「人手不足なのに給与額が下がる」は、今後も増える

介護業界、保育業界で働く人々の平均給与が下がっているそうです。毎月勤労統計の所定内給与が、五か月連続して低落しているというのです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32690360W8A700C1EA4000/

しかし、常勤の介護職員の給与額は上昇しているようです。では、何が起きているのか。記事内では、未経験者を雇い、事務、清掃などの単純業務を任せているからだ、と説いています。

つまり、こういうことです。

◎介護職員は、これまで、介護そのものの仕事だけではなく、介護施設運営にまつわるさまざまな仕事を行っていた

◎しかし、人手不足で、資格を持った介護職員はなかなか採用できない。

◎そこで、介護職員がしていた周辺業務を括りだし、その仕事は、新たに採用した「介護職員ではない人」に託し、介護職員は、介護の仕事に専念してもらうようにした。

◎「介護職員」に比べて、「介護職員ではない人」の給与額は低い。そのため、平均給与額は減少した。

このように、現場の状況は、好ましい方向へと変化しています。しかし、数字はマイナスへと動きます。介護職員の給与が好ましからざる状況が生まれているかのようです。

介護業界では、以前にも、求人が大きく増え、採用数も堅調に増えているのに、給与額が減っていく、という状況が生じていました。その時のメカニズムは、

◎新たな求人の多くは、都心部ではなく、郊外、地方で生まれていた。都心部に比べ、、郊外、地方の給与相場は低い。結果として、平均給与が下がっていった。

というものでした。

給与額は、一般的には、需要と供給のバランスを現す指標として捉えられます。需要が増えれば、あるいは供給が減れば給与は増加し、需要が下がれば、あるいは供給が背増えれば給与は減る。人手不足であれば、給与は増える方向に働くはずです。しかし、平均給与額は、えてしてそうした常識とは異なる動向を示します。

今回の報道から見えてくる「現場の工夫」は、決めて好ましいもの。介護職員が採用できない状態を放置せず、業務全体を棚卸しして、人員の最適配置を再設計し、これまでの採用ターゲットとは異なる人材を採用することで、現状を打開するという動きは、今後ももっと高まるはずです。

これからも、「採用が増えたら、給与が減った」という逆転現象が、至る所で見られるはずです。注目していてください。

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