いつだって選ばなかった未来は美しい。雲の上の『La La Land』

※一応映画の個人的な感想を書いているので、まだ観ていない人は気をつけてください。

公開された直後に日本で観て、アブダビに向かうフライトの間にもう一度観て、そして今日、イタリアからアブダビに戻るフライトで、三度目の『La La Land』 を”して”しまう。

タップシューズに履き替えて、夜になりかけの丘の上で、私だって踊りだしてしまえたらどんなに楽かと思わせるその映画は、夢見がちな少女のままおばさんになってしまった私のようなアラサーを随所で巻き込みながら、彼と彼女の物語を淡々と過不足なく進めてゆく。

『La La Land』 にはじまり、『La La Land』 に終わった旅だったなと、エジプトのカイロを越えるあたりでもう一度泣きそうになりながら私は思う(実際に、一度目は日本で最後に少しだけ泣いた)。

何に泣くのかといえば、「選ばなかった未来はいつだって美しい」。

何ゆえの美しさかといえば、たぐりよせなかった選択肢はいつの時代も「表面だけ」捉えて回想されるという部分。

きらめいて楽しそうで、「もしその人生を生きていたら」と、時に笑い飛ばしてしまいたくなる程の魅力で私たちを襲ったりすることもあるだろう。

過ぎた過去は刻一刻と美化されて、いやな部分もかなしい気持ちも、「こんなのもう我慢できない。耐えられない」と思った瞬間もたしかにあったはずなのに、そんな事実はなかったように「あぁなんて楽しい時間だったのだろう」と微笑んで、「よい人生の一部であった」とパタンと音を立てながらアルバムを閉じさせる。

混んでいる高速道路、進まない車の列。その中で突然歌い出すイエローの彼女の遠くを見つめる瞳の色が、まぶたの裏に焼き付いて離れない。「City of stars」と聞こえたら「Are you shining just for me?」と続け、「Someone in the crowd」なら「If you're the someone ready to be found」と重ねて歌う海外の空の下。

もし街中でピアノの音色に出会ったら、地下であろうと屋上であろうと私も引き寄せられてみたいと思ったし、春のプールサイドで歌をリクエストする機会があったなら、私も「I Ran」と言ってみたりしようと思う。そしたらいつか、何か運命の人に出会えたりもするかしら。

***

「いつだって選ばなかった未来は美しくて、過ぎ去った過去も美しい」。じゃあ選んだ「今」は、何だろう?

結局何を選んでも、人生は同じ場所に行き着くんじゃないかと私は思う。

違うのは、隣にいる人だったり暮らす街だったり、毎日口にする主食だったりするのかもしれないけれど、「私は私」で「大切にしたいこと」ってそう大差付かないのではないかしら。

大事なのは「この道は自分が選んだ」ときちんと納得できるかどうかの点で、悲しいかなどんな境遇に置かれていても、「どこかしらに自分が選んだ痕跡」はそこかしこにあるはずなのだ。

そういえば余談だけれど、大きな会社を辞めてみたら上司をなくして「文句を言えない辛さを知った」。

1年をかけてたくさんの国を旅してみたら、「憧れの矛先が減ってしまってどこか物悲しくなり始めた」。

手に入らないかもしれないけれど、手に入るかもしれないと切望する何かや、叶わないかもしれないけれど、いつか叶えてみたいと願う夢。

それらを一切排除した「今」があったら、それは果たして素晴らしすぎる世界かな?

結局、今日いちにちをたくさん笑って機嫌よく、楽しく生きられたらそれが一番美しい生き方なのではないかと、なんだ、『La La Land』を観ながら歌いながら、今日も私は思っている。

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伊佐 知美

ともみの部屋 #2

伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜

コメント1件

コメント失礼いたします。知美さんの言葉をいつも楽しく(どきどきしながら)読ませていただいております。

「いつだって選ばなかった未来は美しくて、過ぎ去った過去も美しい」。結局何を選んでも、人生は同じ場所に行き着くんじゃないかと私は思う。これまで色々な選択をしてきたわたしにとって、この箇所がとてもとても沁みました。

憧れや切望する何か、そういうものがある人生は時に苦しいですが、知美さんが最後に書かれているように、そういうものが一切ない世界は、もしかしたら物足りないのかもしれません。気付きと、肩の力を抜く余裕をいただきました。ありがとうございます。

世界のどこかで言葉を紡がれている知美さんを、これからもわくわくしながら見つめております!
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