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勘所1:競争のない自地を狙う、独占する

事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「事業戦略の勘所コース第1回」

いつもながら予告なしですが、今日から「事業戦略の勘所コース」と言うのを始めます。事業には勘所があります。別の言葉で言えばセンスみたいなものでしょうか。事業戦略、事業経営にには、サクッと入っていくセンスみたいなものが必要で、それは合理的思考と経験的発想を組み合わせた様なものです。重要な勘所を5つ解説しますので、自分のセンスチェックし、良い方に事業を進めてください。

■どちらの市場に参入すべきか?

今ここに、参入しようとしている2つの市場があるとする。
1つは現在市場規模が1000億円のA市場で、成長性はゼロパーセント。現在3社が参入している。もう一つのB市場は、これから3年間で市場規模は確実に100億円程度になり、5年間で500億円程度になる見込み。まだ1社も参入していない状況。どちらの場合も初期投資と運転資金は同じとする。あなたが事業投資するとしたら、どちらを選ぶか?

これだけの情報では決断が難しいかもしれないが、事業リスク・リターンの観点から考えた場合、B市場を選ぶべきである。なぜか。

最初に参入し、新たなカテゴリーを構築すれば、その会社の製品ブランドがカテゴリーの代名詞となり、しばらく独占的地位を維持できる。価格設定のイニシアティブを握れる。

そのため利益管理も可能となり、投資に対するリターンが確実に見込める。しかも設備投資は市場規模の拡大に応じて順次行っていけばよいので、初期投資のリスクは限定的である。

一方、A市場は、現在すでに1000億円規模でB市場より大きい。参入ターゲットも明確でわかりやすい。しかし、価格のイニシアティブは、3社のうちトップシエアの企業が持っていると考えられる。また参入にあたっては、他の3社と同レベルの設備や広告宣伝への投資が必要である。初期投資もB事業よりも大きい可能性が高い。売上規模による原価力の違いから参入後は赤字が続く可能性が高く、リスクは大きい。

■私の判断に間違いないという人、今の参入市場はどうか?

簡単なケーススタデイではあるが、我々はA市場に参入してしまつていないだろうか。市場が具体的に見えていて、その規模も大きい。過当競争だとわかつていても、これまでに存在しなかった見えにくい市場より何となくリスクが少ないように感じてしまう。

国内外で市場規模が拡大する可能性が高かった右肩上がりの時代には、過当競争下での低価格競争であっても、高い設備稼働率によリコストは吸収できていたかもしれない。しかし現在では、そんな期待ができる市場は少ない。
事業投資の観点からすると、すでにあるカテゴリーに参入するよりも、新しいカテゴリーを創造し、企業もしくは製品名がカテゴリーの代名詞となるのが望ましい。

その理由は、A市場のケースの通りである。付け加えるなら、全く新しい市場でのビジネスの方法をマスターするには時間がかかる。カテゴリーをつくり出したトップ企業と後発企業では、ビジネスモデル、コア・コンピタンス、情報力のすべてにおいて大きな差がつく。後発企業は後発の戦略的優位性を確信できなければ参入してはいけない。

■新しいカテゴリーを探し出すためには

それでは新しいカテゴリーを探し出すためには、どのようなことを意識していくべきか。ここでは3つ挙げてみたい。

1つは、大きな環境変化から新しい事業領域の仮説をつねに持っておくことである。

どの領域にイノベーションが起こりやすいかは、環境分析の中から予測することが可能である。新しいカテゴリーを探し出すには、変化はどのようなものであるか、その変化がビジネスチャンスをつくり出しやすい領域はどこであるかを意識して、絶えず探索活動を行っていなければならない。今、自分が狙っている探索領域はいったいどこなのか。そこではどのような変化が起こり得るのか。そこで自分はどのような仮説を持っているのかを考え続ける必要がある。


2つ目は、日頃のビジネスの中で、思いがけない小さな成功や失敗を把握し、その原因の中に新しいカテゴリーの可能性を探すことである。

思いがけない小さな成功や失敗は、顧客ニーズと供給者間の新

しいギャップである。そのギャップにこそ、新しいカテゴリー開発の可能性がある。現在は大きな事業になっているが、事業成功のきっかけは小さな失敗からだつたという話はよくある。成功した人はその思いがけない失敗と成功の中に、新たなカテゴリーの可能性を見いだしたのだ。


3つ目は、新しいカテゴリーの可能性を実験し、トライアルしておくことである。

業績アップの必要に迫られた段階になってしまつて新規事業プロジエクトを発足させる時代は終わった。製品・事業のポートフォリオやライフサイクルを考慮すると、5年先の事業は今から企画開発を始め、2年後には本格的にスタートアップさせなければ、事業は回らない。それは企業買収でも同じことである。しかもすべての案件を事業化できるとは限らないため、いくつかの新規事業を企画しておかなければならない。

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