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読書レビュー 億男

 面白さ★★★★☆
 オススメ★★★★☆
 難しさ★☆☆☆☆
 ページ数:243

 ひとことで表すと…お金と幸福について考える機会になる本

 物語は主人公の一男(亡くなった弟の借金が原因で妻と娘と別居中)が、宝くじで3億円を当てるところから始まる。
 3億円を当てた一男は、おそらく宝くじの当選者のほぼ全員が感じるであろう不安に突き動かされ、大学時代の親友で事業に成功しお金持ちである九十九に会いに行く。「お金と幸せの答え」について聞くために。しかしそこで九十九は3億円を持って消えてしまう!
 その後、九十九の行方を探るため、一男は九十九の知り合いに話を聞きに行くのだが、そこで様々なお金と幸福に関する話を聞いて、その答えに近づいていく、というのがこの物語のあらすじである。

 途中、ハッとさせられるやりとりがあった。
 九十九の元カノの十和子と一男のやりとりである。

   十和子「お金があれば、家族を
       買い戻せると」
        一男 「その可能性はあると思います」
   十和子「私はそうは思いません」
   一男 「どうしてですか?」
   十和子「あなたが欲しいものは、
       お金で買えないからこそ
       手に入れたいものだから」

 十和子の所には九十九が消えてから一番最初に向かうのだが、この言葉にはこの物語の全てが詰まっているように思った。
 ここで書くとチープに感じてしまうかもしれないが、お金で買えないものが一番価値のあるものである。それは、現代においては愛や自由といった本来買えないと思われているようなものも買えてしまうからこそ、そう言えるのかもしれない。

 物語の登場人物やそのキャラクター、考え方にはそれぞれの独特な特徴があって、一男と共にお金と幸福について考えていける構成になっている。ぜひ実際に読んでみて考えてみて欲しい。

今回の本:億男 川村元気 株式会社マガジンハウス 2014

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