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藍染工房ちずぶるー|鳥取県八頭郡智頭町(その①)

種蒔きから始まる藍染め|土地がひとつになる、心地よい循環①


冬は雪深く、林業が盛んな鳥取県八頭郡智頭町(やずぐんちづちょう)の山間地域で、先代から受け継ぎ、藍染めをしている方達がいらっしゃいます。「藍染工房 ちずぶるー」さんです。

4月中旬の快晴のある日。ちょうど、藍の種まきをしてこられたという、柴田さん、境さんにお話をお伺いすることができました。そうなんです!ちずぶるーでは、藍を自分たちで育てることからやっておられるのです。

▲藍染工房ちずぶるーの染め師(右)柴田さん・(左)境さん

藍を育てることは、自然なことだった。

「なぜ、自分たちで藍から育てるということをやっておられるのですか?」とお伺いしたところ、
「先代もそうだったから、自然と。」
との答えが返ってきました。スッと、その営みが自分たちの中にも入ってきたそう。
柴田さんが藍染めを始めたきっかけも、自然に導かれるようでした。当時、ちずぶるーは60・70代の女性2~3名で運営しており、高齢化に伴う後継者を探していたそうです。
全く藍染めに関わりのなかった柴田さんだったのですが、知人から「藍の種」をもらったことで、藍染めの世界への扉が開かれました。
種を見ているうちに、自分で育てて染めてみたい、と強く思いました。

▲蓼藍(タデアイ)の種。すごく小さく繊細に見える種ですが、育てやすい植物だと言われていました。

絶対に絶やしたくない、残したい。この場所を。

そこから、智頭農林高校の農場を借りて藍を育ててみないかと呼びかけたところ20人ぐらいが集まりました。
ちずぶるーの先輩方にアドバイスをいただきながら藍を育てたら、次は縫いを教わりたい、絞りや染めを教わりたいと、どんどんのめりこんでいったそう。
そんなことをしていたら、ちずぶるーの先輩から、
「興味があるならちずぶるーに入らない?」と声をかけられました。

一緒にやりたい、絶対に絶やしたくない、残したい。この場所を。と思いが溢れました。それを機に、柴田さんを含めた3人が集まり、受け継いだ「ちずぶるー」が誕生しました。
染料となる蓼藍(タデアイ)は、4月に種を蒔き、お世話しながら成長を見守り、朝5時に集合して葉っぱと茎を刈り取る作業を夏に2回。1日かけて行います。
それから天日干しを経て醗酵させ「蒅 (スクモ)」を作ります。蒅作りは、むせ返るように強烈なアンモニア臭が漂う中での作業となります。出来上がった蒅を触らせていただき、香りを嗅がせていただいたのですが、「んー、なるほど」。牛糞にも似たような独特の香りがしました。

そんなお話を聞かせていただく中で、「去年はすっごく良い蒅ができたんですよ」と、とても嬉しそうな笑顔が印象的でした。

▲ドライにした藍の花。ピンク色の花が
▲蒅(すくも)。深い深い黒に近い藍色をしています。

この連鎖を絶やすことなく、つなぐ。

毎年、土を耕し種を蒔き、季節の移り変わりを感じながら藍を育て、収穫し、乾燥醗酵させ染め材をたてて、染める———。そして、また翌年に繋いでいく・・・。この連鎖を絶やすことなく、先代より続けておられます。
土のざらつきやあったかさ、種の細やかさ、染め材の癖のある香り・・・。一つ一つが五感を通じて、染め師の琴線に触れ形になっている———。
その過程を知り、作品に奥深さを与えている理由にたどり着いたのでした。

▲手ぬぐい。智頭の山々をイメージした図柄は先代から受け継いだ柄。その他にも自然を表現した図柄が多く、はっとするほど美しい。

続きはこちらから→見えない部分に魂を込めて|土地がひとつになる、心地よい循環②

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