昨年の受け入れ再開以降は予想通りのインバウンドバブル。秋の繁忙期から怒涛の勢いでインバウンドのお客様が押し寄せ続けて、どこに行っても現場はとても大変な状態が続いている。

この春に訪れた人気温泉地では、迎え入れてくれた若手スタッフさんのマルチな働きぶりに、富裕層ゲストは感心していました。人手が不足しているらしく、とにかく神出鬼没のご様子。

私たちの乗ったジャンボタクシーの誘導に始まり、駐車場では笑顔でご挨拶〜ウェルカムドリンクのサービス〜浴衣お着替えのお手伝い〜宴会場へご案内〜客室のお布団掛け〜給仕のヘルプ〜スパ予約〜夕食片付けまで担当いただきました。

翌朝には朝食サービス〜チェックアウト〜お見送りとマルチタスクをこなしていた。きっと、私たちの目に留まらないところで、裏方の仕事もたくさん抱えながらのことだろうから、本当に素晴らしい働きっぷりに感銘を受けました。

もちろん、そんな人材不足は宿泊施設だけじゃない。飲食や観光施設、そして旅行会社エージェントのみなさまも、本当に大変な時期を過ごしているのだと思う。春の超繁忙期は終えたものの、アフターコロナバブルに、シーズンオフはもはや無さそう。受け入れ再開後の秋からずっと繁忙期が続いているような印象です。

最近の私は、お仕事をいただけることが嬉しすぎるあまり、身体の限界を考えずに飛ばしすぎたようです。コロナ禍に更年期の症状を抱えていたところ、年初の帯状疱疹、後遺症の神経痛等の諸症状、梅雨による神経痛の悪化など。長期戦なので、下半期は少しペースダウンすることにしました。一部の関係各位には大変ご心配ご迷惑をおかけすることになり、申し訳ございません。

必ず復活しますので、待っていてくださいね。

ピリピリ、じんじんと四六時中の痛みはあるものの、できることはあるはずだからと、ありがたいことにお声がけいただいて、万博に向けた事業や高付加価値の新しいコンテンツ開発、そして自治体様やDMO様等関係者と力を合わせて、現地視察やインバウンド対応を全方位からサポートしています。夏の間しばらくはこちらの役割が中心になりそうです。

各地を視察させていただいて、あらためて気づいたこと。それは、魅力的な場所や人々、まだ海外に知られていないところが本当にいっぱいある。表に出ていないお宝がたくさん潜んでいるということです。

注目されることはなくても、使命感を抱いて、昔ながらの伝統を受け継ぎ、情熱をかたむけている人々、真摯に仕事に取り組んでいるひたむきな姿に心を打たれました。

先日は、町工場を訪れました。職人の卓越した無駄のない動きに、うっとりしながら見惚れていました。じっくり観察しながら、すかさずにメモを取ろうとしていた自分にハッとなり、なんだか恥ずかしくなってしまいました。

誰でも対応できるように、業務内容などを明文化する場合があると思います。事務作業は読めばある程度対応できるかもしれませんが、伝統の技術などは、たとえマニュアル化できたとしても、それを読んで誰もがすぐに職人技を習得できるわけではない。

なぜなら、プロと呼ばれるような熟練の仕事は、基本を踏まえて、そこからはるかに高いレベルに達するまでの実践、数多くの失敗や成功事例を通じてのみ習得できる、経験知が加わっているのだから。

すべてを明文化しようとしても、やはりそこに限界はある。
世の中には、マニュアル化に適する業務と、それ以外に、暗黙知の領域が大きい故に、マニュアルと相性の良くない業務がある。

たとえば、野球のとても秀逸なマニュアルがあったとする。その一冊で、野球という運動競技については、ある程度は理解できるかもしれない。

けれど、実際にプレイしたいのならば、地道な素振りを毎日繰り返すことが、マニュアルを熟読するよりも大切なことのように思える。理論をサッと読むだけで、バットを振らずして、ホームランを狙おうとするのは、到底無理な話なのだから。

インバウンド対応の明文化はどうだろう。マニュアルが数多く存在しているけれど、そこに書かれている内容はあくまで最低限のスタートラインのレベルなのだろう。

さしずめ、富裕層の対応などは、すべてのソリューションをもれなくマニュアルに起こすには、おそらく天文学的なボリュームが必要になりそうだ。毎日が予測不能、何が起こるか行ってみないとわからない、というのが富裕層の現場対応なのだから。

目の前のゲストを見ずに、紙を見ている日本人

紙を見て人を見ず、そんなインバウンド対応をもっとも嫌うのが富裕層であることを忘れてはいけない。

あなたの目の前にはお客様がいらっしゃいます。そして、前例の無いリクエストがあります。さて、どうしましょうか？

実際には、マニュアルでは対応しきれない事例だらけのインバウンド富裕層。お客様に心から喜んでいただけるには、どのような準備をしておけばいいのでしょうか？　今一度考えてみる必要がありそうです。