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自治会の総合的機能と地域代表性

≪おごおりトーク19≫

前回は、自治会の特性として「ルーティン化による活動の継続性」について考えてみましたが、今回着目したいのは、自治会の「総合的機能」と「地域代表性」です。

いずれも小郡市の地域資源である「地域住民の相互扶助による支え合いのシステム」を有効に活用していくためには着目すべき“特性”だと思います。

まずは、自治会の「総合的機能」について。

自治会は、PTAや消防団などのように特定の分野に特化した活動を行う組織とは違い、住民生活に関わるあらゆる分野(防犯、防災、教育、環境、福祉など)を活動範囲とする地縁組織であることから、その意味において、地域の住民生活を包含する総合的な機能を有しているといえます。
つまり、自治会の「総合的機能」とは、自治会が住民生活に関わるあらゆる課題をその守備範囲としていること、そのことを構成員である地域住民が許容していることを意味しています。

以前「地域包括ケアシステムと住民自治」の中で、ふれあいネットワーク活動と自治会活動を一体化して取り組むことの有効性は、自治会の「総合的機能による付加価値と相乗効果」だと述べました。

これは、例えば、地域の広報配布活動が高齢者の安否確認につながるという付加価値を生み出したり、特定のボランティア活動が他の自治会活動への参加に拡がるという相乗効果をもたらすことがあります。
もともと異なる分野の別々の取り組みが自治会活動として一体的に取り組まれることによって、新たな付加価値を生み出したり、相互に相乗効果を高めることが期待できるのは、この自治会の守備範囲の広さと地域住民の許容力、つまり自治会の「総合的機能」によるものだといえます。

ここで着目したいのは、自治会の「総合的機能」によって、自治会活動と一体化して取り組まれることの有効性です。これは最小の資源(人員や経費)で最大の効果を生み出す自治会活動の“強み”であり、この“強み”を活かさない手はありません。

次に、自治会の「地域代表制」について。

そもそも自治会は、地域の一定エリアを範囲として、そこに居住する住民を包括的に構成員とする地縁組織であることから、その自治会を代表する自治会長(区長)は、その地域の住民を代表(代理)するという「地域代表性」を有していると考えられます。

それは、それぞれの自治会が毎年総会を開催し、活動方針や予算、役員体制、規約などを民主的な手続き(全員参加や代議員制)を経て決定していることからも明らかで、自治会の代表者としての自治会長(区長)は、その地域の住民の負託を直接的に受け、地域住民の意思を代表(代理)する立場を有することになります。

実は、この「地域代表性」は行政にとって非常に都合のいいもので、本来、地域住民の合意を得るためにひとり一人の住民の意思確認を行わなければならないところを、この「地域代表性」によって自治会長(区長)の意思確認をもって地域住民の合意を得たとみなすことができます。
ただし、私の経験上、自治会長の意思確認をもってしても地域住民の合意が得られたとはならないケースもあり、そもそも自治会長の裁量としてどこまで住民の負託を受けていると見なせるのか、その判断が重要になると思います。

ただ、この「地域代表性」も自治会の“強み”であり、着目すべき特性の一つであることに違いありません。

では、自治会の共同体である校区まちづくり協議会(以下「まち協」)は、この「総合的機能」や「地域代表性」の特性を有しているのでしょうか。結論から言えば、まち協は、自治会のような「総合的機能」や「地域代表制」は有していないというのが私の考えです。

まち協が「地域代表制」を有しないのは、そもそもその地域の住民から直接的に負託を受けた組織ではないことが理由です。

まち協は、地域の自治会等の共同体ですので、これら構成団体とは直接的な関係にありますが、団体の構成員(地域住民など)とは間接的な関係でしかありません。※一部、個人でまち協に参加している例もありますが…

現在のまち協の代表者(会長)や役員は、各構成団体の合意で選任されてはいるものの、そのことをもって団体の構成員(地域住民など)から直接的に負託を受けているとはいえないと考えています。

また、まち協が「総合的機能」を有しないのは、そもそも自治会に屋上屋を架した組織ではないことが理由です。

平成26年度当時の「協働のまちづくり実施計画」では、まち協と自治会との関係性を位置づけており、「まち協は、校区の自治会や各種団体との連携・協力のための共同体であること」「それぞれの自治会が行う地域活動を、まち協は重層的に補完するものであること」「まち協が設置されても、従来の自治会の役割が、まち協に移管されるものではないこと」が記載されています。このことから、まち協は自治会と同じ機能を有した屋上屋の組織ではないことが確認できます。

小郡市の地域自治の基盤となるのは地域の自治会活動です。まち協はこの自治会活動を校区単位で補完・支援するものであり、自治会を代理して(差し置いて)住民生活に関わる課題解決に直接的に取り組む組織ではありません。

以前、あるまち協において、地域住民からの要望により樹木伐採の取り組みが提起されたことがあります。しかし、この課題は、まずは住民の負託を受けている自治会が課題解決に向けて取り組むべきものであって、構成団体である自治会の意向も踏まえずに、まち協が住民要望を受けて直接的に取り組むものではないという議論がありました。

つまり、まち協は自治会のように住民から直接的に負託を受けた「総合的機能」を有する組織ではなく、あくまで校区の自治会や各団体との連携・協力のための共同体なのです。(この「共同体」という性格が重要だと思います。)

自治会とまち協の活動範囲(住み分け)が不明確だという意見もありますが、その指摘は適当ではなく、自治会とまち協の機能や特性の違いを踏まえれば、その役割分担は自ずと明らかになると思います。

このように、まち協は自治会のような「総合的機能」や「地域代表制」は有しないというのが私の考えです。

もし仮に、まち協が自治会と同様に「総合的機能」と「地域代表性」を有する組織だとするなら、それは自治会の上にさらに同じ組織を重ねた「校区版の自治会」にすぎないことになり、まち協の趣旨とは逆行した自治会統合論や不要論につながりかねません。

以前、まち協の「校区まちづくり計画」の論議の中で、本来まち協は「校区まちづくり計画」を策定する立場にはないと意見したことがあります。それは、まち協がこの「総合的機能」や「地域代表制」を有した組織ではないことが理由です。

まち協は地域の自治会等の共同体であり、まち協自体は校区全体のまちづくり活動を守備範囲とした組織ではありません。そのまち協が策定する「校区まちづくり計画」とは、一体誰のための計画なのか?この点が、いまだ私の中では疑問です。

また、最近、まち協が市に対して要望書を提出するケースもありますが、果たして、住民から直接的な負託を受けていないまち協が、地域住民の意思を代表して要望する立場にあるのだろうか?という点もはなはだ疑問です。※要望内容によるのかもしれませんが。

そもそも「協働のまちづくり実施計画」においては、まち協に、「校区まちづくり計画」を策定するための「総合的機能」や、住民を代表して市に要望するための「地域代表制」は想定していなかったと思うのですが…。

これまで、小郡市の自治会やまち協に関する意見を忌憚なく述べさせていただきましたが、これはあくまで私個人の見解です。まちづくりに関しては、個々人の視点や考え方によって様々な意見や見解があることも承知していますし、それらを否定するつもりもありません。

むしろ、自治体職員として小郡市の地域自治の現状と課題をどのように見て、これからのまちづくりの方向性をどう考えるのか、所管を超え、立場を超え、世代を超えて、まずは職員相互で大いに語り合うことが必要だと思っています。
(2021.10.13)

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