶が約20リットルですが、だいたい15リットルくらいのところで吸引が止まります。それを、200リットルのドラム缶に移すのです。ドラム1本移すのに、その作業を12~13回やるわけです。ちょっとした筋トレです。普段動いてない人は、腰や肩を痛めます。やる前にストレッチが必要です。仮に機械の油剤タンクが800リットルだとすると、ドラム4本分その作業が必要です。新人にそれをやらせると、その日に退職届が出るでしょう

そこで、こういう商品があれば楽なのにと当社でアタッチメントを作りました。それがこれです。

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これは、バキュームクリーナーとドラム缶を直結させるアタッチメントなのですが、これにより直接ドラム缶に古い油が入るので、肉体労働をしなくて済みます。

実はこれは別に真新しい商品ではありません。現在も、他社製品で少しあるにはあります(ネットでは数社出てきます)。ただ、値段が結構高く、使っているところも少ない。これをどう呼ぶのか、一般的な名称も存在しない。

様々な製造業の人に聞くと、意外にもこの商品の存在も知らないところが大半でした。知らないので、ニーズが顕在化していたわけではありませんが、潜在的には必ずあるはずです。なので、こういう加工を得意とする顧客に依頼して、自社で作ってみました。メインの材料は、いろいろ試した結果、ホームセンターで売っている塩ビパイプに行き着きました。

味も素っ気もない見た目でしょ?(笑)いいんです。一瞬で汚れる現場用のものですから、見た目よりも耐久性です。

アンテナ次第で見えるものが違ってくる

と、個人的にいつも思う「不便」を書いてみましたが、言いたいのは傘ホルダーやドラムアタッチメントのことではなくて、日常的過ぎてほとんど感じなくなった不便にアンテナを立てると、思わぬ商品アイデアが浮かんでくる。こともある(笑)。ということです。「これどうして長年同じ形なんだろう」というような思考の習慣ですね。消費者からすれば「なるほどその手があったか」という商品が浮かんでくるかもしれません。

それが売れるかどうかはわかりません。自社商品は、いくつかの試行錯誤は必ず必要なものでしょう。その試合で一回だけ出てくる代打選手よりも、コンスタントに打席に立っているスタメン選手の方が、相手ピッチャーを攻略できる確率は高いはずです。これまで経験のない人が、満を持して一発勝負を仕掛けても意味がありません。ビジネスの中で「一発勝負」は、ほぼ失敗します

ただ、たくさん商品を作りたいしアイデアもあるけれど、予算がないという人も多いでしょう。そんな時に「打率」を上げる方法を、次回書いてみます。

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