音無桜花

詠みます。

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緑かがやく。の第百十五首

第百十五首 青葉たつ径ゆくきみの背にひかる 初夏の陽射しと淡色の髪 ─── 音無桜花 2024.04.28. 新緑の小径・木漏れ日のなか 今日はパートナーと共に、県内屈指の古刹・紅葉の名所『教林坊』へ出掛けてきました。 通常は非公開のお寺なのですが、現在は初夏の新緑シーズンの限定公開期間にあたり、秋の紅葉時期とは違った趣きの景観を目にする事ができます。(※拝観日は教林坊のホームページを参照下さい) 今日は天気が良かったので、新緑の輝きも一層際立っていたのではないかと思

    • 初夏、前奏。の第百十四首

      第百十四首 静けさに光と影が揺れています 遠くでからり枯れ竹の音 ─── 音無桜花 2024.04.25.

      • 儚く。の第百十三首

        第百十三首 逝く春のいのちの残滓が散るように はらりはらりと花が散ります ─── 音無桜花 2024.04.23.

        • 夜の車窓。の第百十ニ首

          第百十二首 レゴのように車窓を流れる街灯り 電車の音はあの日と同じ ─── 音無桜花 2024.04.21. 深夜詠 パートナーの手術後、回復経過を見るために滞在していたパートナー宅を離れ、自宅へと戻ってきました。 降雨のため出発を遅らせて乗った電車は、日曜の夜とあって比較的空いていました。 自宅まで約2時間半の行程です。 車窓の向う側では、私の目に無味乾燥に感じる街灯りの風景が、暗闇のなか前から後ろへと次々と流れていきます。 齢五十を過ぎ、これまで色々なシチュエー

        緑かがやく。の第百十五首

          穀雨。の第百十一首

          第百十一首 春過ぎて名残りの熱を冷ますように 静かに静かに雨が降ります ─── 音無桜花 2024.04.21. 穀雨のおとずれに。 春爛漫の頃が過ぎて、暦は穀雨に。 今日は暦通りに雨が降っています。 自然は着実に、営み通りの歩みを進めているようです。 季節変わりの激しい雨とは違う、静かな雨が世界を潤してゆきます。 今月、手術を済ませたパートナーの足取りも次第にしっかりしてきました。 回復の様子に季節の歩みと同じ理の存在を感じます。

          穀雨。の第百十一首

          今年の記念日。の第百十首

          第百十首 風に舞う名残りの花とともに行き 虹が咲くころ迎えに行きます ─── 音無桜花 2024.04.07. 今日は私とパートナーの記念日。 折しも今年は桜が満開の一日となりました。 今年は例年と異なりパートナーが手術を控えています。 よって本格的なお花見は先日済ませて、今日は買い物がてらの散策花見です。ソメイヨシノが鈴生りに花を咲かせています。 明日からは早くも花が散り始めそうな気配。 パートナーと共に病院へと向かう道行きは、桜の花びらが舞っているかもしれません。

          今年の記念日。の第百十首

          哀傷の桜。の第百九首

          第百九首 墨染の桜も幾年咲き巡り いまは薄紅深草の枝 ─── 音無桜花 2024.04.03. 昨日は京都伏見へと出かけました。 今年は他のタイミングでお花見できそうになく、観光地の散策を兼ねてのお花見です。 満開手前の開花状況でしたが、好天に恵まれて情緒あるお花見日和になりました。 十石舟が行き交う堀割や酒蔵が建ち並ぶスポットの散策とあわせて、目的地のひとつとしたのが墨染寺です。 別名「桜寺」の名を持つこのお寺は、次のような伝説と古今集に採られた和歌で知られていま

          哀傷の桜。の第百九首

          滔々と。の第百八首

          第百八首 あの春の、あの夏の日の、あの秋冬の、 時間の欠片が流れていきます。 ─── 音無桜花 2024.03.31. ようやく春本番の日和が訪れるようになりました。 気温が上がってきたので、トレーニングの時間を早朝に切り換え、コースもお馴染みの経路に変更しました。 このコースは最寄りの河川沿いにある堤防を目的地としていて、折返し地点まで川を見ながら走る事になります。 今朝の川の様子は、彼岸に降った雨雪のおかげで滔々とした水流が川下へと流れていました。 狭い橋の上

          滔々と。の第百八首

          優しい雨。の第百七首

          第百七首 夜更け過ぎ恋の痛みに少し似た やさしい春の雨が降ります ─── 音無桜花 2025.03.25. 深夜詠 先週来、雨模様・雪模様の天気が続いています。 今夜は夜半になって雨脚が強まってきました。 春の雨は肌寒さのなかに僅かな暖かさを湛えていて、冬の雨との違いを感じさせます。 冷たさと温かさが同居していて、秋の雨と同じく季節変わりの雨はどこか切ない感じ。 まるで恋の甘やかさと痛みのようで、忘れがちな感覚を思い出させます。 明かりを消した部屋で夜更けの雨音を聞

          優しい雨。の第百七首

          春と時計。の第百六首

          第百六首 雨露は春を小分けに枝の先 時計は10分進んでいます ─── 音無桜花 2024.03.24. 今年は彼岸の時期に積雪があり、その後も気温が低い日が続いています。 週末も雨模様。 雨の合間に少しでも運動を、と散策に出かけました。気温は相変わらず低めで、冬の寒さを感じます。 それでも花々はあちこちで彩りを増して、着実に季節が進んでいる事を報せてくれます。 梅や馬酔木、早生桜、木蓮や辛夷に野の花々。 そろそろ終わりに向かいつつある梅の枝先に、雨露が光を湛えてい

          春と時計。の第百六首

          畳なわる。の第百五首

          第百五首 畳なわる若狭三方の春霞 山端の向こうまだまだ向こう ─── 音無桜花 2024.03.17. この週末、福井県若狭の三方五湖レインボーライン山頂公園から見た景色を詠んだ一首です。 三方五湖越しの風景は、若狭から近畿へ延々と山が連なっていて、春めいた陽気のなか山の谷あいからは霞が立ち昇っていました。 折り重なって続く山々の姿は昔ばなしのワンシーンのよう。 土地の開発が進んで、気候が温暖化した現在でも、昔と変わらぬ季節の風物の景色なのだと思います。 初句の「

          畳なわる。の第百五首

          猫がゆく。の第百四首

          第百四首 猫がゆく独りの夜は寂しいと 夜道を独り鳴く影がゆく ─── 音無桜花 2024.03.15. 深夜詠 恋の季節ですかね。 珍しく外から猫の鳴き声がします。

          猫がゆく。の第百四首

          霞立つ。の第百三首

          第百三首 霞立つ鳰の水面は茫洋と 水鳥やすらう束の間の春 ─── 音無桜花 2024.03.15. 本格的な春の陽気がやってきました。 気温が上がって湖には霞がかかっています。 いつもは多少なりとも遠望できる対岸の景色も霞の彼方。 対岸が見えないと、まるで先に大海が広がっているように感じられます。 湖面に浮かぶ水鳥たちの様子も冬とは違って、ひと心地ついているようです。

          霞立つ。の第百三首

          春の月。の第百ニ首

          第百ニ首 火が灯る 悪魔が嗤う口許の 弥生十三 血の色の月 ─── 音無桜花 2024.03.13. 三日月の形をした月が西の空に沈もうとしていました。(月齢の三日月は昨日だったよう) 人間の弱さにほくそ笑んでいる、悪魔の口許のような形の月。 血の赤のような色の月。 少し魅了されて、 少し自分のなかの暗い部分がザワついていました。 月は決して何も語らないのに、その姿形や色味だけで見る者の心を様々に掻き立ててゆきます。 季節は木の芽どき。 私の心も不安定な時期なのだ

          春の月。の第百ニ首

          はるかぜ。の第百一首

          第百一首 はるかぜが光のなかを抜けてゆく 時計の針を少し緩めて ── 音無桜花 2024.03.11. 昨日まで冬の残りの寒さでしたが、私が暮らす地方でもようやく春本番を告げる空気が漂ってきました。 穏やかな日差しに水鳥や野鳥も活発さを増し、啓蟄をむかえて姿を見せる虫の数も一気に増えたようです。 ほっとひと息が入ったような一日。 春の訪れに私の体も反応しているようです。 時間が少し速度を緩めて春を祝いでいます。

          はるかぜ。の第百一首

          夜と雨。の第百首

          第百首 冬色の糸雨へと沈む港町 夜に息づく鳩が鳴いてる ─── 音無桜花 2024.03.05. 暦は啓蟄をむかえました。 冬ごもりから目覚めた虫や小動物が地上へと顔をのぞかせる時期ですが、今日は生憎の雨。 冬を思わせる冷たい雨に、小さな生き物たちも春がお預けとなった事でしょう。 夜になり、外は煙るような銀色の雨が降っています。 夜と雨が街を飲み込んでいるよう。 今日はパートナーの入院前説明会でした。 少し疲れた一日。 夜の片隅から、鳩が鳴く声が聞こえます。

          夜と雨。の第百首