見出し画像

自治会活動の延長に防災活動を置く

≪おごおりト−−ク34≫

地域の防災力の強化と自主防災活動の活性化についてはこれまで何度か述べてきましたが、今年1月の能登半島地震を受けて、あらためて防災士の視点から地域の自主防災活動をテーマに考えてみました。

今回は、自治会活動の延長線上に自主防災活動を位置付けることについてです。過去トークと重複する内容も含まれますが、どうぞお付き合いください。

自主防災組織が自治会と一体的に組織される理由(わけ)

地域の防災力の強化のために最も重要なことは、地域住民の「共助」の力による自主防災活動の活性化です。
小郡市では地域における防災体制の確立を目指して、自主防災組織を中心にした「共助」の体制づくりを推進しており、平成24年度から現在までに市内62の自治会(行政区)全てに自主防災組織が設置されています。
しかし、毎年のように豪雨災害が発生している状況下において、地域の自主防災組織がほとんど機能していない実態が浮き彫りとなっており、自主防災組織の実働的な体制強化が課題となっています。

では、災害発生時に自主防災組織が機能していない要因は何でしょうか。地域の自主防災組織では「自主防災組織は立ち上げたけど何をしていいか分からない」「防災資機材をいつ活用していいか分からない」「役員が交代したのでどうしていいか分からない」という現状があるのではないでしょうか。

これらは地域の防災意識の向上や資機材の問題というより、自主防災組織は立ち上げたものの、そもそも活動を行っていくための体制づくりが不十分であることが原因ではないかと思うのです。
…だとすれば、今、地域の自主防災組織に必要なのは、地域の実情に応じた実働的な体制づくりということになります。その体制づくりのために何を行っていくべきかについては後ほど述べることとして、ここでは、まず自主防災組織が自治会と一体的に組織される必要性について考えてみます。

小郡市では、自主防災組織は自治会と一体的に組織することとされており、自治会の組織体制がそのまま自主防災組織の体制を兼ねています。これは、自治会とは別に新たな組織をつくるのではなく、既存の自治会と一体的に組織化することによって、より実働的な自主防災活動の体制を確保しようとするものです。

自主防災組織の活動は災害時だけに限定されたものではなく、日頃からの住民相互の交流やつながりづくり、防災意識の普及啓発、情報の伝達・共有などの活動も包含したものであり、これらの活動は本来の自治会活動とは切り離せないものです。

また、自治会役員の高齢化や担い手不足の問題が深刻化する中で、自治会とは別の体制を作ろうにも、そこに新たな人材を確保することは大変難しい状況がありますが、既存の自治会と一体化した体制づくりであれば、自治会の人員体制を活用することによって災害時の体制づくりにつなげることも可能となります。

さらに、災害時に特化した体制は、実は災害時には全く機能しないことが考えられます。災害時の防災活動では適切な判断と迅速な行動が求められますが、自主防災組織の構成員はあくまで自治会の住民であり、防災のスペシャリストではないため、平常時から災害を想定した訓練がなければ防災活動は困難です。しかし、自治会と一体的な組織化であれば、平常時の自治会活動の延長線上に災害時の防災活動を位置づけることが可能となります。平常時から自治会活動として行われている様々な活動が、日常的な訓練を兼ねて繰り返し行われることによって、災害時の実働的な防災活動につながることが期待できます。

これらのことから、小郡市では、自主防災組織は自治会単位で一体的に組織化することが前提とされており、自治会とは別に組織をつくることや、複数の行政区又は校区単位で組織化することは想定されていません。自治会によっては役員が不足している、活動できる人材がいない、高齢者しかいないなど自主防災活動を行うことが困難な事情があったとしても、自分たちの自治会活動の範囲内で可能な防災活動を位置づけていくことが必要だといえます。

高齢者の見守り活動と要支援者の避難支援

災害時に地域の自主防災組織に期待される役割は、本部機能、情報収集、救出救護、避難支援、初期消火、給食給水など多岐に渡りますが、最も重要な役割は住民の命に関わる安否確認と要支援者(災害時の避難にあたり自力で行動することが困難なため何らかの支援を要する人)の安全確保のための避難支援だといえます。

災害発生時に緊急性が高いのは住民の安否確認で、1995年の阪神・淡路大震災の死亡者で最も多かったのは窒息・圧迫死(死亡者の約77%)となっており、木造家屋の倒壊により家屋や家具の下敷きになって死亡に至ったケースが数多く報告されています。屋内で住民が負傷している状況を一刻も早く発見するためには、迅速な安否確認の体制づくりが優先的な課題だといえます。

しかし、実際に災害が発生すると自主防災組織は様々な防災活動に忙殺されることになり、それぞれに多くの人手を要することになるため、必ずしも住民の安否確認や要支援者の避難支援に十分な体制を確保することは困難になります。

そこで必要になるのが、平常時から自治会活動として行われている広報配布活動や高齢者の見守り活動(ふれあいネットワーク活動)との連携です。災害時の安否確認や避難支援を、日常的な広報配布やふれあいネットワーク活動の延長線上で取り組むことができれば、迅速な安否確認の可能性が高まり、要支援者と顔の見える関係によりスムーズな避難支援につながることが期待できます。

自治会の「ルーティン化による活動の継続性」

自治会活動との一体化で着目したいのは「ルーティン化による活動の継続性」です。
これは自治会活動においてそれが目的意識化されているかどうかにかかわらず、一旦、自治会活動に位置付けられた活動は、役員が交代しても自治会の中でルーティン化され継続されていくという“特性”に着目したものです。

もちろん、地域の防災力の強化や自主防災活動の活性化のためには地域住民の防災意識の向上は欠かせないものですが、自主防災組織の課題として、1〜2年で自治会長(区長)や役員が交代した際に、それまで協議・検討してきたことが全てリセットされてしまい、その先の具体的な体制づくりまで協議が行き着かないことがあります。しかも多くの場合、役員総替えとなります(笑)。

このように役員交代が常態化している組織において、前年度の活動の上に継続的な活動を積み上げ、さらに具体的な体制づくりにつなげていくためには、どのような働きかけを行えばよいのでしょうか。

一つは、地域の災害特性や自主防災組織の実情に応じた「災害時初動マニュアル」を策定することです。できれば現役員の任期中(概ね1年以内)に作成することができれば効果的です。一度策定された「災害時初動マニュアル」は組織内で共有され、自治会役員が交代してもその活動は継続され、さらにはブラッシュアップされていくことが期待できます。自治会においてこれまでの活動が継続的に引き継がれていくという「ルーティン化による活動の継続性」、この“特性”を活かさない手はありません。

もう一つは、自治会内に防災活動に特化した継続的な担い手を確保することです。小郡市では、地域の自主防災組織の活動の担い手として防災リーダー養成講座に取り組まれています。それぞれの自主防災組織において防災リーダーを育成・発掘することによって、自治会の役員交代の影響を受けない継続的な担い手を確保することができます。地域の防災活動の担い手として防災リーダーを育成し、自主防災組織への参画を促すことは、自主防災活動の継続性を確保する上で有効な手法だといえます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?