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ふうちゃんになったつもり日記

朝起きたら、隣で寝てたはずのママがいなかった。「ママー」呼んだら、見えない場所で「起きたか」と声がした。たぶん、台所だ。ママは朝、幼稚園でふうちゃんが食べるお弁当をつくっている。ふうちゃんはりんごとウインナーが好き。お弁当じゃなくて給食のときもある。トマトが入っている。トマトを入れないでほしい、と言ったのに、ママは「給食はママがつくっていないから、どうにもできない」と言う。「じゃあ、先生?」と聞くと、「先生もつくってない」と言う。給食を作る会社のひとが作るんだって言う。それは誰なんだろう。

パパが洗面所から出てきた。もうスーツに着替えている。ふうちゃんはまだ制服に着替えてないのに、出かけようとしている。怒った。「待って!行かないで!」泣いた。「ほなのーしないで!」いつも幼稚園に行くとき、パパは途中まで一緒に行ってくれる。途中の横断歩道で、「ほなのー」ってタッチして行ってしまう。ふうちゃんは寂しいけど我慢してる。すごいし、えらい。それなのに、パパはもうふうちゃんを置いていこうとしている。ママが「今日は会社で用事があるから、パパ先に行くんだって」それなら一緒に会社に行きたい。何度も言ってる。でも、パパは一度だけ頭を撫でてくれた後、出かけてしまった。悲しい。悲しい。悲しい。いっぱい泣いた。ママがくすぐってきた。くすぐったい。笑った。またくすぐられた。キャー、と声をあげた。「そろそろ準備しようか」とママが言う。オムツからパンツに着替えなきゃいけない。

幼稚園はなんでパンツじゃないといけないんだろう。ふうちゃんはオムツのほうが好き。座りながらオムツにおしっこをすると、床がちょっとあったかくなっておもしろい。パンツは濡れちゃう。でも、ちゃんとトイレに座ってできるようになって、ふうちゃんはえらいし、すごいとおもう。

制服を着たら、ふうちゃんはストローラーに乗る。ほかのお友達はバスで来ていたりする。家が遠いんだって。前に行ってた保育園のときはふうちゃんも電車で行ってた。遠いからね、とママは言った。ふうちゃんはほんとうは電車に乗りたい。でも、幼稚園は近いんだって。
教室にはF先生がいた。Y先生もいた。やさしくて好き。でも、ママとはバイバイする。「じゃあ、ママにいってらっしゃいのバイバイしてね」とF先生が言った。ふうちゃんはちょっと寂しいけど手を振る。もう大きくなったから。今日もトーマスで遊びたい。

今日は外遊びで公園に行く。いつもの公園じゃなくてちょっと遠い『Aちゃん公園』だった。ふうちゃんの仲良しのAちゃんが遊びに来てくれたから、『Aちゃん公園』。すべり台でいっぱいすべった。ブランコした。追いかけっこした。砂場でAくんが「いっしょに遊ぼう」と言ったから、いっしょにケーキをつくった。楽しい。でも、ママもここにいればいいのにとおもう。パパもいてもいいよ。

お弁当の時間。今日はふうちゃんはお当番じゃないから、皆の前でご挨拶をしない。今日はRくんとAくんだ。ふうちゃんも早くやりたい。明日かな。明日だよ。「すわってくーださい」って言うんだ。お弁当を食べるとき、ふうちゃんはすごく早い。先生も早いねってほめてくれる。カボチャも食べたし、にんじんも食べたし、りんごも、ウインナーも、れんこんも食べた。ふうちゃんはえらい。きっとママも喜んでくれる。全部食べたよっていうとき、いつも喜んでくれるから。お弁当にはトマトが入ってないから、お弁当のほうがいい。

お昼寝の時間、ふうちゃんはちゅぱる。目をぎゅっとつぶったりするけど、なかなか寝ない。タオルを頭までかぶって、寝ない。かくれんぼする。ママはお昼寝したほうがいいって言うけど、寝るのはむずかしい。とりあえずちゅぱる。お友達はあんまりちゅぱってない。皆、ちゅぱればいいのに。今度、ふうちゃんが教えてあげよう。

お昼寝が終わって、しばらくすると、みんなでさよならの歌を歌う。皆でママたちが待つところまで歩いていく。階段もある。F先生が「階段の上り下り上手になったね」とほめてくれる。赤ちゃんふうちゃんはこんなにちっちゃかったから、できなかった。ふうちゃんはもう3歳だからいろんなことができる。
ドアを開けると、ママの姿が見えた。ふうちゃんは走る。「ママ!」って言って走る。ぎゅんぎゅん、ぎゅんぎゅん。ママに手のひらが触れた。ぎゅって抱きしめてもらうと、もう幼稚園はおしまいだ。ママはお菓子を持ってきてくれたかな。食べながら、おうちに帰ろう。

※2018年11月20日に下書きに留めておいたものをちょっと整えてみた。
※「子どもの目線で一度書いてみてほしい」とリクエストをもらったので、ふうか氏の発言をつなぎ合わせて、かつ勝手になりきって書いてみたもの。フィクションです。

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