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なくなれ、威圧

けっこう前の学校法人日本大学(日大アメフト部)、すこし前の株式会社セブン・ペイ(7pay)、今度の吉本興業ホールディングス株式会社(吉本)がそれぞれおこなった記者会見およびそれらの危機管理体制や方策が、ITプロダクトの障害対応を考える上で示唆に富むものだった。また、私がヒエラルキーすなわち上下関係や身分制度や階級社会における威圧的姿勢について違和感や疑念をいだく機会がたびたびあるため、その観点から、大衆的にただしいかただしくないかより、あるひとつの考え方をまとめるよう私見を残しておくことにする

公開の目的

"えらい" 人なら威圧的でいてよいとする思考体系がなくなってくれたほうが気楽になれる人(からの賛同)を求めると同時に、もしも本記事の読者が威圧的な態度で接しられた際には、威圧者に本記事のURLや内容を紹介し「こういう考え方の人もいるようですがあなたは反発を感じますか?」と問うてみてほしい(代弁者の声として利用されたい)

背景にある考え方

語りかけずとも改善すると勝手に期待するのはよくなく、語りかけたところで改善しまいと勝手に悲観するのもよくない。相手を変えようと試みるより自分を変える方策の価値を認めながらも、さりとて情報共有も確認もおこなわれない環境で自分にばかり目を向けろというのは、とりようによっては残酷だ。伝達内容はさておき発信それ自体は尊い

概要

監督だから選手を、教師だから生徒を、雇用者だから被雇用者を、上司だから部下を、先輩だから後輩を、年上だから年下を、たとえば「オマエ」と呼ぶのはなぜだろう。逆に前者群が「オマエ」と呼ばれる用意がないのもなぜだろう。その理由が論理的に説明でき、かつその説明により後者群が納得できるなら「オマエ」と呼んでよい関係にあるといってよいだろうけれども、おそらく多くの場合そうではなく、なにか不適切な事態を起こす要因の温床に違いない。端的に「オレサマキサマの態度」と評し私は違和感を隠さない。

誰かから受けた恩を仇で返してよいと油断しているのではない。恩返しや恩送りは誠実におこなわれるべきだが、恩人や先人なら威圧的でよいとするふんわりとした通念をかもす伝承に反感をおぼえる。また、恩人や先人が採択した方策に意見したり反発したりするべきではないとする遠慮の暗示的強制に合理性を感じない。恩返しするならすべからく黙るべきとは思えない。

2019年7月22日朝の報道番組内で加藤浩次氏が、吉本の経営陣や松本人志氏や山本圭壱氏にかんし吐露した内容は、恩を仇で返したいわけではなさそうであり、彼自身に対し誠実であろうと努めた過程や結果を伝達したと一定の評価を受けてしかるべきだと私は思う。

少し話がそれるが、事業推進におけるトップダウンとは、意思決定機関と業務遂行機関の役割分担が生む作業の流れをさす言葉だと私は考える。経営陣とくに当該の2名が責任をとり退任(解任)してほしいとする要望を加藤氏が発言したいっぽう、私は、彼らが今後とも経営者としての役割が果たせるなら、責任を負い吉本を経営しつづけるほうが理にかなっていると思う。責任をとる方策が会社をやめることしかないわけではない。万が一、もはや役割がになえないなら、退任が自然

提案

立場が違う関係を、上下でなく役割を分かつ関係と捉えると、相互に居心地よいと思うのでそうしてみてほしい。そんな世界であってほしい。あるいは上下でもよいので、上が下に対し威圧的でよい理由を明示的に伝達し話しあって合意形成をはかってほしい

吉本の問題

雇用者が被雇用者を解雇する権利があるのも委託者が被委託者との契約を解く権利があるのも法的に支えられていて、とくにそれ自体は問題ではない。威圧し脅迫されたと感じさせたのが問題なのだ。ただし、虚偽の報告をした者にも問題はあろうことはけっして忘れられてはなるまい。「かわいそうだから」と感情的になるのを止めはしないが、かわいそうなのは虚偽の報告を受けたほうでもある。怒ってしまってもしかたないだろう。

とはいえ現実には、以下リンク先に示されるように、数々の芸人が記者会見の内容に懸念や疑問を表明している。思うに、質問に対する回答にかんし弁護士から「認めるべきではない」と忠告を受けたところもありそうで、岡本社長の答弁を聞いてもなにが言いたいのかわかりにくく、質疑応答が噛みあわず、詭弁ともとれる言葉や、やや棒読み口調にもとれる様子などから、同社長の誠実さはうまく伝わらなかったようだ

期待した役割をまっとうしてくれないと悲しむ?吉本芸人のツイート集

危機管理の観点

危機的な事態や障害が発生した際には、記者会見だけでなく広い意味の渉外対応をおこなう体制をしっかりととのえ、統括責任者、事態をすみずみまで把握し十全に理解する技術者、話術に長ける営業担当者、権利をまもる顧問弁護士は少なくとも確保しておいたほうがよさそうだ。さもないと、どのような質問にも誠実に適切に対応することはできまい。また、システム障害が起きた際には当たり前のように報告される一時策(応急処置)と恒久策(再発防止策)を揃えておけば、利害関係者の不安がやわらぐかと期待できる。今度の吉本の件は、再発防止策の具体性や有効性にさまざまな困難があり、なかなかいろいろ経営陣もたいへんだったろう

最後に

人を威圧しても、追いつめても、いいことないと思う

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