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言語学習の「日常会話レベル」って難しすぎない?

英語が話せる人は、よく謙遜で「まぁ日常英会話くらいなら」と言う。

だから、なんとなく日常英会話よりもビジネス英語の方が難しいような位置づけになっているけれど、それって本当だろうか?

日常英会話とビジネス英語はどちらの方が難易度が高いんだろう。

日本語で考えてみると

日本語で考えると、ビジネスで使う日本語よりも日常会話で使う日本語の方が圧倒的に難しい気がする。

日本の敬語はすごく難解だし、ビジネスメール作成とかはすごく難しい。日本人の私でも堅苦しい丁寧なメール文を作成するのは苦手だ。

でも、会話だけならどうなんだろう。とりあえず「〜です。」「〜でした。「〜でしょうか?」「〜していただけますか?」を知っていればなんとかなる気がする。

問い合わせ窓口での仕事や接客、秘書など高レベルな日本語返答能力が求められる仕事はともかく、一般的な会社であればそれで十分コミュニケーションがとれるはず。

私は日本にいたころ化粧品会社の営業として働いていたけれど、取引先との会話で堅苦しすぎる敬語は敬遠されていたし、上司とのやりとりで「いたみいります」なんて日本語使ったこともない。「〜です。」「〜でした。」「〜でしょうか?」「〜していただけますか?」で事足りていた。

でも、日常会話はそうはいかない。

「今◯◯にいるんだけど、ワンチャン今から会えない?」
「パンダかわいすぎる。もふもふしたい。」
「この野菜炒めごはんすすむ!」

これ、日本語勉強中の外国人が聞いたらパニックにならない?って思う。

■「今◯◯にいるんだけど、ワンチャン今から会えない?」
「〜だけど」
は基本的に反対のことを述べる時に使う接続後だ。英語で言う「but」にあたる。なのにここでは「so」的な感じで使われているから、初めて聞いた人には「???」となりそう。

しかも「ワンチャン」ってなに?わんちゃん?こういう流行り言葉もすぐに現れてすぐに消えるから難しい。

しかも、今◯◯にいるのに、”今から”会えないかっていう質問も不思議に感じそう。この「今から」は厳密に言うと15分〜30分後だったりする。聞いているほうも、”たった今”を指しているのではなく、5分以上30分未満くらいの近い未来を指している。だからここも混乱しそう。

そして極め付けは「会えない?」だ。「会えない」は否定系なのに、語尾を上げることで疑問形になる。ここも慣れていないと「???」となってしまいそう。

「パンダかわいすぎる。もふもふしたい。」
「パンダかわいすぎる」はまぁいいだろう。「〜すぎる」の使い方に違和感はあるかもしれないけれど、パンダがとてもかわいいということで理解できるはず。

問題は「もふもふしたい」だ。「もふもふ」は形容詞として使うことが多いのに、それがいきなり動詞になったらびっくりするんじゃないか。

しかも難しいのは「ふわふわしたい」とはあまり言わない点だ。「ふわふわしたい」と言うと、「空を浮いてみたい」「地に足がついていない人間になりたい」といったニュアンスになり、全く違う意味合いになる。

ちなみにメキシコ人の夫は「ふわふわ」と「もふもふ」の違いがあまり分かっていないし、私だってどう説明していいか分からない。実家で飼っているビション・フリーゼはふわふわしてるし、もふもふもしている。家で使っている毛布だってふわふわしているし、もふもふしている。でもふわふわともふもふは似ているけれど違う。難しい。

■「この野菜炒めごはんすすむ!」
日本ではおかずがおいしくて、ごはんがすすむということがよくある。でもこれを日本語勉強中の外国人が聞いたら、「ごはんがすすむ」ってどういうこと??となりそう。

「すすむ」ってめっちゃ難しい動詞なんじゃ?と思い辞書を見てみると、思ったよりも意味があって驚いた。

①前方に向かって動く。動いて先へ行く。前進する。「一歩―・んで礼をする」「出口に向かって―・む」

②物事がはかどる。進行する。「仕事が―・む」「研究が―・む」「開発が―・む」

③ 盛んになる。勢いがつく。「暑さ続きで食が―・まない」

④ 物事の程度・状態が、その度合いを増す。

㋐上達する。進歩・進展する。「世の中が―・む」「先進国の―・んだ技術を学ぶ」

㋑階級・段階が上がる。昇級・昇進する。「管理職まで―・む」「中学に―・む」「決勝戦に―・む」

㋒病状などが悪くなる。悪化する。ひどくなる。「近視が―・む」「インフレが―・む」「自然破壊が―・む」

⑤めざす方向に行く。ある分野で身を立てる。志す。「法曹界に―・む」

⑥ 乗り気になる。積極的になる。「気が―・まない」「―・んでつらい仕事を引き受ける」

⑦ 他よりも先を行く。先行する。「―・んだ考えの持ち主」「この時計は日に一分―・む」⇔遅れる。

⑧ はやり立つ。高ぶる。

「家思ふと心―・むな風 (かざ) まもりよくしていませ荒しその道」〈万・三八一〉

⑨ あふれ流れる。

「涙の―・むをさらぬ体 (てい) にもてなし」〈保元・中〉

goo辞書

「すすむ」って実はめちゃくちゃ難しい単語だったことが判明。

しかも「ごはんがすすむ」って、ごはんとおかずを一緒に食べる喜びを知らないとなかなか理解するのが難しそう。

というのも、パンによく合うおかずがでてきたところで「パンたくさん食べれる!嬉しい!」とはならないし、メキシコ人は「おかずがあるからトルティーヤたくさん食べれる!嬉しい!」とはならない。パンもトルティーヤも、「おかずと一緒にたくさん食べれる=喜び」とはならない気がする。

だから「ごはんがすすむ」のニュアンスってなかなか理解するのが難しそうだな、なんて思った。


だから日常会話のほうが難しくない?って話

これらは今たまたま私がパッと思いついた例だけど、その他にも難しい表現ってたくさんある気がする。

自分自身を思い返しても、基本的に友達と話す時は意味不明な日本語ばかり使っている。

でもこれは日本語に限ったことではなくて、英語もスペイン語も韓国語も同じなんじゃないかなって。流行り言葉もあるし、その国の文化背景を知らないと理解できないこともある。

ということで、日常会話は奥が深いし「とりあえず日常会話レベル」ってほど簡単なものではないのではないというのが私の結論。ビジネスで使う言葉よりも難しい気がする。

とは言っても、言語の目的は「完璧に使いこなす」のではなく「コミュニケーションをとる」ものだから、多少分からないことがあったって、もっと簡単な表現を使えばいくらでも会話はできるんだけれど。

「ごはんがすすむ」が分からなくたって、日常生活で困ることはないし。そう考えると、ミスが許されないビジネス英語の方が難しいんだろうか?


うーん、どうなんだろう。


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