だいじなはなし!(1)
だいじなはなしをします笑。
それは、僕が生きてきた軌跡。
僕という人物が、生まれてから今まで、何を感じて、どう選択し、何を好きになって、誰を憎んだか。
先の先に転がっている大きな夢を前に、まず自分を知り、そして楽しく知ってもらおうと考えました。
堅苦しい話をするつもりはありません。
楽しい話、興味をひくこと、そういったものを中心に、笑顔でこの物語を書いていきたいと思います。
では、早速です!
はじまり、はじまり。
僕、としは、横浜の大きな病院で産声をあげました。
母の実家が横浜にあったため、家族が暮らしていたのは東京ですが、出産をするのは実家近くでと、母が選んだようです。
僕には兄弟がいません!
そんなこんなで幼い僕は、一人っ子の典型的な育てられ方で、過保護とは言わないまでも、物理的にも経済的にも何一つ不自由なく育てられました。
僕はいろんなものに恵まれて、本当に幸せな幼少期を過ごしました。
幼い「とし」はなかなかに面白い性質を持っていて、両親をいつも困らせたと聞いています。
それでは、記憶の残っている出来事から、なるべく時系列で「とし」の物語を進めていきたいと思います。
* * *
としはその出来事があった時、いくつになっていただろう。
まだ3歳か、4歳。幼稚園に通い始めたばかりの頃だったろうか。
としは人懐っこかった。人を疑わなかった。警戒心を持つということをまだ覚えていなかった。
その相手が隣の家に住んでいる笑顔のクシャッとするおばあちゃんだったら、それは尚更のことだった。
としは隣のばあちゃんについて、近くの大型スーパーまで来ていた。
でもとしの隣にばあちゃんはいなかった。
「ちょっとここで待ってなさい」
ばあちゃんにそう言われたので、ずうっとその場を動かずばあちゃんが戻ってくるのを待っていた。
待てども待てども、ばあちゃんはとしの前に姿を見せなかった。
おかしいな!あれ、自分は迷子になっちゃった?
としはそう思った。
迷子は、迷子センターに行くものである。
とりあえず受付のお姉さんの所へ行って助けてもらおう!
さて、突然の訪問者に戸惑いを見せる受付のお姉さん。
「迷子になったの?」
「誰と来たの?」
「おうちの電話番号は分かるかな?」
必死になって小さな訪問者の抱えてきた問題を解きほぐそうとする受付のお姉さん。
「わかるよ!○△✕-□〇☆△!」
「わあ、ちゃんと覚えてて偉いねえ」
しかしその番号に電話しても、どこにも繋がらない。
「あれー。おかしいねえ。プーップーッていってるよ」
「おかしいなあ!」
「もう一度教えて?」
「うん!えーとね、☆✕□-△○□✕だよ!」
明らかに先程とは違う番号。
その番号にかけても、やはりとしの家には繋がらない。
「困ったねえ。お母さんはどこに行っちゃったのかなあ?」
「困っちゃったねえ!」
屈託のない笑顔をお姉さんに向けるとしという名のガキんちょ。
……この状況を楽しんでいるこの子である。
この事件の顛末は、としの母親がスーパーの受付まで迎えに来て幕を下ろす。
ひたすら受付嬢にお詫びを言うとしの母。
楽しくて仕方ない様子で笑っている、当のとし。
タチが悪い。
隣のばあちゃんも、としがひっきりなしに話し掛けてくるもんだから、いい加減煩わしくなって置いていったという想像もつく。
ただ、としのいいところは隣の家のばあちゃんのことを、自分を置いていったなどとは微塵も思っていないところである。
そう、としはそのことに気付いてさえいなかったのである。
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