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経営のヒリヒリ感について

ここでも書きましたが、私は元プロボクサーです。といっても、17歳のときにライセンスを取っただけなのですが、当時(15~20歳くらい)は本気で打ち込んでいて、寝ても覚めてもボクシングのことばかり考えていた、、、というと相当ストイックな感じですが、まあ生活のすべてはボクシングのために設計されていたのは間違いありません。

すべてがボクシング優先で、アルバイトもトレーニングがてらの新聞配達(一石二鳥、でも天候次第で相当ハード)と、日曜日の果物屋さんくらい。そんな毎日でした。

今もずっとボクシングは大好きで、ジムに入門する前の、単なるファン時代から数えると、もうボクシングマニア暦は40年になります。

他の格闘技は、実は並以下の興味です。理由は、単純に『わからない』からです。ルールはわかるのですが、勝負どころの機微というか。微妙なところがわからないので、選手の精神状態も想像できず、個人的には圧倒的に面白みに欠けてしまうのです。

ボクシングのヒリヒリ感

ボクシングの何がそんなにいいのか?少し自分なりに考えたことがあります。

試合を見るのは世界タイトル戦が多いのですが、世界戦って、文字通り人生が変わる瞬間なんですよね。まさに、オリンピックの決勝戦みたく。今は昔ほどではありませんが、それでも「元世界チャンピオン」と「元世界1位」では、その後の人生は180度違うといってもいいと思います。

そんな人生の大きな分岐点に、リアルタイムで立ち会えるっていう興奮ですね。

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(ボクシング界最高峰「WBSS」の試合会場)

文字通り人生を変える瞬間。それまで、少なくとも3ヶ月くらいは、この試合のためだけに調整をしてきたわけです。世界戦ともなれば、これまでのキャリアの集大成。過酷な減量もハードな練習も、この日のためだけにやってきたのです。

選手としては、もうこんなの二度と無理と思うようなヒリヒリ感です。文字通り、この試合で死ぬかもしれないわけで。実際、それで挫折する選手もたくさんいます。というか、その方が多い。テレビに出てくるようなスター選手は、そこを勝ち残ってきた稀有な存在です。

経営のヒリヒリ感を楽しむ

それはさておき、この「ヒリヒリ感」って、ギャンブルにのめり込む人も共通して求めるそうです。これを使ったらもう生活費がないのに、一発逆転を目指すヒリヒリ感がやめられないのだそうで。

「一緒にすな」と言われそうですが、恐らく脳の部位は同じか、近接した場所なのでしょう。

そしてこのヒリヒリ感、会社を経営してる人も感じたことがあるのではないでしょうか?

契約が決まるかどうか。あるいは、月末資金が足りるかどうか。。。そんな自転車操業するなって?おっしゃる通りなんですが、でも現金商売じゃない以上、お金の出と入りのタイミングって必ずズレます。

CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)は、短ければ短いほどいいし、何ならアマゾンのようにマイナス(通常あまりありませんが、それがマーケットプレイスの強みです)なら、どれだけ安定した経営ができるか。仕入原価を支払う前に、エンドユーザーからの入金があるわけですから。

前月の売上が少なくて入金が少ない。そんな時に限って、一番大きな支払いが来る。そんな時もあるわけで、資金繰り予定表見てヒリヒリ。何とか支払ったけど、通帳残高を見て「これ会社の残高じゃないよな」と自己嫌悪したり。

そんな経験ねーよ?それは素晴らしい。このヒリヒリ感は、ダメな経営を告白しているようなものですが、たぶん多くの経営者が経験していることでもあります。

当然、いいヒリヒリ感もあるんですよ。

打ち出した商品やサービスが受け入れられるかどうか、とか、渾身のプレゼンが通るかどうか、とか。そこで成功体験をすると、癖になりますよね。

達観する、慣れる、相談する

できれば、いいヒリヒリ感を常に感じていたいものですが、悪いヒリヒリ感に慣れておくのも、また大事なことです。慣れるというか、心乱さずに受け止めるという感じですね。

心が乱れると、だいたい打ち手を誤ります。ここでも書きましたが、ビジネスなんて所詮は人間が作り出したゲームです。資本主義経済も国家も貨幣も、すべてバーチャルなもので、その中で作り出した暇つぶしゲームなんですよ。少々哲学的ですが、それくらい達観していいと思います。

それによって、人生終わってしまうようなことがあってはならないのです。絶対に。

幸い、日本はセーフティネットがかなり充実している国です。仮に、最後の最後、いよいよ打ち手がなくなったとしても、何とかなるんです。

それ以前に、マーケティングやM&Aで必ず道は拓けます。私がマーケティングとM&Aを仕事にしているのは、その理由です。

悪いヒリヒリ感でメンタルやられてしまったら、必ず視野狭窄になるんですね。何も見えなくなる。人に相談することもできなくなる。でもヒリヒリ感は必ず来るので、小さなヒリヒリに慣れておくことが重要です

そして、やばいなと思ったら、必ず誰かに相談しましょう。ただし、銀行や弁護士はダメですよ。余計にヒリヒリする回答しか来ないですから。

特に借入れしてる銀行に相談すると、親身になってくれる担当者もたまにいますが、基本は目線が厳しくなります。信頼関係ができてない場合だと、貸し剥がしにつながる可能性もあります。

弁護士なんて、現預金数百万あるなら、そのお金で会社潰しちゃいましょう、とか平気で言いますから。彼らは経営の素人ですが、法的に潰したい(それが商売なので)ばかりに「いやー、これはもう無理でしょう」とか言うでしょう。そうすると、ただでさえ心が折れている人は、もうそこで再起不能になってしまうのです(もちろん、そうじゃない弁護士もいますよ、念のため)。

相談相手は間違ってはいけません。経営の再建、M&Aなどを専門にしている会社や人はたくさんいます。私もその一人だし、私の周りにもいます。感性的な悩みをせずに、まずそのような人に相談してみてください。

必ず打ち手はあります。

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