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Netflix映画 ゴーストバスターズ 2016

 第1作目の『ゴーストバスターズ』は楽しかった。ゴーストを電撃で捕まえて、閉じ込めてしまう。この発想に行き着いたのが素晴らしい。幽霊を現代的な科学(かなりいい加減なものだけど)を使って捕まえてしまう。今もって、これほど見事な創造で幽霊ものを表現した例はない。
 映画での幽霊表現といえば、どうしても古風なものになりがちだ。その文化が記憶している“古いもの”を呼び起こす。だが『ゴーストバスターズ』に出てくる幽霊はファンキーで可愛い。現代人の思考が生み出した新しい幽霊だ。完全にこの作品独自の感性だし、幽霊表現のビジョンを間違いなく刷新した。
 もちろんのこと俳優達の愉快な掛け合いに、最高の楽曲! あらゆるものがうまく噛み合って、『ゴーストバスターズ』は今でも忘れられない名作映画となった。

 さて、そのリブート作である『ゴーストバスターズ 2016』。
 『ゴーストバスターズ』の続編は何年も浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返していた。何度も「脚本が完成したらしい」「監督が決まったらしい」という話が出るが、それから間もなくして「白紙に戻った」で立ち消えになり……。関係者の年齢も上がりすぎて、もうこのまま続編は作られないのではないか……。そう思ったところにようやくリブートの話が浮かんできて、ついに実現したのがこの作品。

 主人公達エリン、アビー、ジリアンの3人は社会からのはぐれものだ。この3人が誰も認知しなかったゴーストの存在を追い求め、さらに捕まえる方法を発見する。はぐれものが社会性を取り戻し、ヒーローになっていく、定番のプロットだ。
 前シリーズの精神性は受け継がれていると思うが……あまり面白くない。コメディ映画らしく、俳優同士の掛け合いにたっぷり時間を使っているのだが、これが面白くない。ネタの一つ一つが小さすぎるし、ことごとく滑っている。滑っている上に、長い!
 肝心のストーリーの方はなかなか進まない。幽霊は早いうちに登場するが、一つ一つがどうしてもモタモタする。最初のお屋敷の幽霊が出てくるシーン、ジリアンがポテトチップスを食べているが、その次のカットで足下に落ちているミスもある。お屋敷の後に地下鉄の幽霊と、空振りが多い(結局どちらも捕獲せず放置だし)。
 幽霊捕獲装置が出てくるまでが遅いし、説明も長い。ようやく劇場の霊を確保するが、ここまでに随分時間を掛けている。
 この後、市長の邪魔が入るが、それでも活動を続けるゴーストバスターズ。その活躍の過程が描かれていない。幽霊捕獲を続けて街のヒーローになっていく……という展開がなく、いきなりホテルの地下に真犯人がいることに気付いてしまう。活躍の場面がなく、雑に“解明編”に入ってしまう。ゴーストバスターズの存在が人々に知られて、受け入れられていく……という過程がないので、どうしてもゴーストバスターズの人達が社会から弾かれたままの存在……という感じに見えてしまう。
 ローワンが持っていた本で彼の計画が明らかになるのだが、ページをめくるたびに出てくるやたら豪華に作られたイラスト! あまりにも説明的で笑えてしまう(一番笑えたところかも)。あのただのイラストに過ぎないものを根拠に市長のところへ警告に行こうとする場面が、あまりにも無理矢理。警告に行くのなら、まず証拠集めでしょうに。
 残念だったのは、前シリーズで主演だったビル・マーレイをあっさりと殺してしまったこと。しかもかなり雑な死に方。もうちょっと前作を尊重して欲しかった。
 結局は前作『ゴーストバスターズ』のアイデアを借りて、ほんの少々の付け足しをしただけの映画。この映画ならではの独創性がほとんどない。1984年という時代においては先進だったし驚きのあった表現の数々が、充分なアップデートもされずほとんどそのまま表現されてしまい、ただただ古くさく、陳腐なものになってしまっている。前作の素晴らしかったものが全部駄目になっている。
 前作の楽曲が少し使われているが、その使い方もあまり良くない。やはりメロディの一部を借りただけ。現代的なアップデートがない。

 この映画の一番大きな問題は、登場してくるキャラクター、俳優達を愛せないこと。内容はともかくとして、この人達の続きが見たい……という気分にはならない。彼女たちが新しいゴーストバスターズであると認めたくない。ゴーストバスターズらしい軽快さ、観客も取り込んでいく一体感に欠ける。相応しくない。特に受付の男! ただただイライラさせられる。最悪のキャラクターだ。
 ファンにとっては30年近く待たされた新作。『ゴーストバスターズ』の新シリーズだったが、残念な結果に終わった。再リブートに期待しよう。

5月27日


こちらにも同じ記事があります→とらつぐみのつぶやき:Netflix映画感想【5月】

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