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集う酒場を、新たにはじめよう。

あがりこぐちを閉店する。

そう情報を解禁して、5日ほど時間が経った。
情報を解禁してから、お店を流れる時間はいつもよりも早くなった気がする。もう少ししたらこの空間は思い出の場所として、記憶の中でしか存在しないことになる。そういう思考が、きっと相対性理論を具現化させてるのだろう。

いつもお店で流しているclammbonの曲をへビーローテションさせながら、今いるこの空間で過ごす時間を愛おしく思う。
そして、その愛おしく思う時間もあとわずかになってきた。
相対性理論のせいなのか、ipadの調子が悪いのか、いつもより曲が早く終わるように感じる。

そうか

あがりこぐちは終わるのか。

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「魔王」を倒す冒険者たちを送り出す。それが僕がお店を作った時に掲げたコンセプトだった。(詳しくは下記のリンクをご覧ください)

世界を変えようとしている冒険者たちが、様々な人たちと出会い、新しい歩みを始める。そんな空間にしたかった。それだけを考えて、4年間、このお店を続けてきた。

この4年で福山市をはじめとした、多くの方々がお店に足を運んでくれた。遊びに来てくれたお客さんはそれぞれの人生を生きていた。そして、その人生の貴重な数時間をお店で過ごしてくれた。その時間で新たな知見や仲間との出会いが幾多と現れた。お店に来てくれた人の中には転職した人もいる。新しい挑戦を始めた人もいる。

世界という単位は人それぞれだ。半径5mの生活圏を大切にしている人もいれば、地球上に存在する「社会」という大きな構造にハッキングをし、歪みを正そうとしている人もいる。世界という単位に大小は存在しない。それぞれの人生という世界を冒険すればいい。

僕はどこかしら、満足していた。

だが、その満足を超える光景を見てしまった。

2021年10月のとある日、僕が東京で働いていた時の企業の元上司(社長)とそのお連れさんが来店したときだった。元上司含むお連れさんたちはメディアなどでよく見る起業家や研究家たちだ。「社会」にハッキングをかけ、世の中の歪みを正そうとするタイプの人間たちだ。
その人たちが小さな居酒屋でまた社会のことを語り、そして、あがりこぐちの常連たちと酒を酌み交わしているのである。

そうだ、これだ。
これが見たかった。

世界の単位は人それぞれ。しかし、その単位が違えば、混じり合う機会は著しく減ってしまう。どちらも尊い世界線なのだ。どうせなら仲良くなったほうが、この世の中は前進する気がする。

半径5mを愛おしむ人たちは新しい世界を垣間見る。
社会にハッキングをかける人たちは肩書きを解かし、フラットな場を楽しむ。

この時、僕はこれまで以上に満足そうな顔をしていたそうだ。
きっとそうだろう。あれほどに感情が沸き立ったのは久しぶりだ。
その顔を見ていた仲の良い藍染をしている後輩の男の子が僕に言った。

「あがりこぐち、第1章の完結ですね。」

この瞬間、閉店することを決めた。
それと同時に、次のステップに進む覚悟が決まった。

今の空間だけでは、僕の目指す場は完結しえない。
来てくれる人がくつろぎと楽しさと学びのある場ができる。もっともっといい場所にすることができる。

この刹那。
新しい空間とそこに集う景色が
果てしなくクリアに、きらびやかに
僕の脳内を埋め尽くした。

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あがりこぐちは閉店する。

それは今までみんなが愛してくれたあがりこぐちだ。

多くの出会いがあり、別れがあり
時には歌を歌い。カウンター全員で悩む人の相談に乗り
様々な物語があった。

藍染の後輩が言ってくれたように
これは物語の第1章だ。

今、この文章を書いているこの時間は第1章のエピローグであり、後日譚のようなものである。

そして、第2章開幕までのプロローグでもある。

さぁ、新たな物語を始めよう。

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あがりこぐちは
福山駅前の伏見町に移転する。

移転先は僕の敬愛する先輩が経営していた飲食店。
そこも大きな愛と優しさの流れるお店だった。
そのお店も2021年12月をもって閉店する。
(おそらく22年1月の中旬までのんびりやってそうだけど)

愛と優しさのあふれていた空間を引き継ぎ
あがりこぐちの第2章をスタートさせる。

より、多くの人が集い
新しい知見や出会いが生み出され
これからの冒険を楽しむ冒険者のくつろぎの場を目指す。

これからはもっと若い世代も関わる。
それは中学生・高校生もだ。
僕ももう27歳だ。次の世代と僕や僕よりも上の世代とフランクに話せる空気感をこれから福山の街に作っていこうと思う。

さらに、クリエイティブな人材も集まるだろう。
カメラマン、デザイナー、ライター。
アーティストもしかりだ。
デザインもアートもそれぞれ集うだろう。
新しい知見との出会いだ。

生産者さんもフランクに遊びにくるだろう。
全国の生産者さんが遊びに来てくれて
実際に食べてるお客さんと食材やお酒について語り合うだろう。
そこには情熱と好奇心の融合する空間ができる。

そして、これまでの常連さんたちに集ってほしい。
これまでのあがりこぐちを見て、愛してくれた人たちが
また、楽しい時間を一緒に作っていきたい。
今あるこの空間は僕が作ったものではない。実際に足を運んでくれたお客さんが作り上げたものだ。
置いているオブジェだけでは、お店は作ることはできない。
お店の空気感というのは、お客さんが作ってくれたものだと思う。
だからこそ、また、お店を一緒に作りたい。

笑い、泣き、時には悩み事を一緒に悩む。

死ぬその時までの長い時間が流れるなかで
小さいカウンターに集まり
また、その時を一緒に過ごしたい。

さぁ、あがりこぐち第2章のプロローグは
はやくももうじき終わる。

第2章の正真正銘の開幕の
目撃者に一緒になってください。

これからもどうぞ
あがりこぐちという
冒険者が集い
カオスを楽しみ
愛の溢れる小さなお店を

愛していただけると嬉しいです。

僕も頑張ります。

じゃあ、またね。

記事を読んでいただきありがとうございます。ただいまお店は長期休業中のため、当店のレモンサワーを封印しております。店舗継続のため、もし記事を面白いと思っていただけましたら、サポートをしていただけると嬉しいです。