『気休め』

人は死ぬと
魂の分だけ軽くなるという

正しくは魂には質量がある
という言説だったと思うが
そんなことはどうだっていい
今必要なのは気休めなのだ

人の死を目の前にして
僕は明日も生きねばならないことに絶望した
飯を食わねばならぬ
銭を稼がねばならぬ
身体を清め休めねばならぬ
人を敬わねばならぬ
人に敬われねばならぬ
生きるための全てのことと
それを経てすら死んでいくことに絶望した

魂が死によって解放されるなら
そこに救いがあるような気がする
否、そういう気になれる

僕はせめてその数十グラムのために生きていると
君はその数十グラムのために生きて死んだと
餞の言葉としてはあまりに不躾で不出来だが
これは気休めなのだから仕方がない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?