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霞ヶ関文学研究5 経済財政運営と改革の基本方針 2022


何故か霞ヶ関文学研究についての記事だけPVが伸びております。

このシリーズが好きな極々狭い針の先のような膨らみのないセグメントの方ですので読んでくださる方は本当に貴重です。
そんなありがたい方々が面白がるような霞ヶ関文章をディグってみました。
そしたら。なんとパンチが強い資料を内閣府で見つけました。

経済財政運営と改革の基本方針 2022 新しい資本主義へ
~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf

タイトルの字面を眺めるだけで香ばしい薫りが画面を超えて伝わってきます。新しい資本主義?成長のエンジン?持続可能な経済?
色んな??マークが頭に浮かんでは消えていきます。

ということで読み進めて行きましょう。

この資料、一行目がいきなりパンチラインなんです。

第1章我が国を取り巻く環境変化と日本経済
1. 国際情勢の変化と社会課題の解決に向けて

我々はこれまでの延長線上にない世界を生きている。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

これまでの延長線上にない世界を生きている。

どうも私たちがこれまで生きてきた世界線と、これからの世界線は違うようです。これを最初にハッキリ断言するこの力強い始まり。もはやポエムです。今日という日は霞ヶ関ポエムという新しいジャンルの爆誕に出会えた記念日です。

世界を一変させた新型コロナウイルス感染症力による一方的な現状変更という国際秩序の根幹を揺るがすロシアのウクライナ侵略、権威主義的国家による民主主義・自由主義への挑戦、一刻の猶予も許さない気候変動問題など我が国を取り巻く環境に地殻変動とも言うべき構造変化が生じるとともに、国内においては、回復の足取りが依然脆弱な中での輸入資源価格高騰による海外への 所得流出、コロナ禍で更に進む人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞、災害の頻発化・ 激甚化など、内外の難局が同時に、そして複合的に押し寄せている。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

現状分析としてはとても適切です。が、それでも内外の難局が同時にらそして複合的に押し寄せてる。と言語化されると、ヤベェなあって気持ちになりますよね。タイトルが改革の基本方針となってるだけあり、このままだとマズいよとグイッと引き込む文章が半端ない。読んでる国民にもう少し良い未来見させてよって甘えが一切ない始まりです。

我々に求められるのは、この難局を単に乗り越えるだけでなく、こうした社会課題の解決に向けた取組それ自体を付加価値創造の源泉として成長戦略に位置付け、官民が協働して重点的な投資と規制・制度改革を中長期的かつ計画的に実施することにより、課題解決と経済成長を同時に実現しながら、経済社会の構造を変化に対してより強靱で持続可能なものに変革する「新しい資本主義」を起動することである。こうして我々自身の資本主義をバージョンアップすることにより、自由で公正な経済体制を一層強化していく。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

来ました!新しい資本主義!ここを読み解いてくことがこの資料を、そして日本の未来を理解する鍵です。
いいですか、これはポエムなのではなく、説明力が足りないわけでもなく、自分たちの読解力と想像力が足りないのです。新しい資本主義の形は明示されているのに、読み手側の努力が足りないんじゃないかという立場で読んでいきましょう。

霞ヶ関文章を読む時は、理解ができなくても、彼らの言ってることが全てであり正しいと、盲信する気持ちで読むことが大切です。汝疑うことなかれですよ。まあ別に疑ってもいいし無視しても思うし実現するかは未知数ですが、こうした方針に沿って、まつりごとが行われ予算が決まっていくことは確かです。

でもこれを読むと
解決に向けた取組それ自体を付加価値創造の源泉⇒源泉になるの???
課題解決と経済成長を同時に実現⇒片一方でも大変なのに同時!?
「新しい資本主義」を起動⇒どこかに起動スイッチがあるのか?
我々自身の資本主義をバージョンアップ⇒どうやって??
と??マークが連発です。

一般のWEBコンテンツであればここでユーザーが大量に離脱が発生することでしょう。最初の2秒が肝心、30秒まで読んでくれた人が続きを読んでくれるようなふくらみを持たせるとか、そうした配慮は一切無しなんです。

こうなったら一国民としてお国の考えを理解するために意志を持って読んでいくしかありません。

新しい資本主義が目指す民間の力を活用した社会課題解決に向けた取組や 多様性に富んだ包摂社会の実現、一極集中から多極化した社会をつくり地域を活性化する改革の方向性を示す。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

どうもこのセンテンスでわかることは新しい資本主義では、「社会課題を解決するのは民間を活用する」ようです。国があなたに何をしてくれるか?ではなく、あなたは国に何を貢献できるのかを考えよう的なジョン・F・ケネディのような論調です。

(2)中長期の経済財政運営 持続的な経済成長に向けて、官民連携による計画的な重点投資を推進する。これによる 民間企業投資の喚起と継続的な所得上昇により成長力を高めつつ需要創出を促すととも に、今後の成長分野への労働移動を円滑に促す。また、省エネ・脱炭素を通じた国内所得 の海外流出の抑制同じ価値観を共有する国々との協力関係の強化を通じて、比較優位の メリットをこれまで以上に引き出すとともに国内投資を喚起する。さらには、インバウン ドの再生、農林水産物・食品や中小企業の輸出振興といった取組を強化し、産業の構造変 化を促す。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

成長分野に人を動かすのはWelcomですが、省エネ・脱炭素を通じた国内所得をどうやって海外流出するのを抑制するのか?はここだけ読んでもよくわからないです。同じ価値観を共有する国々の部分もどういう国やねんってところは読み進めていきたいところです。

インバウンド・農産品・中小企業など海外を相手に商売していくところは引き続きホットな分野だなと

(人的資本投資) 成長分野における重点投資等を通じた質の高い雇用の拡大を図りつつ、「人への投資」を 抜本的に強化するため、2024 年度までの3年間に、一般の方から募集したアイデアを踏まえた、4,000 億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じ、働く人が自らの意思でスキルアップし、デジタルなど成長分野へ移動できるよう強力に支援する。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

3年間で4000億円ってまたとんでもない額ですね。一方で諸外国と比較すると学ぶ意欲の低い日本がどうなっていくのかは気になるところです。

「未来の東京」戦略の推進より

(5)デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資 デジタル時代に相応しい行政、規制・制度に見直すため、デジタル改革・規制改革・行 政改革を一体的に推進する。今後3年間の集中改革期間において、「デジタル原則に照ら した規制の一括見直しプラン」に基づく目視規制や常駐専任規制等の法令等の見直しな どを行い、デジタル原則への適合を目指す。また、自動運転車や空飛ぶクルマ、低速・小型の自動配送ロボットの活用を含む物流・人流分野のDXや標準化、MaaSの推進のほ か、センサー、ドローン、AI診断、IoT技術、ビッグデータ分析など、あらゆる技術 を活用するためのテクノロジーマップを整備し、実装を加速させる。さらに、法人設立時の手続の迅速化・費用軽減を含む規制改革を推進する。行政の無謬性にとらわれず、デジタル技術も活用し、予算編成プロセスなどでEBPMに基づく意思決定を推進するなど、 より機動的で柔軟な政策形成・評価を可能とする取組を進める。加えて、ベンダーロックインなどの課題を解消するため、政府の情報システム調達の見直しに向けた検討を進める。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

このあたりのパートは、いいぞ!もっとやれ!って感じのことが書かれています。しかしデジタルについていけないお年寄りをどうするか?そういう人達がデジタルを学べる環境をつくるとか、どうするんですかね。
行政の無謬性にとらわれず、と言いつつも議会や有権者の意見はシビアだったりするので難しさもあると思います。
まあそんなことは織り込み済みで待ったなしなんでしょうね。冒頭の様々な困難のことを考えると

(社会的インパクト投資、共助社会づくり) 「成長と分配の好循環」による新しい資本主義の実現に向け、これまで官の領域とされてきた社会課題の解決に、民の力を大いに発揮してもらい、資本主義のバージョンアップ を図る。寄附文化やベンチャー・フィランソロフィーの促進など社会的起業家の支援強化を図る。 従来の「リスク」、「リターン」に加えて「インパクト」を測定し、「課題解決」を資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要がある。また、社会課題の解決と経済成長 の両立を目指す起業家が増えており、ソーシャルセクターの発展を支援する取組を通じて、 その裾野を広げるとともに、更にステップアップを目指す起業家を後押しする。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

このセクションで謎めいていた「新しい資本主義」の一端が垣間見えることが書かれています。

まず官の領域だった社会課題解決は「民の力を大いに発揮する」⇒えっ!?官はやらないの?という疑問はグッと飲み込みましょう。資本主義をバージョンアップさせるという大義の前では野暮です。
リターンに加えて「インパクト」を測定して「課題解決」を資本主義におけるもう一つの評価尺度にしていく必要があるそうです。
民は金儲けだけをするんじゃなくて、社会課題を解決していったことも評価しようぜってことなんでしょうね。てめぇが豊かな暮らしをするために社会課題を放置したり、社会課題を拡大するようなことは評価できんよねということなのかもしれない。

SIB38を含む成果連動型民間委託契約方式(Pay For Success:PFS) を通じて、複雑化する社会課題の効率的、効果的解決を促進し、さらに、社会的インパク ト投資資金を呼び込むための環境整備39に取り組む。ソーシャルボンドについて、プロジ ェクトの実施による社会的な効果を適切に開示できるようにする。ガイドラインの整備を 図り、社会課題ごとに、発行主体の参考となる指標の例を示す。起業家教育に当たっては、 社会的起業家を育成するシステムの強化を検討する。


38 Social Impact Bond の略称。成果連動型民間委託契約方式による事業を受託した民間事業者が、当該事業に係る資金調 達を金融機関等の資金提供者から行い、その返済等を成果に連動した地方自治体からの支払額等に応じて行うもの。
39 案件形成を含めた複数年にわたる支援の充実や、中間支援組織等との連携促進。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

初めて見る用語が多いからよくわからんけど、公共事業の委託の形も変わってくるのかもしれない。

制度の悪用をすると税金が良いように使われそうな気もするけど、これまで以上に信用してドガっと委ねないと毎年毎年コンペして成果を出すより焦げ付かないような運営をしていても社会課題は解決しなさそうだから、このあたりで書かれていることは本当に大事なことが書かれているのかもしれない

(関係人口の拡大と個性をいかした地域づくり) 関係人口の創出・拡大や二地域・多地域居住、地方でテレワークを活用することによる 「転職なき移住」の推進に向け、関係人口の実態把握とふるさと納税等の地域の取組の後押し、地方企業や地域人材との交流・連携の促進、全国版空き家・空き地バンクの活用、 空き家や企業版ふるさと納税の活用等によるサテライトオフィスの整備等を進める。地域への人材還流を促進するため、地域おこし協力隊等自治体への人的支援の充実やまちづくりの中核となる経営人材の国内 100 地域への展開に取り組むとともに、「デジタル人材 地域還流戦略パッケージ」に基づき、地域企業への人材マッチング支援等を行う。地域の稼ぐ力の向上に向け、産学金官連携により地域の経済循環を担う地域密着型企業の立ち上げ等を促進する。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

個性を活かした地域づくりや、地域が稼げるようになってくるというのは大事なのでここは、おおむねそうだよねってことが書かれてます。

(観光立国の復活) 我が国の成長戦略の柱の一つであり、地方経済・雇用を支える観光立国の復活を図り、 地方創生を進める。 国内交流需要喚起のため、感染状況等を踏まえて引き続き注意深く検討を行い、旅行者等の安全を確保した上で、国内需要喚起策を実施し、観光・交通事業者と連携して平日の旅行促進等を推進する。新たな交流市場を開拓しつつ、宿泊施設改修やデジタル実装等、 観光地・観光産業の再生・高付加価値化について、基金化などの計画的・継続的な支援策 が可能となるよう制度を拡充するとともに、法整備も視野に強力に推進し、また、持続可能な観光に向けた取組を進める。 国際交通を支える航空・空港関連企業の経営基盤強化を図りつつ、インバウンドの戦略 的回復に取り組む。消費額増加や地方誘客促進のほか観光外交の推進のため、きめ細かなプロモーションを実施し、CIQ等の受入環境の整備や水際対策、外国人観光客の民間 医療保険への加入促進を進めつつ、サステナブルツーリズムやアドベンチャーツーリズム、 新たな観光コンテンツの創出、国立公園等の滞在環境上質化、高付加価値旅行者の誘客、 クルーズの再興と世界に誇るクルーズの拠点形成、カジノ規制の実施を含めたIR整備等 を強力に推進する。日本酒、焼酎・泡盛等のユネスコ無形文化遺産への登録を目指す。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

こちらは観光の分野のパートです。

こちらの内容で網羅されていることなのでこちらでチェックをお願いします。

(単年度予算の弊害是正) 政策の長期的方向性や予見可能性を高めるよう、単年度主義の弊害を是正し、国家課題に計画的に取り組む。事業の性質に応じた基金の活用等を進めるとともに、年度末の予算消化などの予算単年度主義に起因する弊害についても、年度を跨ぐ予算執行が可能となる よう、柔軟かつ適切に対応する。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

このセクションにいいねボタンがついてたら超押しまくりたいですよ。謎に2-3月が忙しく4-5月が暇になったり、年度替わりのタイミングだから桜の時期の動画が取れないとかそういうのがなくなってくれることはホントに助かります。

(効果的・効率的な支出の推進とEBPMの徹底強化) 今後これまで以上に歳出の中身をより結果につながる効果的なものとすることが重要となる。効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)の推進に向けて、国民各層の意識や行動の変容につながる見える化、先進・優良事例の全国展開、インセンティブ改革、 公的部門の産業化、PPP/PFIや共助も含めた民間活力の最大活用などの経済・財政 一体改革の取組を抜本強化する。また、コロナ禍での累次の補正予算について、その使い 道、成果について、見える化する。 EBPMの手法の実践に向け、行政事業レビューシートを順次見直し、予算編成プロセ スでのプラットフォームとしての活用等を進める。また、政策立案・実施に投入するリ ソースの確保に向け政府の評価関連作業の合理化を進めるとともに、EBPMの取組を強化するため、エビデンスによって効果が裏付けられた政策やエビデンスを構築するためのデータ収集等に予算を重点化する。 予算の単年度主義の弊害是正に向け、事業の性質に応じた基金を活用しつつ、重要な政策課題に取り組む基金についてEBPMの手法を前提としたPDCAの取組を推進する。 また、計画的な投資と課題解決に必要な制度改革を含めたロードマップについても、こうした考え方に立って取組を進める。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

ここにきてEBPMが連発されております。しかし現状は「知事がこう言いだしたから~」ってお言葉を聞くこともままあり、現場担当としていは知事はエビデンスの基づいて発言をしていると信じるしかないですよね

また、公的統計の不適切な取扱いを繰り返さぬよう、集中的な統計改革を行う。

経済財政運営と改革の基本方針 2022

ペロっと最後に加わっている一文はこの2つの不祥事ですね。Googleのスプレッドシートみたいなもので集約管理すればええやんってことや統計を全数でとるかサンプリングでとるかみたいなことのようです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000605455.pdf

↑こちらの総務省のPDFは日本語の表記がとっても面白いので次の文学研究の題材はこれにします。

はい、長々と書いておりますが、これからはこれまでの延長戦上にはない世界だそうです。民間で稼いで儲けていくことは大事ですが、そこにさらに「社会課題を解決しているか」というところが問われてくるようです。

私はラッキーなことにインバウンドをさせてもらっているのは、外貨を稼ぐことに直結をしているし地域に貢献する仕事ができているのは意外と新しい資本主義をしてるのかもと思った次第です。

世襲だとか、シルバーデモクラシーだとか批判もあるけど、国民の代表とペーパーテストでハイスコアをたたき出す人たちが考え抜いた結論がこうした方針なのであればこれを信じるしかない。相変わらず支持率は高くはないですが、理解を深めていかないとミスリードしそうです。

「社会課題を解決するのは民の力」と言い切ってるわけなので、官が手を差し伸べてくれたらラッキーくらいで、むしろ俺ら(民の力)で社会を良くしていこうよと解釈した方がメンタル的にはいいかもです。

ただし霞ヶ関風に言うと「新しい資本主義」という概念は多義的で、確定的な定義や見解は見当たらないので、あくまで木立さんの理解だと思って話半分で読んでもらえると嬉しいです。


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