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授業で木魚を導入した話

今年度、大学の授業で新たなアイテムを導入した。「木魚」だ。

もともと僕は授業で頻繁にグループワークをする。グループワークは時間管理が命だ。制限時間を予告し、その時間がきたら強制的に議論を打ち切らせる。時間管理を徹底しなければ、グループワークは有効に機能しない。

そのときに問題になるのは、どうやって議論を打ち切らせるかだ。「はい、やめ!」と言うのでもいい。しかし、それではなんだか命令口調になって、高圧的である。それに、数百人規模の授業だと、一回言っただけでは伝わらないこともある。

そこでよく使われるのが、金属製のベルである。いわゆる「チリンチリン」というやつだ。これなら一発で教室に音が響く。確実に議論を停止させることができる。とても優秀なグループワークの小道具だ。

しかし、僕はこのベルの音が好きではない。周波数が高すぎて、耳が痛くなるし、何よりまるで動物を管理しているかのような気分になるからだ。

そこで僕は、①周波数が高くなく、②教室に響き渡る音が鳴る楽器を、探すことになった。そして、試行錯誤の結果行きついた答えが、木魚だったのである。

木魚はいい。なんといっても、音が滑稽である。木魚を叩くと「ポクポク」と音がする。この音は、絶妙に気が抜けるにもかかわらず、教室中に音が響き渡る。しっかりと時間管理できるのに、学生を動物のように扱っている感じがしない。このバランスがすばらしい。

そういうわけで、木魚を探し始めたわけだが、残念なことに、木魚は楽器ではなく、仏具である。僕は家からアクセスできる楽器屋を探したが、どこにも木魚は打っていかった。それは仏具店にしか売っていないのだ。

仕方なく、ネットで木魚を購入して、授業で導入した。結論から言えば、すべて僕の予測通りだった。授業を進める上で、木魚は極めて有効に機能した。昨年度は、木魚のない授業など考えられないほどだ。
 
さすが仏具といったところか、木魚を教卓に設置するときには、ぞんざいに扱ってはいけないような気がして、丁寧に置くようにした。そして、なんとなく心の中で一礼してから、授業で使うようにした。本当は紐を通して首から下げ、片手でポクポクならしながらワイヤレスマイクを通して歩きながら使用しようかと思ったが、それではあまりに空也的なので、止めることにした。

同業者には、木魚、大変おすすめである。

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