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夜の車窓。の第百十ニ首

第百十二首
レゴのように車窓を流れる街灯り
電車の音はあの日と同じ
─── 音無桜花

2024.04.21. 深夜詠


パートナーの手術後、回復経過を見るために滞在していたパートナー宅を離れ、自宅へと戻ってきました。

降雨のため出発を遅らせて乗った電車は、日曜の夜とあって比較的空いていました。
自宅まで約2時間半の行程です。

車窓の向う側では、私の目に無味乾燥に感じる街灯りの風景が、暗闇のなか前から後ろへと次々と流れていきます。

齢五十を過ぎ、これまで色々なシチュエーションや心情・状況下で、(様々な乗り物で)車窓を流れる夜景を眺めてきました。

仕事で疲れきった帰りの電車、眠らぬ街のネオンが流れてゆく夜。

飲み会の後の気だるさや、終電近くの満員電車に耐えた夜。

切なさを抱えて高速道路を走った夜。

夜に移動する旅程で、軽い高揚感を身に纏いながら道行きを過ごした夜。

体や心の痛みに耐えながら帰路についた夜。

家庭の事情で職を辞し、自宅を引き払って実家へと車を走らせた夜。

etc…etc…


天空にある月と同じく、車窓を流れる街灯りはいつも私の心境にお構いなしで無口。

心に刻まれている過去の夜にも、同じような電車の走る音がしています。

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