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プラットフォームで会いましょう

≪おごおりト-ク30≫

今回も「まちづくりの未来予想図」で書き切れなかった内容の続編です(笑)。
今回は「まち協のプラットフォーム機能」について考えてみます。
どうぞお付き合いください。

まちづくりの担い手の問題

これまでのトークでも、少子高齢化や人口減少による影響を踏まえて「いかに持続可能な地域(自治会)活動を展望するのか」「そのために自治会で何ができるのか」ということを考えてきましたが、その中で特に課題とされてきたのが「地域活動(まちづくり)における人材(担い手)の育成・確保」の問題です。

この地域活動の担い手の問題は、令和4年度に策定された「みんなですすめるまちづくり条例」や「小郡市まちづくりガイドライン」の中でも重要課題として位置づけられています。
この問題に対して、これで解決できるという特効薬や万能の処方箋はないと思いますが、少なくとも私は、新たな地域活動における担い手の確保の問題に対して大きく二つの視点が必要だと考えています。

一つは、既存の「自治会」の組織体制(班長や隣組長など)を地域資源として有効に活用することです。その代表例が「ふれあいネットワーク活動」や「自主防災活動」の取り組みです。それぞれ個別課題ごとに体制づくりを行うのではなく、自治会組織と一体的な体制を構築することによって継続的な担い手を確保しようとするもので、この点については「まちづくりの未来予想図」でも繰り返し述べてきたとおりです。

もう一つは、「まち協」を地域のプラットフォームとして再構築することです。現在の「まち協」を、地域の誰もが気軽に参画でき、地域とのつながりが創出できるようなプラットフォーム機能と、自治会では担いきれない人材育成の機能を備えた組織に再構築しようとするものです。

この二つはいずれも、少子高齢化や人口減少の影響を受けた現実的な地域活動への対応を検討するときに必要となる視点だと思いますが、今回は「まち協のプラットフォーム機能」にスポットを当てて考えてみます。

まち協のプラットフォーム機能とは

令和5年3月に策定された「小郡市まちづくりガイドライン」、その中で「まち協」のプラットフォーム化の課題については次のように述べられています。

(P9) 校区まちづくり協議会では、あらゆる主体を柔軟に受け入れられる体制づくり(プラットフォーム化)が課題です。
※プラットフォーム化とは、校区の様々な事業に幅広い個人や団体が参加し、活躍できる受け皿となること。
特に、校区まちづくり協議会がプラットフォームとしての機能を十分に果たすことで、新たな事業の創出と人材の登用が期待されるため、多様な担い手との関係づくりがより一層求められます。

(P15) これからの校区まちづくり協議会は多様な担い手を受け入れ、その特性を活かした事業展開によって地域活動参加へのきっかけをつくり、自治会等で活躍できる人材の育成を行う、地域のプラットフォームとしての機能も期待されています。

令和5年3月「小郡市まちづくりガイドライン」

このガイドラインで述べられている「まち協」のプラットフォーム機能への期待については私もまったく同感で、異議を唱えるものではありません。ただ、かなり抽象的な表現でまとめられているので、ここでいう「プラットフォーム機能とは何なのか」という点については、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

実は、これまで「まち協」において新たな取り組みが検討される際に、「誰がその活動を担うのか」という視点は意外と見落とされがちで、結果としてまち協役員(区長、自治公民館、民生委員、老人クラブ、PTA等)が背負い込んでしまうケースが多く見られます。
しかし、これはまち協役員のさらなる負担を生み出し、ますます地域の担い手が不足するという「負のサイクル」につながります。
「まち協」で新たなまちづくり活動を行うときは、その担い手が継続的に確保されなければならないこと、そして、その限られた人材で担うことができる範疇でしか活動ができないことは当たり前の話なのです。

プラットフォームの実例あれこれ

このような中、一部の「まち協」では地域住民と新たなまちづくりの体制をつくり出す取り組みも行われており、結果として「まち協」がプラットフォームとしての機能を果たしている事例もいくつか見受けられます。

例えば、その一つに三国小校区の認知症カフェとして取り組まれている「みくにカフェ」があります。この運営にあたっているスタッフの皆さんは、平成30年に活動がスタートした当時に地域ボランティアとして公募で集まったメンバーが中心で、当時のまち協役員以外にも地域ボランティアの活動への参加が多くありました。
また、味坂小校区の「移動販売」の取り組みも同様です。平成30年に農産物直売所「あじっこ市場」の活動がスタートする際に校区内で地域ボランティアを広く公募しており、そこで募ったメンバーが現在の「移動販売」の実質的な担い手となっています。
さらに、のぞみ小校区の校区防災部会でも、地域の自主防災組織の担い手育成を目的に校区独自で「防災リーダー養成講座」に取り組まれています。地域ボランティアとして自主的に養成講座に参加される方もあり、自主防災活動の担い手として地域で新たなつながりを創出する機会につながっています。

これらは、これまで「まち協」や地域活動に全く関わりのなかった人たちが、「まち協」のボランティア募集という働きかけや地域リーダー育成という呼びかけに応じて自らが主体的に“まちづくり”の門戸をたたき、新たなまちづくりの担い手として「まち協」の活動に参加している事例だといえます。

地域活動の人材育成に必要なこと

「まち協」として新たな取り組みを行う際に、「誰がその活動を担うのか」という視点はとても重要です。あて職の固定化された役員だけで担うのではなく、校区全体に幅広く有志の人材を募り、興味や関心のある人誰もがオープンに参加できる機会と場所を提供していくこと。この働きかけや機会創出こそが「まちづくりガイドライン」の中でいう「まち協」のプラットフォーム機能だと思うのです。

しかし、ここで新たな疑問が出てきます。「まち協」のプラットフォーム機能だけで地域活動の担い手やまちづくりの人材は育成できるのだろうか?
「まち協」のプラットフォーム機能はあくまで地域活動やまちづくりへの入り口(きっかけ)にすぎません。では、どのように地域活動の人材(担い手)を育成していけばよいのでしょうか。結論から言うと、それは「地域活動(まちづくり)の実践の中でしか人材(担い手)は育たない」ということだと思います。
地域活動(まちづくり)に自らの自由意思によって主体的に参加することで、地域でいきいきと働ける自分の役割と出番が確保され、誰かに必要とされる心地良さと人の役に立っているという“やりがい”を感じながら、日常に喜びと楽しみを見出すことができます。そこにやらされ感や負担感はなく、実践した者でしか味わえない充足感を得ることができます。このやる気とモチベーションは、地域活動(まちづくり)の実践の中で育まれていくものだと思うのです。

確かに、現在の「まち協」は、地域の誰もがオープンに参加できる組織になっていないのが実態だと思います。誰もが参加できるプラットフォームというより、特定の人達だけで運営されている敷居の高い閉鎖的な組織だという指摘もあります。やはり、「まち協」は従来の固定化した組織の枠組みを脱却して、地域の誰もが参加でき、新たなつながりが創出できる組織への再構築が求められていると思います。
前述のとおり、地域活動の担い手の問題に特効薬や万能の処方箋はありません。だからこそ、「まち協」の継続したまちづくり活動の実践の中で、常に住民の自治意識が育まれ、誰もが参加できる門戸がいつでも開かれていることが、「地域活動(まちづくり)における人材(担い手)の育成・確保」につながる良薬だと信じたいものです。
(2023.4.18)

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