Оさんのこと

海外で暮らしていた時に、心がけていたことがある。
誰かに初めて会うとき、その人にとって私は最初で最後に会う日本人かもしれない。
私が嫌な対応をしたら、その人にとって日本人は「嫌な国民」のイメージがついてしまう。逆に私が親切な人間であれば、日本人は親切だというイメージを持ってもらえる。
だからいつでも私は日本人代表として、ちゃんとしよう、と。

今日は、私が最初に出会った有田人の話をしようと思う。

私が有田町の地域おこし協力隊の募集に応募したときに、採用の担当者だったのが役場職員のОさんである。
その人が私がはじめて会話した有田人だった。

当時、私は海外で働いていて、書類審査は通ったものの、面接のために現地に行くのは難しかった。
辞退しようと思ってその旨を伝えると、Оさんがスカイプで面接しませんか、と提案してくれた。

コロナが広まった今でこそ、オンラインは通常になったけれど、当時海外にいる相手に対して、スカイプ面接に切り替えられる柔軟性のある自治体はほとんどなかった、と思う。

とはいえ、私がいた国はなかなか特殊な国で、インターネット環境も十分に整っていない上、政府が情報を統制する目的で妨害電波を飛ばし、市民の通信を妨害するということもあった。

「難しいと思います」と私が伝えると、Оさんは「一度テストしてみましょう」と言った。

それで面接の前日にスカイプをつなげてみたのだが、案の定、通信速度は遅いし、画面は固まるし、会話なんか到底できる状態ではなかった。

「やっぱり無理ですね・・・」
「まあ天候のせいかもしれないし。当日もやってみましょう」

どこまでも前向きなОさん。

ほとんどあきらめながら、当日ネットにつなげてみると・・・
その日はなんと通信速度も安定し、途切れることなく、スムーズに会話することができたのだった。

面接は無事終了。
奇跡である。

あとで聞けば、前日は国際会議が開催されていて、政府が妨害電波を飛ばしていたとのこと。面接の日は会議が終わっていたので、政府も電波を解除していたらしい。

一日ずれていたらスカイプ面接は成立せず、私は有田に来なかった。
そして何より最後まであきらめないで、ネット面接を推してくれたОさんに感謝である。

たった一人の役場職員の機転と前向きさに、私は心打たれた。
こんなに一生懸命何かしてもらったことってあるだろうか。

これが私にとってはじめての有田人のお話。