見出し画像

【109】美術館での一幕:続・見えない理由に寄り添う思いやり

昨日の「風船の話」に続き、ある有名な美術館での出来事です。
誰もが静かに芸術を観賞している中で、子どもたちがワイワイと駆け回っていました。その光景を見たある女性は、周囲の静けさを乱す子どもたちに不快感を覚えました。彼らの親はどんな教育をしているのか、と心の中で非難しながら、そのまま親に説教しようと思いました。

その時、女性の視線が一人の父親に向けられました。女性は、その父親に対して、

「ここは子どもの遊び場ではありませんよ。子どもたちを静かにさせてください。」

それを聞いて、父親は静かに語り始めました。

「子どもたちが騒ぐのは本当に申し訳ありません。実は、ついさっき、私の妻が病院で亡くなったのです。そのことを、子どもたちにどう説明すればいいのか、途方に暮れているんです。」

この父親の言葉に、女性は涙がこぼれました。

「そうでしたか。どうぞ、今は思い切り遊ばせてあげてください。」

これから悲しい現実を知ることになる子どもたちの無邪気な行動。そして、その背後にある深い悲しみが、彼女に新たな共感をもたらしました。美術館での騒ぎは、ただの迷惑な行動ではなく、人生の喜びと深い悲しみを抱えた家族の一部であることを彼女は理解したのです。

私たちの周りには「イヤな人」が少なからずいるものです。でも、その人だって、家に帰ればかわいい子どもたちの父親・母親であり、一家を支える大切な夫・妻であり、両親にとってかけがえのない息子・娘なのです。そして、それぞれの立場や背景が必ずあるのです。

また、生まれ育ちや価値観の違い、目指すものの違いなど、自分と違う部分は数えきれないほどあります。辛く苦しい目に遭わされてきた人もたくさんいることでしょう。いずれにしても、数えきれないほどの困難を乗り越えてきた結果が、いまのその人の姿なのです。

ですので、人の一部だけを見て「イヤな人」と決めつけるのではなく、相手に置かれた背景にも目を向けてみませんか。そのためには、相手に置かれた状況を知ろうとしなければ、その人のことを永遠に知ることはできません。

たとえ理不尽な出来事があっても、「この出来事には必ず何らかの原因がある」という視点で、人間観察をしてみてください。自分がこれまで気づかなかった相手の一面を知ることで、これまでギクシャクしていた人間関係が少しは改善することと思います。

★ワンポイント

人はそれぞれの背景や経験を持っています。怒りや非難の前に、相手の立場や背景を考え、共感することが大切です。出来事の裏には、様々な事情や感情が存在していることを忘れてはなりません。出来事を通じて、私たちは相互理解と共感の大切さを再確認することができます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?