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もっと頑張れる、もっと輝いていいんだよ

先日、作業をしながらペットボトルの"お茶A"を飲んでいた。
(特定の商品を貶すことが目的ではないので、"お茶A"と表現させていただいております)
普段自ら手に取るペットボトル飲料は麦茶かペプシくらいで、御多分に漏れずこの"お茶A"も人から貰ったものだった。
何も気にすることなく半分くらい飲み進めたところで作業が行き詰まり、なんとなく"お茶A"のペットボトルを見つめてみる。
そこには"お茶A"のキャッチフレーズが繰り返し記されていた。こだわりが詰まったキャッチフレーズなのだろうが、僕は全く茶に精通しておらず何のことだかさっぱり分からなかったので、作業を再開するためにペットボトルから目を離そうとした。その瞬間、僕は見つけてしまった。

小さく書かれた「よく振ってからお飲みください」の文字を。

特定の商品を貶すことが目的ではありません!
(隠しきれませんでした。)


僕は驚愕した。めちゃくちゃ重要なことがこんなにも小さく書かれている事実に。
こんなに小さく書かれていては、ほとんどの人が気付かないであろう。
実際に僕は、これに気付かずもう半分も飲んでしまっている。
僕は焦ってペットボトル全体を見回す。すると、よく見ればキャップにも「よく振ってからお飲みください」の文字が。


いや、気付かないって。小さいって。なんちゃらスタンプなんて集めてないって。

「よく振ってからお飲みください」という情報は、商品名の次に重要度の高い情報ではないのか。
高校球児に例えるとしたら、副キャプテンであるべきではないのか。
ミーティングでは率先して発言し、キャプテンを支え、常日頃から後輩の意見もよく聞き、守備ではフィールドで大きな声を出して統率し、打撃や走塁ではチームのために泥臭いプレーも厭わない、そんな副キャプテンであるべきではないのか。
なのにどうして"総合的な実力はレギュラーに遠く及ばないが一芸に秀でていて、監督やチームメイトからは「秘密兵器」と呼ばれている背番号2ケタの控え選手"みたいな立ち位置にいるのだ。

もしかしたら「よく振ってからお飲みください」の上司がめちゃくちゃ無能なのだろうか。
部下である「よく振ってからお飲みください」が持っている本来のポテンシャルに気付かず、キャッチフレーズやキャンペーン情報といった大半の人が気にも留めない情報をゴリ押ししている。本来のポテンシャルや向き不向きではなく、見た目などで部下の配置を決定してしまうトンデモ上司なのだろうか。哀れみを超えて憤りすら感じる。
そもそも「よく振ってからお飲みください」という情報をしっかり伝えてよく振ってから飲んでもらわないと、せっかくのこだわりの「急須でいれたようななんたらかんたら」の真のポテンシャルも発揮されない。
全く人を見る目がない上司に配置を決められてしまい、仕方なくあのポシションに居るのだろうか。
「働き方改革」という言葉を至るところで耳にするこの時代に、"適材適所"とこんなにも正反対なことが起こっていていいはずがない。

それとも、「よく振ってからお飲みください」自身がめちゃくちゃ引っ込み思案なのだろうか。
全く自信が無く、自らの能力をアピールすることもできない、めちゃくちゃ内気な性格なのだろうか。
昔から「俺にはココがお似合いさ…」なんてネガティブな言葉が口癖なのだろうか。
だとしたら、僕は「よく振ってからお飲みください」にアドバイスをしてあげたい。
古びた居酒屋のカウンターで、2人で一本のサッポロ赤星 中瓶を分け合って。
「よく振ってからお飲みください」の目をしっかり見つめて。

お前はもっと頑張れる
もっと輝いていいんだよ


そうアドバイスしてあげたい。
そして帰り際、手を振りながらこう言うのだ。

「次に会うのは、お互いビッグになってからだな!」

溢れそうになる涙を堪えて、僕は帰路に着くのだ…。


「よく振ってからお飲みください」の過去・現在・未来に想いを馳せていたら、作業が1ミリも進んでいないことに気付き、我に返った。
とりあえず飲みかけの"お茶A"を軽く振ってみたら、めちゃくちゃ泡立って気持ち悪くなってしまった。
捨てるのも勿体無いので全て飲んだが、これからも僕が自ら"お茶A"を手に取ることは、恐らく無いだろう。

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