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【投機の流儀 セレクション】「悪い円安」論のレベルに一旦は入った

円安騒動の陰で、植田総裁は連続利上げに向けた布石を着実に打っていると思う。円安に追い込まれたフリをしながら、金融政策の正常化への脱出の舞台を整えるというタヌキ植田総裁の高等戦術が透けて見える。

「2%インフレ」が2023年に実現して、アベノミクス時代から10年間の力投で達成できなかったものが海外要因からのマグレで成立し、これを「基調的な物価上昇率」という表現を植田総裁はするが、この言葉は分かりにくい。
「2%目標」が達成された喜びなのか、将来の不安を宿し、異常金利の脱出としての利上げのみならず、過度な円安を止めるための連続利上げの布石を打っている。植田総裁が繰り返した基調的な物価上昇率という言葉は、円安という外務要因から来たものを除いて、長期的に見た値上げの実力のことを言っているように聞こえる。そうなると「成長と分配の好循環」の「成長」の方が達成に向かっているということになる。

物価上昇率は目標の2%を超える期間が今は続いているが、「基調」はまだ安心できない。それを植田総裁は「基調的な物価上昇率」という分かりにくい言葉を使っている。「2%目標が達成されるのが基調となった」の意味なのか、過度な円安が続くという意味なのか、この辺はタヌキ総裁の高等話術である。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)ゴールデンウィーク中の海外株価
(2)4月は、こんな月だった。
(3)4月は先進国の多くで、株価指数が下落した。
(4)日本国内企業が4月に大量の社債発行─W・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイ等も
(5)円ドル相場
(6)円安が重大な問題をもたらす恐れ──本稿が昨年から述べて来た「デフレからインフレマインドへの『メガトレンドの変化』を買う相場」に水を差す重大な問題となる。
(7)外為市場と日銀・財務省
(8)外為市場と政府と日銀(★註)
(9)株価予想変動率、週末は4月上旬以来1カ月ぶりの低下
(10)直近の企業決算動向は、製品を値上げして売れる状態になったことであり、インフレへ移行していく傾向の現れである。
(11)当面は、ボックス相場が続くと見るしかない。

第2部;中長期の見方
(1)「動き始めた物価と賃金─日本経済の新しいステージに向けて」(景気循環学会の内閣府経済社会総合研究所【旧経企庁】の新鋭学者 林伴子女史)
(2)中東紛争と原油価格─イランのイスラエル攻撃に対して、意外に静かな原油市場
(3)11月の米大統領選は「もしトラ」から「ややバイ」へ
(4)「円安=株高」と喜んでいられる段階は通り過ぎたかもしれない。「過度の円安=金利引き締め=市場波乱の可能性」が芽生えてきた。
(5)「悪い円安」論のレベルに一旦は入った。
(6)「米利下げは年内2回→ドル安→円高→年度末に140円から147円」
(7)アジア投資家は中国から日本へ資金を移す必要があり、日本株への熱は高い。
(8)日本製鉄(5401)余談─その2
(9)高市早苗氏と小池都知事

第3部;読者との交信蘭(投資の「終活」の件について)

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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