見出し画像

お客は消費体験を買っている

 消費者/顧客は企業から製品やサービスを買う。製品は有形のモノであるが、サービスは無形のコトである。
 サービスの購入では消費者/顧客がコトの消費体験を求めていることが理解しやすいが、実は、製品の購入でも、消費者/顧客の場合には製品の消費体験、また、生産者である取引先の場合には製品の消費体験を買っているのである。
 したがって、企業は消費者/顧客に自社の製品やサービスの消費体験を提供していることになる。

 消費体験(もしくは、費消体験)とは、消費者/顧客の、企業が提供する製品やサービスの認知/接触体験、購買体験、使用/利用体験、廃棄体験という、一連の消費プロセスを含んでいる。
 消費者/顧客は消費体験全体によって、製品やサービスの価値を認識することになる。

 ディズニーランドというテーマパークを例にとると、子供や若い女の子たちには、テレビコマーシャルや雑誌などによって、ワクワクするような新しいアトラクションが紹介される(認知・接触体験)。
 インターネットでの事前のチケット購入、または、来園当日のチケット売り場での購買体験をする。テーマパークに入って、お目当てのアトラクションを含んで、様々な乗り物を体験(使用/利用体験)する。
 一日タップリ遊んだ後で、楽しい思い出に浸りながら帰途に就く(廃棄体験)。
 有形物の製品と違って、テーマパークというサービスの性質上、廃棄体験という言葉に違和感を覚えるかもしれないが。

 ディズニーランドというテーマパーク・サービスでも、消費者/顧客は四つの体験を得る。掛かったお金や費やしたエネルギーなどの犠牲よりも、得られた消費体験の「喜び」の全体が大きければ、「顧客満足」がもたらされる。
 もし、期待していたお目当てのアトラクションがそれほどでもなく、掛かったお金や園内の混雑がもたらしたイライラと比べると、おいしいご飯でも食べに行ったほうかよかったと感じるならば、「顧客不満足」が生まれる。

 顧客満足や顔客不満足は、消費体験に対する消費者/顧客の損得評価の心理である。
 顧客満足を生み出すような製品やサービスは、売れる製品やサービスとなる。企業は売れる商品やサービスを作り出すように、消費体験全体を企画し、設計・製造し、販売する。

 製品やサービスのコストや売上ばかりに目が行き、消費者/顧客の消費体験の「喜び」に目がいかなくなると、商品力が低下する。
 B to Cで消費財を扱う企業であろうと、また、B to Bで生産財を扱う企業であろうと、消費者/顧客や得意先を「喜ばせて」から、後から売上や利益はついてくる。
 売上・コストありきで消費者/顧客の喜びを無視していると、競合商品に負けてしまう。

 コストや売上は数字で出てくるが、「喜び」は感性で捉えなければならない。
 見えないものを見ようとしたり感じたりすることが、感性である。
 感性には想像力が必要となる。事業が衰退している企業は想像力が枯渇しており、企業に文化の香りがなく組織が味気ない。

 そんな会社や組織に働いていていると、社員も面白くなかろう。社員が面白がらなくて、どうして会社が消費者/顧客に「喜び」を提供できようか?

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0262C0S4A400C2000000/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?