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Bose Frames (Bose AR)に見る新規事業戦略

SXSWでの展示が3/13で終わり、3/14からやっとSXSWを見ることができました。

Day7以降はBlockchainとCannatech二色ですね。音楽系の色も濃くなって、日本人の大半は帰り、さまざまな意味で参加者の色も変わり始めます。実際、日本人とすれ違うことはかなり少なくなります。

展示が終わったら、まず最初にBose Frames Pop-Upに行ってみたいと思っていたので、すぐ次の日に行きました。

昨年のSXSWでPoCを展示してBose ARのコンセプトを披露しましたが、1年経たないうちに商品化するのは素晴らしいですね。Trade Showでの展示から、Framesの製造はFlexが担当しているようです。

まあ、機能紹介は公式HPに任せるとしてこれで$199.95というのは高いのかどうか(決して安くは無い)分かりませんが、もともとのBoseの価格帯やコストのかかる小型実装を鑑みるとこれくらいになってくるでしょうね。

試着してみたところ、結構良い感じで違和感なく音が聞こえてきました。この違和感無くというのが地味なようで生活に馴染ませるにはとても重要な要素だと感じます。Bose Framesは2つのフレームタイプがあるので、どっちが良いかと鏡に映る自分を確認していると、2種類のFramesを買っていく男性が。誰かと思えば、若林さん。

「これ、結構良いよね。買わないの?」

「はい、買います。」

若林さんの何気ない一言に買おうかどうしようかという70%くらいの気持ちが、1秒で100%になりました。笑

そのまま、少しお話ししました。まさかこんなところでお話しする機会があるとは。音のARと謳ったBose Frames。現実の拡張方法は色々とありますが、そういった意味では個人的にはノイズキャンセリングもARだと思っています。機能が限定的なAR。

ですが、若林さんは「わざわざARとかいう必要も無いよねー」と。確かに音のARとかって言われると「何がARなんだろう?」って余計なことをあれこれと考えてしまいます(それは職業病で普通の方は考えないことなのかもしれませんが)。

ただ、この”音のAR”ってあえて言うことは企業にとっては重要だったりします。新たなジャンルを構築することでそのジャンルでの地位を確立しやすいからです。例えば、お掃除ロボットといえばRoombaというように。恐らく、この後似たようなコンセプトのデバイスがいくつか登場するでしょう。

更に、音響メーカーとしての地位を確立しているBoseにとって、新規事業を進める上で音 x ○○は重要な方程式で、色々検討した結果音のARということになったのでしょう。“AR=視覚情報を現実に重ねる”というバイアスも音のARをイノベーティブに捉える人を作り出すことができます。本来、ARは感覚器を限定する言葉ではないので、これもARなのですが、このバイアスをうまく利用するために音のARと言っているんでしょう。

・新ジャンルを築くこと(市場のバイアスもうまく利用)
・既存事業 x ○○


この2つのポイントを満たすことは当たり前のことですが、新規事業にとって重要でしょう。Bose ARは成功なのかはまだこれからだと思いますが少なくとも、上手い出し方だなぁと感心しました。良いケーススタディでしょう。

結局、色んな会社でVRだ!IoTだ!とバズワードに関する新規事業を求められることは多いでしょうが(SXSWでも視察で来ている方から頻繁にこのような話を聞きました)、その時に自分たちは何で普段勝負していて、それとの掛け合わせをどこまで深く考えられるのかという当たり前のことができるかどうかなんだなとBose ARを見ていると思います。様々なトレンドを自分達の文化・言語で解釈するとこういうことなんだというのをしっかり出せるかどうかが重要です。


今後の戦略

恐らく、今回サングラスとしている最も大きな要因はバッテリーではないかと思います。待機時間は12時間とはいえ、3.5時間しか使えないとメガネとしてのUXには少し遠い気がします。

今回はサングラスのカテゴリーにすることで、利用シーンをある程度限定することができ、まだまだ機能的に足りない部分を目立たせなくすることができます。これも戦略の上では重要です。

今後想定される動きとしては、
・グラス部分のバリエーション増加
・SDKを活用したアプリ(ユースケース)の拡充
・バッテリー性能向上に伴うメガネとしての出し方
などがあるのではないでしょうか。

Boseとしては今まで再生装置として、素晴らしい体験を提供することをしてきましたが、一方でユーザの情報はほとんど持っていないに等しかった。スマホAppのBose Connectもデジタルエクスペリエンスの一歩目でしたがユーザを知るには程遠い存在でした。

BoseはBose ARプラットフォームを通じてユーザを理解しようとしています。単なる物売りからの脱却です。スマホと合わせて、ユーザがどこに居て、どのようなモビリティで、どこを見ていてなどを把握できる訳です。この後、ユーザセンシング機能の追加もあるかもしれません。地図と組み合わせてどの構造物を見ているかという大まかな情報だけではなく、より細かくどこを見ているかを把握できると、もはや見ただけでその対象の検索結果が分かる世界が来るかもしれません。

Boseとして、他のデバイスとは一線を画す存在になる可能性が高いBose Frames。今後の動きに注目です。

今、この記事はPalo AltoのPhilz Coffeeで書いてますが、ここにいる多くのプログラマーの中の誰かがSDKを設計していたりして。

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