見出し画像

やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論 番外編#1 ティール組織復権の秘策(12年前の実験より)

ティール組織は、一部のご指摘にあるように、流行りで終わってしまったのでしょうか?それではあまりにもったいないと僕は考えています。

僕たちは、究極の理想像としてティール組織を「偶像崇拝」してしまったのがよくなかったのかも。

もっと自然に、気楽に、ティール組織をとらえ直してみませんか?十年以上前に伝統的な大企業の中でもやれたチームがあったのですから・・・


■組織の発達段階とは「状態」である

組織の発達段階モデル(レッド→アンバー→オレンジ→グリーン→ティールというやつ)を、僕は【らしんばん】が回るときの「状態」だと捉えています。

【らしんばん】の4つの構成要素:パーパス「自分たちって結局、何者だっけ?」→戦略「パーパス実現に向け、誰に、何を届けるのか?」→アクション「具体的に商品やサービスを届けるためのしくみやアクション」→カルチャー「その結果できる固有の風土や文化」が、

組織のどのような価値観や判断基準を軸にして回っているのかの「状態」のことです。

※【らしんばん】の解説はこちら↓


「状態」なのだからどんどん変わってしかるべき。日本では『ティール組織』が2018年に翻訳出版され十万部以上売れて、理想的で固定的な「点」としてあまりに注目が集まりすぎたのかもしれません。

発達段階は、低い段階から高い段階へと進化するのではなく、それぞれの段階が重要な役割を果たすと考えられることからすると、幅広くグラデーションのようなものと見た方がいいとも思ってます。

■2011年のティール組織実験

実は、12年前(2011年)に日本を代表する大企業のある事業部で、プロジェクトスタイルの半年間に及ぶ「研修」をファシリテートしたのですが、そこでかかわることになった「チームM」は、その運営状態やプロセスが「ティール組織」そのものでした。

同じくらいの時期に、同様の状態になった複数社のいくつかのチームを支援した経験や知見を集め、そのような組織づくりの秘訣をまとめて、2015年に経団連から『組織の未来をひらく創発ワークショップ』という本を出版しました(社名などは架空のものですが、内容は8割くらい実話です)。



人間の精神の発達段階をケン・ウィルバーが色として表現していることは当時から学んでいたので、僕らはそれを「イエロー組織」(正確にはティール組織と少し異なりますが)と呼んでいました。

■大企業でもティール組織は可能

まぁ、それはさておき、日本の伝統的な大企業においても5人程度のチームなら、十分にティール組織的アプローチは可能であったということがここでお伝えしたいことです(プロジェクト型の「研修」で、組織ラインの制約を受けなかったという条件はかなり重要でしたが)。

そして、もうひとつお伝えしたいのは、せっかくそのアプローチで得た通常では考えられないような良質な仮説を、本体の大きな組織(アンバー組織)の方で、残念ながらまったく活かすことができなかったということです。

今回のコラムでは、日本の大企業であっても、条件を整えれば、チーム単位でのティール組織化は可能であり、通常の組織では決して得られないそこからの体験や知見を、うまく本体の階層型・統制型組織に還元していくご提案をしたいと思います。

■チームMに何が起きたのか

それでは、改めて12年前に実施されたプロジェクト型研修に触れます。当然、「ティール組織を創る」というようなテーマではまったくありませんでした。

大手企業の生産財を扱う事業部の営業が、事業の高付加価値化と収益の大幅向上を実現するための施策を、若手・中堅メンバーで自由に議論して大胆に提案せよというものでした。各チーム5人ずつ。課長ひとりとメンバー4人の構成でしたが、課長はあくまで世話役的な位置付けとされました。

半年間で、結局100時間以上議論を重ねたでしょうか。議論の進め方についてはまったく制約がありませんでしたので、ファシリテーターの僕は個々人とチームの意思を尊重してかかわっていきました。

最初は、結構ありきたりな議論から始まったんです。当時、低収益に喘ぐ状況を打破するためには ①グローバル化の推進②マーケティングの強化③開発・生産部門との連携がもっと必要だと。

でも、そのテーマを並べてみたとき、場に沈黙が訪れました。「これではいつも議論していることと一緒でまったくおもしろくない。そもそも俺たちはなんで儲けなきゃいけないんだっけ?儲けたいんだっけ?

そこから、話は各メンバーが達成感を味わったとびっきりの体験をシェアすることになりました。そこからわかってきたは、彼らがやりたいのは、顧客にもまだ見えてないニーズを、やりとりを通じて掘り起こし、それをなんとかカタチにしながら、本当にほしいものを共創することでした。

当たり前と言えばそうなのでしょうが、日頃あまり考えることのなかったパーパスのようなものに気づいた彼らは、目の色を変えて、顧客の先の顧客にまで入り込んで、プロトタイプづくりの失敗なども重ねつつ、紆余曲折を経て、これからの新しい営業スタイルの提言まで持っていきました。

■チームMがティール組織であった根拠

このチーム運営は、ティール組織に必要な3つの要件を見事に満たしていました。

「セルフマネジメント」


チーム5人のうち1人は課長で階層が異なりましたが、このプロジェクトにおいては上司や部下の関係にはなく、メンバーは対等な関係で協力しながら、自分の役割や責任を自ら決めて行動しました。

「ホールネス」


メンバーは仕事だけでなく、自分の感情や価値観、夢や目標などをオープンに共有し、自分が本当に実現したいことに素直に向き合っていました。

「進化する目的」

もともと研修のためのバーチャル混成チームでしたから、固定されたビジョンやミッションはありませんでしたし、半年間の中で方向性なども自由自在に変化していきました。


もし、彼らが最初に出てきたありきたりなテーマのまま進めていたら、上記のようなことは実現しなかったでしょう。メンバーの間には経験や知識の差がそれなりにありましたから、既存の枠組みの中で優位な情報を持っているメンバーがリードしたのではないでしょうか。

しかし、一人ひとりが仕事を通じて実現したいことに出発点を置き直した彼らに答えはなく、仮説も次々に実地で覆されたので、お互いフラットに向き合うしかなかったのです。

結果として、従来の組織と比べ、より柔軟で創造的で協調的なチームができたということだと僕は理解しています。

世の中には、ティール組織になるために必要な条件やアクションが精緻に整理されたもので診断したり、実行していきましょうみたいなものも見かけますが、どうも眉唾物ではないかと僕は少し疑っています。

ここまでお話してきたように、ありのままの一人ひとりの動機やワクワクがあって、それらをチームでお互いに大事にしながら【らしんばん】を回していったら、結果としてティール組織的になったという方が自然ではないかと。

■既存の企業組織にティール組織を活かす秘策

それでは、次に、そんなチームから出てきた創造的な考えやアイデアを、本体の組織でどう扱うかについて述べたいと思います。

1.まず何を置いても、アンバー組織やオレンジ組織とは異なるプロセスで出てきたアウトプットは、常識を超えることになる可能性が高いが、それを組織として、特にマネジメント層が尊重すること。

2.いきなり創造的な案を組織全体に適用するのはリスクが大きいので、まずは組織公認の「出島特区」のようなものを設けて、限られた範囲で実験的に小さく始め、その経験を蓄積していくこと。

3.「出島特区」で蓄積された知見・経験を、本体組織の状況に合わせて、全体に少しずつ注入していくこと。

上記のチームMもプロジェクト期間中に、研修の事務局になったマネジメント層からは「思い込みの強い人たちの集団」と言われ、目をつけられていました。

結局、最終プレゼンの場では、事業部トップの役員だけがその本当の価値を理解して、賞賛されたのですが、その方はまもなく退任されたので、せっかくの新たな方向性はそのまま組織に広がることはありませんでした。

組織全体をティール組織化しなくても、このようなやり方で実を取ることも、アリではないかと僕は思いますし、それはVUCAの度合いがますます強まるいまだからこそもっと活用できるのではないかと。

いかがでしょうか?

おもしろいな、なんか気になるなと感じた方、「スキ」や「ブックマーク」いただけるととても嬉しいです。また、お読みになったご感想などコメントいただけたら泣いて喜びます。

最後に、他で僕が発信しているもろもろのメディア情報も末尾にお載せしますので、つながっていただけるとうれしいです!!

※発信中のメディア情報(とんがり研)

▼メルマガ(ぜひご登録ください!)
【とんがりチーム便】という僕が執筆しているメルマガにご登録いただけると、組織・人財開発まわりのとっておき情報を、毎週1便ずつお届けします。

https://academy1.jp/p/r/VW6PgnZP

▼X(Twitter)(ぜひフォローください!)
組織開発まわりのつぶやきを日々発信中です。

▼ホームページ


#ティール組織 #組織の発達段階モデル #対話型組織開発 #対話 #組織開発 #らしんばん #人事 #採用 #人的資本経営

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?