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彼女の秘密|ショートショート

明け方、梟が窓をこんこんと叩く。
瞬間、私は悟る。
遂に彼女は逝ってしまったんだ。

橙色のスカートで式に向かう。
葬式を家でやるのはいいとして、ドレスコードを鮮やかな服にするあたり、死んでまで相変わらずだ。
本人は薄緑のドレスを纏って棺に納まっている。

参列者はまばらだった。
こんなに静かだと、あの日のことを思い出す。



死ぬかと思った。
森で熊に遭遇し腰を抜かしていたら、彼女が現れたのだ。
彼女がふわっと駆け寄り何かを囁くと、熊は去っていった。
次に彼女は私をみつめ、人差し指をすっと立てると、尖った唇に当てて笑った。
とたん虫も鳥も風さえも静まり返り、緑の静寂が訪れた。

同級生と知り、居た堪れなさから随分と酷い事をした。
しかし彼女は気にもせず、私は苛立ち同時に目が離せなかった。
この70年ずっと。



彼女を燃やす煙が上がる。

さよならだ。

私は声を上げて泣いた。



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