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匂いはあなどれないよ

朝のテレビのお天気コーナー。通勤の人が行き交う新宿駅で、ダウンジャケットの女性リポーターが、マイクを持って「雨の匂いがしています」と話していた。
僕は、千早茜の小説を思い起こして、匂いはあなどれないよと独りごちた。

透明な夜の香り/千早茜

主人公は、森の中に立つ古い洋館に家事手伝いとして働き始めた女性、一香。
一香が心を許す洋館の主は、調香師の朔。客のリクエストに応える香りを作る職人だ。
朔の意図で生成された香りは、彼の顧客の人生を左右する。

「彼女の容色を衰えさせる香りを作るのは可能だということです。簡単ですよ、交感神経に働きかける香水やボディクリームを常用させれば、副交感神経に切り替わらず不眠状態にな ります。すぐに精神も肌も乱れるでしょうね。香害って言葉を聞いたことはありますよね、 良い香りでも強すぎればストレスを与えることになるんです。自律神経なんてストレスですぐに乱れますよ。<中略>あなたが望めば、僕はどんな香りだって作りますよ」
透明な夜の香り

鼻が利くほうではないけど、僕だって、海の匂いとか草いきれとかで立ち上がる記憶はある。


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