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映画 『オーケストラ!』

かつては一流オーケストラの天才指揮者と言われたが、今は劇場の掃除夫のアンドレイ。彼がかつての演奏仲間とオーケストラ再結成の夢を抱き、実際に再演に至るまでの波乱万丈なストーリーをコメディタッチで描く。

「一番好きな曲は?」と聞かれたら迷わず答える曲がある。
チャイコフスキー『バイオリン協奏曲二長調』。クラシックファンでなくても誰もが一度は耳にしたことのある名曲だ。

そもそも私とチャイコフスキーの出会いはこの曲で、この映画だ。
元気がないとき、悲しいことがあった時、勇気を出したいとき…この曲は長年にわたりいつも私に寄り添ってくれた。
そう。まさに、お葬式で流してほしい程好きな曲(笑)

この映画のラストは、この曲の演奏シーンが12分続く。ソリスト役のメラニー・ロランは、数ヶ月に渡ってこの曲の弓と手の動きを特訓し、手元のアップに代役を使わせなかった。集中し過ぎて、このシーンの撮影が終わると気を失ったという。それほど観るものを惹きつける迫真の演奏シーンだ。

30年間音楽活動を辞めていた団員達も、演奏の出だしはリズムも音程もバラバラ。それがメラニーが弾き始めると、急に一致団結して素晴らしい音楽を奏で始める。

こんな奇跡のような事があるわけない…もし音楽をしていない人ならそう思うかもしれない。

でも、一度でもアンサンブルを体験した人なら、技術が足りなくても皆んなの心が一体となれば、美しい音楽を奏でられる瞬間があることは知っている。

私にもたった一度だけそんな経験がある。

一昨年の末、私が所属したオーケストラが、人間関係のトラブルで不本意に解散させられた。バイオリンを習って以来の夢だった初めて所属したオーケストラだったから、とても悲しかった。

でも「私たちでまた作ればいい」と思い直し、オケロスになっている団員たちに声をかけて再結成し、指導者も探し、完全に去ってしまった団員の穴を埋める演奏仲間を探した。そして再結成半年後には、エルガーの『弦楽セレナーデ』全楽章を演奏会で弾いた。

私を含め決して演奏技術の高いメンバーではないのに、本番中みんなが奏でるハーモニーが美しすぎて、演奏している間中この瞬間が終わって欲しくないと思いながら弾いていた。

演奏会が終わった後の打ち上げで、みんなも同じ思いで弾いていたことが分かり、心から再結成をして良かったと思えた。多分あんな瞬間は今後もそうそうないと思う。

この映画の演奏シーンはチャイコンの短縮バージョンだが、私がこの曲で一番好きな動画は、庄司紗矢香さんが弾くこちら。小柄な彼女の魂を込めた迫力の演奏に何度観ても圧倒される。

この動画をUPされた方が、キャプションに書いている言葉を最後に引用したい。いつかこの曲を素敵なソリストを呼んで、仲間たちとフルオーケストラで弾くのが、今の私の一番の夢だ。

その旋律は、どこか悲しげであり盛り上がっては、どん底に突き落とされるまた盛り上がっては、どん底に突き落とされるそんなパートの繰り返しで、それはまるで自分が今まで生きてきた人生をそのまま、生き写しにしたような旋律だったのです。

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