公衆電話

Ⅰ. 貴方が隣りにいた頃は
気付かずにいた幸せが
些細な事に彩りを与えてくれていたね
花瓶の花の水を換えて
流れる雲を見送って
今では私ひとりきり
そんな日々を生きています

少しだけ甘えたくて百円玉を握りしめて
新しいダイアルをそっとまわしかけたけど
指が戸惑う   

Ⅱ.都会は冷えてきた頃ですか
風邪など引いていませんか
逢えないこんな淋しさで
編んだマフラー贈りました

寒さに凍えながらもふたり寄り添った
去年の冬が懐かしいけどわがままは言わないから
夢追いかけて……

「少しだけ風邪気味です」と
百円玉を握りしめて新しいダイアルで 
貴方からかけてくれた 声が震えた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?