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VRSNSにおける『Join』に関する雑考

「――Join(ジョイン)は難しい」

 僕は常々、そう感じているけれど、そうじゃない人もいるらしい。今回はジョインの「何が難しいのか?」、そして「どう向き合ったら良いのか?」について、自分なりに考えてみたい。

 そもそも「Join(ジョイン)」とは、『参加する』という意味の英単語。よく「Come on and join us!(一緒に楽しもうぜ)」みたいな決まり文句で使われるらしいけれど。もちろん僕は、そんなこと言われたこともないし、これから先も言うことはないだろう。

 さておき、VRSNSにおけるJoinは「参加する」というよりも「入場する」と表現した方がふさわしいと思う。気になったワールドに行ってみるとか、フレンドに会いに行くといった意味合いで「Joinする」と使うからだ。

 では、これの何が難しいか。気になるワールドに行くのは、難しくない。勝手に行けばいい。問題は後者。誰かのところに会いに行くという行為が、僕はどうにも怖ろしく、避けたいものに感じられてしまう。

「――はぁ?何が難しいの?行きたいなら行けばいいじゃん」

 そう思う人もいるだろう。もちろんそれもひとつの考え方で、別にそれを否定するつもりはない。でももし反射的にそう思ったなら、きっとあなたはどこかで迷惑がられているはず、なんて心配になる。

 これは何もVRSNSに限ったことではないけれど。自分には自分の考え方や感じ方があるように、相手にも相手の考え方や感じ方があるもので。自分が会いたいと思ったからと言って、相手もそう思っているとは限らない。

 だから普通は「今日暇?会いに行っていい?」と相手の予定を聞いてから会いに行くわけだ。予告なしの「…来ちゃった♡」が許されるのは……いや、許されることはない。急に押しかけておいて、部屋が汚いだの、これ誰の?なんて怒るのは、騙し討ちと同義なのだから。

 閑話休題。そんなわけで、Joinという行為には「相手の迷惑」になりうるリスクがある。たとえ仮想現実だとしても、眼前のアバターには中の人が、もとい、れっきとした「人格」があって。自分と同じように、嫌がったり、苦しんだり、悲しんだりするのだから。僕はそれが怖くてJoinできないし、軽い気持ちでJoinされたくないと感じる。

 軽い気持ちというのは、たとえば「寝る前の挨拶に来ました~」のこと。おやすみとかいいから早く寝て。歯磨きして寝て。と内心では思っている。ただ、律儀に会いにきてくれるのは、どこか憎めないと思う場合もあって、こういうのはやっぱり「相手との関係性」次第なのだろう。

 そう、関係性。気軽にJoinできるような関係性さえ築けたのなら、なにも怖がることはない。心理的安全性と言ってもいいけれど。いつでも安心してJoinできる相手がいるのは、素敵なことだと思う。しかし同時に、そういう関係性を維持するために「自分を偽る」のなら、それは違うとも思うのだ。

 「――みんなと仲良くしなきゃ」

 そう考えて、やりたくないことを続ける人は多い。そりゃ社会では必要な能力というのは痛感しているが。それだけじゃないでしょ?とも言いたい。自分に合わないと感じるのなら、別のやり方を選んだっていいし、いっそ、やめたっていいのだから(……やめられるかはまた別として)

 関係性だって同じだ。出会った瞬間から、ずっと良好な関係とはいかないだろうし、悪化することもあるし、ときには修復不能に陥ることもあって。逆に、こいつとは絶対合わないだろうなという相手が、意外といい奴だったなんてこともあるかもしれない。

 何にしても、ただ闇雲に関係性を築けばいいという話ではなくて。自分にとっても、相手にとっても心地よいと感じられるような。そんな関係性こそ望ましいと思う。無理せずに、自分らしく過ごせる間柄と言ってもいい。

 合わないと感じるなら、距離を置いたっていいし。会いたいと思うなら、様子を見ながら、会いに行ってみる。結果として、拒絶されてしまうこともあるだろう。でもそれは仕方ない。相手には相手の感じ方があるのだから。思いどおりにはできないし、しちゃいけないんだ。

 Joinの難しさは伝わっただろうか。こんなこと考えずにJoinできるのは、フレンドに恵まれているから(それか無神経だから)だろう。もしかしたら「考え過ぎなんじゃない?」と感じた人もいるかもしれない。

 確かに。四の五の考えずに、とりあえずJoinするというのも大切なこと。けれど、そういうときに限って「ごめん、今はちょっと…」なんて謝られ、気まずい感じになるなんてのも、よくある話。

 ともあれ、そういうところまで含めて「自分は自分」なのだから。そんな自分を、まずは受け入れたいと思う。

 Joinが苦手でもいいじゃない。そんな風にね。

撮影ワールド:夏仮想々(Kakasoso)/odaki さん

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