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#98 アナ&記者時代に叱り叱られ学んだ緊張感を子育てに活かす

今回は叱るがテーマです。多くの人が叱られ、そして叱ってきたのではないか、と思います。

22年間、フジテレビで働いてますが前半の9年間はアナウンサーとして、そしてその後、記者をやり、今は報道番組のプロデューサー、中間管理職になりました。

20代の子たちに叱る、ということはないのですが、どうすれば僕が言いたいことが伝わるかな、そんなことを考えながら「指導」しています。でも、一昔前は頭ごなしに叱る人がとても多かったイメージがあります。今はちょっと言葉を間違えると「パワハラ」になってしまいますし、なかなか上に立つ側としても神経を使う時代なのではないか、と思っています。

ただ、昔も今も、いずれにも”共通項”があるのではないかと感じています。アナウンサーのときに、いろいろ先輩から教えてもらえますよね。でも、その教えてもらう人との間にしっかりとした信頼関係があるから、多少きつく言われても、やっぱりその通りだな、この人ちゃんと僕のことを考えてこう言ってくれているんだな、と思えます。

緊張感というものは本当に必要で、ちょっと「叱る」から脱線しますが、自分が入社したときに先輩アナウンサーから「カメラの前に立つときに緊張しなくなったらアナウンサーは終わりだ」と言われました。つまり、程よい緊張感があるからこそ、失敗しない。これがなくなると、本当に駄目なんです。

例えば、ワチャワチャすごく動いてる現場での中継は緊張感がありますよね。今、まさに目の前で起こってることを伝えなくてはいけない。正しい言葉でどんどん伝えて行かなくてはいけない、こういうときは失敗しないんです。不思議と。

ただし、事件・事故がほぼ終わっている、そして中継もあと30分後、時間的にもゆとりがある。ちょっとその事案の本筋とは関係ない、プライベートの話を仕事仲間と中継直前までしてしまったりして、いよいよ「現場から森下さんです、どうぞ」と言われたとき、いきなり出だしで噛んでしまったりするんですよね。だから、程よい緊張感というのは本当に必要で、これは人間関係においてもそうだと僕は思うんです。

信頼関係があるから叱る意味がある

むかし上司にめちゃくちゃ怖い人がいたのですが、その人との間には程よい緊張関係があって、やっぱり真剣に聞くんですよ。でも、なぜその緊張関係が生まれてるか、というと、それはある意味、イコール信頼関係でもあって、その人が本当によく僕のオンエアを見てくれていて、それをもとに指導や注意をしてくれる。だからこそ信頼関係も生まれます。そこまで真剣に見てくれてる人に対しては、僕が年下である以上、緊張感もあります。そういった関係が、やっぱりうまく良い循環を産んでいくんじゃないかなと思います。

ただ優しいだけだとなめられますよね。締めるところは締める。でも締める以上は、きちんとその相手のことを見る。いろいろ過去のことをちゃんと見ている、だからこそ、こういったことが言えるんだよ、緊張関係から生み出された信頼関係、それによって相手にも伝わる。もし信用していない人から頭ごなしに、ワーッと言われたらたとえそれが正論だったとしても、なんだこのやろう、と誰でも思ってしまうと思います。

子育てでも信頼関係が大事

だから、そういうふうにならないようにすることが重要なのではないかな、と。これは仕事以外に関してもそうですよね。子供子育てでもそうです。頭ごなしに言うのではなくて、きちんとずっと見てあげることによって信頼関係がうまれ、いうことを聞くようになる。

いま、僕の娘は7歳、小学2年生なのですが、勉強していると集中力がなくなります。すぐ立ってしまったりします。でも、きちんと信頼関係ができていれば、いうことをきちんと聞きます。甘やかしているだけだと、全然聞いてくれなくなるんですよね。だから、子育てにおいても緊張関係という言葉が正しいかどうか、いささか固すぎるかなと思うんですけれども、そういったものがあると、言うことをきちんと聞きます。その関係を築き上げるには、もちろん信頼関係が重要なのですが、ある一定の緊張関係が、ときとして生まれる関係であるからこそ、いうことを聞くのではないのかなと思っています。

20代のときの”指導”失敗

このうよなことは、自分が40代になったからこそ気づくことができたのではないか、と振り返って思います。20代のとき夕方の報道番組のキャスターだったのですが、20代後半になってくるとキャスターとしては世間一般でいうところの中堅になります。結局、9年担当していたのですが、多分アナウンサーとしては過去最長だったのではないかな。そこまで長くやる人は当時いなかったので、いうならば夕方の番組の喋り手としてはベテランリポーターでした。

すると、新しく入ってくる20代前半のディレクターさんたちを指導してくれと言われるようになりました。現場でどうやって動いたらいいのか、どういう取材の方法が適しているのか。具体的にいうと、取材相手にどういうふうに声をかけたらいいのか、など。そういったことを新人に教えてやってくれ、と言われたことがありました。

結論から言うと、うまくできないんですよ。

やっぱり経験値を積んで自分がうまくできるからといっても、人間としても成長していないと、人にきちんと伝わる教え方ができませんでした。時に、頭ごなしにバーって言ってしまっていた自分がいたな、とも思います。当時のディレクターさんたちには本当申し訳ないことをしたなと、いまさらながら思います。

僕の配信を聞いたり、このnoteを読んでくださっている皆さんは、同年代・同世代の方々が比較的多いのではないかな、と思っています。なので、下の子たちへの接し方、悩んでいる人も多いのではないかなと。

最近思うのは、ただ怒るとかではなくて、実際に自分ができることを示すということでもいいと思うんですよね。

例えば原稿を書く、構成を考える、いずれも当然、自分はできます。でも、全部してしまうのではなくて、これこれこうしたら面白いだろう、視聴者の関心が続くだろう、そう具体的に教えてあげると、納得しますよね。確かにこの構成の方がいい、と。

僕もそのように、10歳ぐらい年上の先輩から企画と構成のあり方、原稿の書き方、さらにはリポートの仕方も教わってきました。でも、その人とも、ある一定の緊張関係そしてそれを超える信頼関係があったなと、いま思います。

皆さんはどのような接し方を、子供そして部下にしてあげていますか。

(voicy 2022年10月31日配信)

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