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抗がん剤の効果の評価方法を考えると…

抗がん剤の開発では効果を判定する指標に生存期間が使われます。
新しく出た薬の効果の説明会で「生存期間が1ヶ月から3ヶ月になりました。従ってこの新薬は既存薬より効果が高いことが明らかになりました。…」という発表を何度も聞きました。期間が3倍に伸びたは、この分野ではすごいこと。もし半年になれば、6倍、それはそれはすごいことなのです。製薬メーカーの方は その薬の素晴らしさを強調するのですが、その度に「それって患者さんにとってすばらしいか?...」といつも心の中で思っていました。

だって、当事者が切実に望むことは、治ること、ですよね。余命が数ヶ月延びることではないです。もちろん少しでも長く生きたいし、特に家族は1日でも長く生きて欲しいと思うから、その数ヶ月の延長が無意味とは思いません。でも、それでは、当事者の絶望感や苦しみは解消されない。

この20年いや10年でも抗がん剤はすごく進歩してきました。実際、臨床現場で働く看護師さんから「吐き気などの副作用は例えば10年前と比べたら本当に改善されていると思う」と聞いたことがあります。それでも、効果については、今の医学では「生存期間の延長」で効果判定するのが10年前と同じで主流だし、「治る」に近づくとされる生存期間5年の効果が得られているものは、早期がんなど条件が限られているのが現状なのです。それぐらい治すこと、治療が難しい。学会で発表される基礎研究も、どんどん深掘りされています。でも標準治療にビックな変化は起きていない。

その限界を考えると、治療よりできる限りの予防に力を入れる方が効果が得られやすいと思うこの頃です。
予防に有効な情報は様々な研究からわかってきています。代表的なものが先日の国立がんセンター疫学研究の記事で紹介したような、生活習慣についての基本的なこと。

夢のような薬ができることを望みつつも、個人個人では生活習慣の改善が最新の医学に値するくらい有望です。



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