1月5日 大企業が切り捨てたところにブルーオーシャンはあるのかも知れない。

COHINA代表・田中絢子さん「悩みの中にこそ、チャンスがある」小柄女性向けブランドにかける思い

『身長150センチ前後向け「ニッチすぎる」と言われた小柄女性向けブランド、月商1億円に』

 月商150億円も稼ぎだした……というんだったら、それは「ニッチな需要」とは言わず、「ブルーオーシャンを掘り当てた」という。
 アパレル業界の話でいうと、大きな企業になると、より「大きく儲けたい」と考えるから、日本人の平均的な身長・体格が調査されてもっとも稼げるボリュームゾーンに向けて商品を作る。その平均から外れる体格向けの商品は「儲からない」ので作らない。Wikipediaを見るとワコールの調査データなんか載っていて、日本人の世代ごとのバストサイズの表なんかが載っている(これキャラの設定制作の参考にしてます)。メーカーはああいうデータを作り、「このバストサイズが増えてきたから、商品の数も増やしていく」「このバストサイズは全体の数パーセント程度で作って儲からないので作らない」……というやり方を採る。
 でも、その「儲からない」とされる少数派と思われていた人口も、実はかなり多かった……そういう人向けの商品を作ってみたら、月商100億円超えの利益を出すくらいの需要が存在した。
 大手が「儲からない」と思って見放したゾーンに向けて作ってみたら、実は大きな需要があった。こういうのをブルーオーシャンを発見したという。

 素敵な話ですよ、これは。
 この例のお話では、「どこの店に行っても自分の体格向けの服が売ってない。じゃあ作ってみよう」……すると同じような悩みを持った人が世の中に一杯いて、それがブルーオーシャンだった。
 こういうブルーオーシャン、探せばきっとたくさんあるんだろうと思うんだ。ごく身近なところに、みんな頭の片隅で気付いているけれど、なんとなく誰も手を出していなかった……。そういうものが驚くような利益を生み出す。あとはそれに気付くかどうか……の話。
 このお話では、「自分の悩み」を掘り下げていったら、それがブルーオーシャンだった……という話。自分が持ったテーマと、利益を生み出すチャンスが隣り合わせにあった。これはかなり素敵なお話。「いいお話だね」といえる。

 どうしてこういうブルーオーシャンに誰も気付けないのか。
 今回のお話はなかなか面白い示唆が込められているな、と思って取り上げるのだけど、先に挙げたように、アパレルメーカーは日本人の平均的な身長や体格といった細かいデータを持ってるんだ。それで平均のボリュームゾーンから離れる体格の人の商品は「売れない」から作らない。するとそれが業界内の常識になり「作らないのが当たり前」になっていく。このお話でも、「そんなの作っても売れないよ」と言われたそうな。「低身長向けファッションはニッチすぎる」「買う人がいてもごく少数だ」と。そういう思い込みが障壁になっていく。それで、気付けばブルーオーシャンの存在を見逃してしまう。
(余談 私も平均からかなり外れる低身長なんだ。お店に売っている普通の商品はまず体に合わない。最近はどうやったら自分の体型にピッタリの服を見付けられるか、コツがわかってきたからたいした悩みでもなくなったけどね)

 大きな企業になるほど、こういうものを見逃しやすくなってしまう。大企業は大人数の社員を抱えて、その大人数の生活を養わなければならないから、「より大きな層」に向けた平均的な商品ばかりを作るようになっていく。平均的な需要から外れる商品は売れないから作らない……と考えがちになっていく。大企業の商品がなんとなく独創性に欠け、無難なものになりがちなのは、こういう理由による。商品が順当にヒットしないと、大きすぎる企業は自分を維持できないから、失敗が怖いのだ。
 大企業は大きいがゆえの性質を抱えているのだけど、大企業がそういうモノ作りをするから、中小企業もそれにならって、やがて「業界内の常識」になっていく。そこにあるトレンドから外れる商品を作ろうとすると「正気か?」「誰が買うんだ?」とか考えるようになってしまう。
 ただ、今回のお話の場合、中小企業的には大きなヒットになって月商100億超えを実現できたけれど、大企業的には「小さい儲け」なのかも知れない。大企業的な視点では、それくらいの儲けのために商品を作り、全国のチェーン店に置くのはリスクが高い(利益率が低い)。こういう商品で利益を出せたのは、中小(ほぼ個人)スケールだったからかも知れない。
 そうかも知れないと思うと、ますます大企業的には手の出せなかったブルーオーシャンということになる。

 このお話はなかなか教訓話として面白いと思っていて、世の中的に「そんなもの誰が欲しがるんだ」「そんなの欲しいと思う人はごく少数だよ」と言われているものでも、実は結構な人数規模かもしれない。そういう見逃しって、世の中に一杯あるんじゃないか? 「全人口の1%程度の需要」……といっても、日本の場合少なくとも1500人くらいの需要はあるってことだし。
 そういうブルーオーシャンを見付けられたらいいよね……とは本当に思う。しかもそのブルーオーシャンが、自分が抱えているテーマを合致していたらより意義あるものになる。なぜなら、「自己実現」と「社会的成功」が一致するから。今回のお話の主人公は、「自分の悩み」を解消しようとしたら、そのまま社会的成功を得てしまった。だからいいお話だよね……と言える。

 私もブルーオーシャンを発見したいです。それが、たまたま自分が作ったものがブルーオーシャンだったりしたら、よりいいよね。


とらつぐみのnoteはすべて無料で公開しています。 しかし活動を続けていくためには皆様の支援が必要です。どうか支援をお願いします。