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「あのー、なんで正直でいい人は貧乏なんですか?」

「あのー、正直で優しい人やいい人ってなんで貧乏なんですか?昔話なんかは、主人公の人が貧乏でかわいそうだと思いました。不公平だと思います」

新潟県糸魚川市 小2・T美さん
答える人:農事通信員 もにこ堂



T美さんはすごいことに気が付きましたね?

T美さんもそうですが、みんなそういう優しい気もちの人がいればいいんです。みんながそういう気持ちだったら世の中すばらしい世界に変わっちゃうんですよ。すぐにでもです。

弱い人や貧しい人がいたら助けてあげたいと思うのは当たり前の気持ちですよね?
お金持ちの人が贅沢ぜいたくな暮らしをしてるそばで、貧乏な人が大変な生活をしている。T美さんの言うとおり不公平ですね?

でも変わりませんね?
昔ばなしの時代から、今の時代までなかなかそうはならないですね。
どうしてなんでしょう?

爺は、その理由は3つあるかな?って思うんです。

まず、
一つ目(▲)は、いつの時代も庶民しょみんはほとんどの人が「貧乏」でした
二つ目(▲▲)は、いい人ほど「欲がない」(欲がないから「いい人」)
三つ目(▲▲▲)は、地球の王様が悪者だったから

▲ 庶民しょみんはみんな貧乏だったんです

一つ目から順番にお話ししますね。

T美さんは『まんが日本昔ばなし』というテレビを知ってるかな? 爺の世代では昔みんなが見ていた人気アニメだから、今でもリバイバルでビデオがあるよね? あの番組では、よく貧しい人が登場しますね?

貧しくとも豊か

番組で紹介されるおはなしは、「教訓きょうくん」のことが多くて、たとえば、なまけぐせで貧乏な暮らしをしていた主人公が、ある日からまじめにおしごとをするようになって、おんぼろのおうちから大きなおうちに住めるようになりました、とか、貧乏だけど、正直者のおじいさんやおばあさんが、宝ものをさずかって、いじわるなじいさんばあさんがそのまねをしてひどい目に合うとか。

でもね、よく考えてみると、どんなお話しにしても最初は貧乏でしたというおうちが多いですよね?

なんでかっていうと、とくに昔は、貧乏が標準的ひょうじゅんてきだったの。

T美さんは、これからいろいろ昔の文学作品ぶんがくさくひんとか読むかもしれませんが、それらは標準的ではないひとたち、貴族とか武士とかお坊さんとか、社会の上の階級のほんの一握りひとにぎりの人たちが書いたものが多いの。でも、それが「日本文化です」とか、「日本人の心」ですとか、いまの評論家ひょうろんかという人たちは平気で言ったりするのね。

日本の心って”それ”ではないかも?

たとえば、有名な「源氏物語げんじものがたり」というお話は、平安時代の貴族のお話しです。
今の時代の「庶民」である人たちも、そのお話に感動しましたとか、素敵でしたとかよく言われているんですけど、あれはね、ホントに限られた”温室の中”みたいな世界でのお話しで、当時のほとんどの一般の人たちは食うや食わずの生活をしていたの。

なかには、贅沢三昧ぜいたくざんまいした貴族が、食べきれずに残したおかずを、鳥にえさをやるように、庶民に投げて与える習慣もあったんですよ。

爺は、そんな世界の人が書いた文章がどんなにすばらしいものであっても、好きになれないし、評論家の人たちも全然信用してないの。

だって、食うや食わずの人が小説なんて書いてる時間がないでしょ?
だから農家など庶民の人でたくさん偉い人がいたのに、なかなか作品を残した人は少ないのね。残してもバカにされちゃうんです。
爺が知ってるそういう人で今おもいだせるのは、

二宮尊徳にのみやそんとくさんと
安藤昌益あんどうしょうえきさん
宮沢賢治みやざわけんじさん
です。

爺はむかし、この人たちが書いた本を読んですごいなと思ったんです。
尊徳(金次郎)さんなんかは銅像で有名ですが、どんなことを考えていたかなんて知らない人が多いでしょ?
昌益さんなんてもっとすごいんですが、みんな普通の人が思ってることの反対のことを言ってるんです。
みんなとっても偉い考え方をする人だけど、T美さんにはまだむずかしいかな? 大きくなったら必ず読んでみてくださいね?

ところで、昔の農家の人たちは、「年貢ねんぐ」といって、自分のところでとれたお米を領主りょうしゅに納めないといけなかったから、いくら働いても働いても、暮らし向きは楽にならなかったんです。いまといっしょでしょ?(今でも「年貢の納め時」って言うんですよ。みんな月末になると「覚悟しなさい」って。)

鉄棒をして帰る

現代でもそうです。
ホントに貧乏な人は学校にもまともに行けなかったんです。
亡くなっ爺のたお父さんに、むかし聞いた話なんですが、山の中で育ったお父さんの家も貧乏だったの。
小学生のある日、
遠足があったんだって。
朝「行ってきまーす」って、学校の校庭にお友達が集合しているなか、お父さんは校庭のすみで鉄棒なんかして、ごまかして一人でおうちに帰ってきたんだって。
おうちに遠足に行くお金がなかったの。
爺が小さいときにそんな話を聞いて、「なんてかわいそうなんだろう」と思ったんですが、後から分かったことですが、当時そんな子供たちはざらにいたそうです。

▲▲ 欲がないから貧乏だよ

次の俳句はいくを聞いてT美さんはどう思いますか?

「朝顔に 釣瓶つるべとられて もらい水」(加賀千代女かがのちよじょ
(ある朝、いつものように井戸に水を汲みに行くと、水をくむつるべに朝顔のつるが巻き付いてしまっていました。さあ困った、どうしよう。仕方がないからお隣の井戸に水をもらいに行きました)

こういう気持ちを、今の人たちわかるかな?
「ばっかじゃねー、なんで蔓なんて気にしてんだろ? 昔は時間があったんだなあ」
なんて思う人がいてもしょうがないんです。
でもね、この優しさをすっかり忘れちゃってる人が多いんですね。

竹が伸びてきてしまい、床を突き破ってしまったものを、切るに忍びなくてそのままにして暮らした、なんてエピソードも昔はたくさんあったんです。

優しいでしょう?
それともばかばかしい?

伐採と反対の心

ホントに気持ちのきれいな人、決して人をうたがわない人にT美さんはあったことがありますか?
(ていうか、T美さんご自身がまだ小2だからそんな心を持ってるよね?)
今ではそういう人は珍しいですよ。
爺は人生で何回か会ったことがあります。
(逆に言えば長い人生で数人しか会っていません)

そういう人の前にいると、なんだかこちらが申し訳なくなるような、心が洗われるような気持になってしまうんです。

たいがい貧しくて、学問もそれほどないような方が多いのです。
でも、いばってる人の前では緊張するけど、そういう人の前では緊張しないばかりか、なんだかこちらの頭が下がってしまうんです。

たたみがかしいでいても、おうちに一部屋しかなくても、そこに子供さんが何人もいたりするんです。びっくりです。でもそこに初対面の爺を平気でとおしてくれて、お茶やらみかんやらで大歓待してくれたりするんです。みんな楽しそうなんです。

そして、爺の話すことをなんでも聞いてくれるんです。
よく「神様みたいな人」っていうけど、まさにそんな人って世の中にいるんですよ。
きっと、大きくなっていつかT美さんもそんな人に会ったり、そんなおうちに招かれたりすることがあるでしょう。そこは、どんな大きくて立派なおうちよりもほっとするし、天国なんですよ。

さて、T美さん、こういう人たちの特長はみんな心が豊かだっていうことでしょう?
今に満足してるんです。
ほかの人たちから見て「貧乏」でも、本人はたいして気にしないんです。
だから、ほかの人と比べて、「もっと大きなおうちに住みたいなあ」とか「もっとご馳走をたべたいなあ」という気持ちがあまりないんです。
だから貧乏のままなんですね?

今の人たちは、みんなほかの人とくらべるでしょ?
だから、「欲」が深くなるんです。
心が貧しいんです。
自分の心が満たされてないから、もっといろんなものが欲しくなってしまうんです。
可笑しいおかしいですね。

▲▲▲ 悪い王様がみんなを奴隷どれいにしていました

ここから先は爺の作り話”そうさく童話”だから、そのつもりで聞いてね?

世の中って、王様みたいな人がいて、家来みたいな人がいるでしょう?
家来は一生懸命に王様のために働いて、その分おカネとか品物をいただくでしょう。そうしないと、食べていけないようになっているんです。

だから、T美さんのお父さんが会社に行って一生懸命に働いて、お給料をもらってくるおかげで、T美さんもご家族も暮らしていかれてるんですね。
で、お父さんの会社にも「社長さん」という人がいるでしょ?
その人がお父さんたちを使って、会社が成り立っているんです。
ごめんね、そんなこと知ってるよね?

でもね、その社長さんもまた会長さんとか、株主かぶぬしさんとか銀行とか、別の会社とかいろんな人に使われていたりするんです。(え? それは知らなかったですか?)

そのまた上もどんどんいるんです。

ぼくは単なるボーリングのピンです、何でもないです

でね、その上の上の方にはものすごいお金持がいるんだけど、上に行けば行くほど誰だかわからなくなっているの。
わざとそうしてるの。

その一番上にいるのは、ずるがしこい王様がいるんだ。
それは別の星からやってきた悪い宇宙人なんだけどね、お父さんやみんなが一生懸命働いたお金や納めた税金の多くはこの王様のところにみんな行くようになってるの。

それだけでなくて、この王様はいろいろ悪いことをしてきたんだけど、なかでも一番ひどいのは、「ものごとをさかさまにする魔法」を地球全体にかけたんだ。なんでかっていうと、その方が都合がいいからなんだ。

それで、正直で優しいいい人は貧乏にして
意地悪で、がめつい、心の狭い、嫉妬深い人ほど住みよい地球にしたの。

まず「貧乏」なんて、地球以外の惑星わくせいにはないの。
お金も地球にしかないの。
T美さんがほかの星に行って、お金を見せたらみんなに大笑いされるからやめてね?
お金はこの地球の王様が、もと居たオリオン座の星から持ってきたアイディアで、いまでは地球専用の奴隷の道具なんだ。

ではなんで「貧乏」が地球上に広くあるかっていうと、みんながお金持ちだったら、だれも働かなくなっちゃうでしょ? だからなの。
働かなければならないようにしたの。

人間は昔は、天国に住んでいました。
努力とか、一生懸命に働くとかはありませんでした。
みんな怠け者でした。
というより自由に好きなことばかりしてあそんでいました。
それでみんな幸せでした。

それがホントの私たちの姿なんですよ。

でも(王様は)それでは困るでしょ?

そこで、最初のほうで言った「教訓」を作ったの。

怠けないで働きなさい
正直でいなさい

そうじゃないと、困るでしょ。
国民に働いてもらわないと(自分は働かないんだから)。
正直になんでも話せば、その人がたくらんでいるかいないかわかって安心でしょ。
頭がよい人が出て、悪い王様の悪事がばれたら困るから、「学校」というところで、そうならないように教えることにしたのね。

  1. 働いても楽にならない。

  2. 貧乏になる

  3. だから働く(1へ)

(まるで永久機関=大人の方へ)

この悪い王様は日本にも魔法をかけたんですよ。
世界大戦で日本はアメリカとか「連合国れんごうこく」というのに負けたの知ってるかな? 負けたこともそうなんですが、負けた後も「3S(スリーエス)」なんていう魔法をかけて、日本人をバカなこくみんにしようとしたんです。

まんまとはまってしまいました。
こわいでしょ?

というのも、悪い王様は、日本人はホントはどこにも負けないくらい強い民族だということを知っていて、それが怖かったんだね。



さあさあ、そうさく童話はこれくらいにしましょう。
なんとなくわかってくれましたか?

ごめんね、ずいぶん長くおしゃべりしてしまいました。
爺は普段は無口なんですが、しゃべりだすと止まらないんです。

あ、そうそう、T美さん、一つだけ言い忘れてました。

さっきの王様は、今はもう「はだかの王様」で、もうすぐ追放されるんだってさ・・・星の王子様が教えてくれたんだ。

ではこの辺でいいかな?


おうちのなかの左党の方へ・・・いつも長文ご迷惑をおかけいたします。お疲れ様です。この後はどーそ、ゆっくりとおくつろぎください。

「デコン汁で一献」

『まんが日本昔ばなし』の作中登場するいろいろな食べ物が人気があるらしい。
ご当地のソウルフードが続々出てくるわ、それをうまそうに食うわで、飯テロを誘う要素は確かにあるようだ。

酸いも甘いも嚙み分けて枯れてきた方が最後に行きつく聖域は、もう「洋」「中」ではなく、ジャパニーズオールドトラディショナルフーズでしょうね?
しかも、酒とくれば、もはや気の利いたおしゃれな「あて」ではなく、泥臭くも奥ゆかしい、ネイティブフーズにたどりつくしかないのでは?

「飽食の時代」などという文明末期を象徴するようなキャッチで言われて久しい現代社会。
目指さなくてはならないのは、そぎ落としたようなストイックな「食」、貧乏食。
これこそ最先端を行くおしゃれである?

さてその『まんが日本昔ばなし』の一編に
「あにょどんのデコン汁」というのがある。

貧しいゆえの奥深さ。
ほろ苦さ。
酒とデコン汁
究極かも。

この「デコン汁」の正統的作り方レシピは、
大根+水
以上、とのこと。

かつてのウィスキーメーカーの名キャッチコピー「何も足さない何も引かない」ではないですが、さすがにその域に達するまでは、さらなる修行が必要かもしれません。


東洋哲学に触れて40余年。すべては同じという価値観で、関心の対象が多岐にわたるため「なんだかよくわからない」人。だから「どこにものアナグラムMonikodo」です。現在、いかなる団体にも所属しない「独立個人」の爺さんです。ユーモアとアイロニーは現実とあの世の虹の架け橋。よろしく。