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4.3 ゴシック地区のペンション

荷物を夕方まで預かってもらいホテルをチェックアウト。

BIENESTALはいい宿だったが「地球の歩き方」にも載っているので、日本人観光客が泊まりに来る可能性が高い。
今まで散々日本人に出会ってお世話になりっぱなしの分際でどうかと思うが、一応スペインに滞在しているので日本人が集まりやすい環境は避けたいので自力で条件の良いホテルを探したいといつも思っている。

カタルーニャ広場近辺から一軒一軒安ホテルをあたり、断ったり断られたりしながら街を南下していたら、バルセロナの旧市街、治安が悪い地区といわれている「ゴシック地区」にたどり着いていた。

スラム街的な雰囲気かと想像していたがそんなことはなく、ヨーロッパの下町といった感じ。細い路地が多く、行き交う人も地元の人ばかりで活気があるように思えた。
カタルーニャ広場近辺に比べたらホテルの看板は少なかったが、しばらく歩くと名前のない「Pension」とだけ書かれた看板を発見。

ブザーを鳴らして空き部屋はあるかと話しかけると

「Si.(はい。)」

と女性の声で反応がありドアのロックが解除され中に入った。

階段を登って3階のロビーに行くと、おとなしい雰囲気の女性が出迎えてくれて1,800Ptsと2,000Ptsの部屋を案内してくれた。BIENESTALより高いが、サロンにテレビがあり共同バスが2つと洗たく機も完備。なにより共同のキッチンが付いているので、自炊をすればトータルで安く上がりそうである。

1,800Ptsの部屋が南向きの道路沿いで、日当たりが良かったのでコチラに決めた。4月8日まで泊まりたかったが、7日までしか空いていないそうなので5泊分だけ前払で宿代を支払った。

来週のレェイダのフットボールの試合に再び行こうと思っていたので、数日早く行くことにしよう。

ゴシック地区のディープな場所にある看板もない安宿。
さすがに日本人はいないだろうと思っていたら、案内してくれた女性が長期滞在している日本人がひとりいると教えてくれたのでBIENESTALから荷物を持って来てしばらく休んだあと、一応長期滞在しているという日本人の部屋に挨拶に行ってみた。

ノックをすると少しだけドアが開いて、誰?と言った表情で日本人男性がコチラを見てきた。
ひと通り挨拶と自己紹介をしたあと、このホテルのことを聞いてみた。

「このホテルはキッチンとか洗濯機とか使えて、長期滞在にはちょうどいいですね。」

「まぁね。ホテルっていうか、ここは長期滞在者向けのアパートだけどね。」

長期滞在しているというこの方は安田さんという方で、安田さんによると、この宿の宿泊者は観光旅行者はほとんどおらず出稼ぎや学生などの長期滞在者が大半らしい。
外の看板が名前もなかったのは、観光旅行者を対象としていないということなのかもしれない。

安田さんは27歳、北海道で建築設計の仕事をやっていたが、日本での仕事のやり方が嫌になり、退職し1月頃からスペインに来ているそうだ。現在はバルセロナ主催の建築コンペ?に出品するために部屋に引きこもって設計図を書いているらしい。落ち着いた雰囲気で優しそうな人だ。 

安田さんが、出会ったお祝いに夕食を作ってくれるというのでご馳走になった。ここは自炊ができるのだ。冷蔵庫に自分で買ってきた食材を入れて置くこともできる。 

「使いかけの食材は名前を絶対に書いておいたほうがいいよ。名無しだと確実になくなるから。」

パスタとスクランブルエッグを頂いたがとても美味しかった。

2畳ほどのキッチンの隣にある6人席のレトロなテーブルがあるダイニングで酒をチビチビやりながら雑談していると、いきなりプロレスラーかと思うくらいの巨漢の男が入ってきた。

安田さんによると、この大男はここの住人でアルゼンチン出身の方だそうだ。

「昼間はランブラス通りでネックレスの露天商をやってるんだよ。昼間はね。」

と、安田さんが昼を強調したので夜は何をしてるかと聞いたところ

「教えてくれないんだよね。夜出て行くのはよく見かけるけど。」

さすがにサングラスの露天販売だけで生活していけるとは思えないので、夜は別の仕事をしているのだと思うが...。スペインに移住してきた人の仕事事情というのも気になる。

お皿を片付け、安田さんの部屋に移動して雑談を続けていると、しばらくして安田さんがタバコの火をつけにキッチンに行くと言って出ていった。

5分後、男性一人を連れて戻ってきた。

キッチンでスペイン人住人のミゲルという男と一緒になり、3人でワインを飲もうと誘われたので連れてきたという。

再びキッチンに戻ってみるとミゲルが冷蔵庫からボトルを取り出し自分達に勧めてくれた。何かのお酒のようだが初めて見るデザインだった。

バルセロナで大工をやっているというミゲルは、この街に来た経緯やバルセロナの現在の状況などいろいろな話をしてくれた。しかもギターが弾けるというので、安田さんが催促するとギターを部屋から持ってきて何曲が聞かせてくれた。

数日前、夜中に部屋でひとりでギターを弾いていたところ、迷惑だと主人に怒られたそうなので、小さな音で弾いてくれた。

先日の黒田さんといいミゲルといい、スペインはなぜこんなにギターの音色がしっくりくるのだろう。

安田さんと一緒にうっとりと聞き入っていたが、タイミング悪く宿の主人が戻ってきてしまい、現行犯となったミゲルは再び主人に注意を受け3人の飲み会はお開きになってしまった。

偶然訪れたこの安宿だが、今までのホテルと違って何だか面白そうなところにやってきた気がする。

気になるのは治安の悪いと言われる地区にあることと、外の通りから奇声や叫び声がずっと聞こえていて深夜まで寝付きにくいことである。

本日の出費

朝食 600Pts
雑貨買い物 900Pts
宿代(5泊)  9,000Pts

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