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被災者の命と暮らしをどう支えるのか?社会福祉・地域福祉の視点から(R6/3.21更新)


被災者ニーズを想像する

・被災者の生活に目を向ける

甚大な被害状況や想像を絶する風景にも、災害の発生する前の日常がある。その日常でだれがどのような暮らしをしていたのか、人と暮らしだけではなく、それを支える地域にはどんな社会資源があったのか。人々が楽しみにしていた祭りや行事には文化や歴史がある。それぞれの土地には自慢の観光地や特産品もあったはずである。被災地には、それまでの日常があった。

基礎ゼミ社会福祉学;世界思想社 P97~

災害時対応の法制度

災害法制は、災害別に「予防法制」「応急法制」「復旧・復興法制」の3種類に区別できる。これらの法制度を統括する基本法が、1959(昭和34)年の伊勢湾台風を契機に施行された災害対策基本法である。

(1)災害対策基本法

この法律ができるまでは、日本で災害が発生した場合の行政責任は明確ではなかった。1959年より、国・地方公共団体および関係機関等が体系的に防災計画及び防災体制を敷くこととなった。

(2)災害救助法

発災直後の応急段階で適用される法律である。被災者に対する各種支援対策や避難所、物資の提供など発災直後に必要とされる内容が規定されており、国庫負担についても定められている。

(3)激甚災害法

発災後における復旧・復興段階において適用される法律である。被災者に対する様々な支援や、行政対応について、災害の規模に応じていくつかの基準が定められている。
参考;令和元年版 防災白書|附属資料27 主な災害対策関係法律の類型別整理表

内閣府防災情報より

・災害と対象者

 災害の場合、通常の市民生活を送っている平時において、福祉支援を含む様々な支援を必要とする市民も被災し、苦しい避難生活を送る被災者もいる。
 一方で被災するまではごく通常の市民生活を送っていたものの、災害によって様々な生活支援を受ける必用に迫られる人々も出現する。しかも、それは一気に出現するのではなく、被災後の避難生活を送るに従って時間の経過とともに出現する
 加えて人々の生活を緩やかに支えていたコミュニティの機能も、機能不全となっていることが通例である。
 災害時の支援、とりわけ福祉支援とは、このように被災直後において支援を必要とする被災者および社会そのものに対し、被災後の時間の経過とともに出現する様々な状況に対応する総合的なものでなければならない。

災害対応の視点 ~住民が主体となって避難所を運営する観点~ 

 災害時における福祉対応としては、災害時における社会の脆弱性をいかに克服するため人々と社会の意思としての「回復力(レジリエンス)」がいかに発揮されるかが明確にされる必要がある。

*レジリエンス(resilience)とは、「回復力」「復元力」「弾力性(しなやかさ)」を意味する英単語です。心理学では「精神的回復力」と表現され、困難やストレスをうまく対処し、回復する力という意味で使われます。
レジリエンスが高い人は「レジリエントな人」と呼ばれ、困難な問題や危機的な状況に直面してもすぐに立ち直り、適応していくことができます。
レジリエンスはもともとは物理学の用語で、「外力による歪みを跳ね返す力」という意味で使われていましたが、近年では心理学の分野で「心の回復力」を意味するものとして使われるようになりました。

生成AI

・自主防災組織について
厚労省;自主防災組織について

「法令根拠」
○ 災害対策基本法: 第5条第2項(市町村の責務)、第7条第2項(住民等の責務)、第8条第2項第13号(施策における防災上の配慮等) ○消防組織法: 第4条第2項第27号(消防庁の任務及び所掌事務)、 第52条第2項(教育訓練の機会)
※ このほか、大規模地震対策特別措置法、国民保護法にも規定あり。

 日ごろから地域ごとの防災計画や「要援護者への台帳」の整備など行っており、災害時の避難場所なども明確化されている場所も多くなっている。特に、日ごろの地域活動が有事の住民活動(避難所の設営など)に大きく影響する。また、公権力はない(住民の避難については自主的な活動)と示されてされており、官民がどのような役割分担の元に動くかが大切な視点となる。
 その後の復興などは、住民の「内発的な活動次第」で質が変わってくる。その中でも、平時から地域力が衰退しているといわれる中、どのような働きかけで地域ごとの対策を考慮していくのか。具体的な対策が必要となる。
 
 災害救助法によって、学校などの公共施設が避難所に指定され、避難生活の拠点となる。だが避難所は、災害弱者にとって二次被害を被る場になることも多い。
 一般に避難所での生活は、暑さや寒さ、食事の不十分さと偏り、休息できる空間やプライバシーの不在、医療・介護の不足、衛生状況の悪さなど、さまざまなリスクがある。社会的に弱い層の人々は、これに加えて、困難を被りがちである。例えば健常者を前提とした仮設トイレは、体が不自由な障害者や高齢者の利用を困難にする。同様に避難所の段差などの障壁的も、生活を困難にする。視聴覚障害者や外国人が、必要な情報を得られないということも多い。

現地住民の視点として必要なこと(Xからなちゅ。様の投稿)

・被災者の状態からニーズを描く

 具体的に被災者はどのような状況におかれるだろうか。
被災者の生活に関する多様な側面を6つに整理したものである。

引用;基礎ゼミ社会福祉学;P98~被災者が置かれる状況

 それぞれの側面から生じる課題は、単独で発生するものではない。物理的な側面、つまり家を失ったり、町全体の建物が崩壊し、交通機関や道路、水道、ガス、籠気などのライフラインが機能停止すれば、被災者の生活は激変する。
そのことで経済的な側面や精神的な側面をはじめ、さまざまな影響が出ることが想像できる。これら6つの側面は多様かつ複雑に関連しあっている
 言うまでもないが、実際の災害支援では被災地においてニーズキャッチが行われる。被害状況を早期に把握する意味でも、被災地の行政、社会福祉協議会、NPOなどが地域を巡回する。これはアウトリーチと呼ばれるもので、被災者の声を待つのではなく、つかみに行くという積極的なニーズキャッチである。
これによって顕在ニーズだけでなく、潜在ニーズを発見することができる。

・被災の階層性

自然災害により人々は、社会的に剥き出しの生として危機の前に投げ出される。また、災害ユートピア*と呼ばれる平等で相互扶助的な社会空間も生み出される。
*災害ユートピアでは、多数の犠牲者を出し、一部地域に集中した悲劇を目の当たりにした社会で、人々の善意が呼び覚まされて一種の精神的高揚となって理想郷が出現します。災害直後には緊迫した状況のなかで誰もが利他的になり、自身や身内のみならず隣人や見知らぬ人々にさえ思いやりを示し始めることがあると言われています。
 アンソニー・オリバー・スミス(Smith,A.O.)によると、災害は、災害因(地震、洪水、噴火など)が、社会の構造的諸要素と重なるなかで引き起こされ、その被害は、社会的・文化的な脆弱性(vulnerability)のパターンに沿って生じる。その結果、社会的・経済的に弱い立場にある人々が、特に大きな被害にさらされ、災害弱者や災害時要援護者になりやすい。
 つまり、災害時の被害とは、平時の社会構造上の矛盾が、増幅した形で生じたものであり、人災としての側面をもつ。

・障害者や高齢者、子どもなど身体的に迅速な避難が困難な人々が、大きな被害を受けやすい。

・発災、救助期;神淡路大震災、神戸市では生活保護世帯の死亡率は、神戸市民一般の死亡率の5倍弱にのぼった。また、障害者世帯の7割に住宅の被害があったとされる。
東日本大震災では、岩手県、宮城県、福島県の被災三県で発災一か月後の死亡者のうち、60歳以上が65.2%を占め、障害者の死亡率は一般の2倍だった。   
 障害者の死亡率が高い原因は、肢体不自由者の避難経路の確保が不十分なほか、視聴覚障害者に対する情報伝達が不十分であったことがあげられる。
・避難期では、災害救助法によって、学校などの公共施設が避難所に指定され、避難生活の拠点となる。
 避難所は、災害弱者にとって二次被害を被る場になることも多い。(上記災害対応の視点から)
一般に避難所での生活は、暑さや寒さ、食事の不十分さと偏り、休息できる空間やプライバシーの不在、医療・介護の不足、衛生状況の悪さなど、さまざまなリスクがある。社会的に弱い層の人々は、これに加えて、困難を被りがちである。例えば健常者を前提とした仮設トイレは、体が不自由な障害者や高齢者の利用を困難にする。同様に避難所の段差などの障壁的にも、生活を困難にする。視聴覚障害者や外国人が、必要な情報を得られないということも多い。
このほかにも、復旧期における避難所から応急仮設住宅に移った後の「孤立」の問題や、段差や手すりがないために高齢者や障害者が入浴できない問題により生活水準の悪化を生んだ。「孤独死」という言葉は阪神淡路大震災後から生み出された言葉と言われる。

・個別避難計画作成について
個別避難計画に関する法律や指針等

(内閣府)災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和3年法律第30号)

(内閣府)避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針の改定(令和3年5月)

(内閣府)令和元年台風第19号等を踏まえた高齢者等の避難に関するサブワーキンググループ

(内閣府)個別避難計画の作成に取り組むみなさまへ(※)

・障害の社会モデル

障害は個人に帰属するものではなく、社会の障壁こそが特別なニーズを持つ人を障害者として浮かび上がらせる。
福祉避難所の拡充や緊急医療体制の整備だけではなく、平時の社会制度・環境自体を、人々の社会権を『普遍主義的』に保障する形にすることを通して実現されるだろう。(仁平典宏)

災害とメンタルヘルス

災害への対応は、災害をサイクルとして考えることが重要であり、メンタルヘルスについても同様である。

公認心理師必携テキスト P393

発災からの時間経過により、超急性期(~3日),急性期(~7日),亜急性期(~4週),慢性期(1か月~3年)に分け。災害対応の観点から発災期。緊急対応期、復旧・復興期/リハビリテーション期、静隠期,準備期、前兆期に分けて対応する。

・支援者に対するケア(資料集&マニュアル)

支援者自身も二次受傷の状態に陥る可能性もある。
☑ 災害時こころの情報支援センター災害救援者メンタルヘルス・マニュアル

災害支援者に生じうる心身の反応やその対処についてまとめられており、平時からの活用や啓発が重要と考えている。

☑ 大規模災害時の被災者と支援者のための資料集

被災者支援に関する各種制度の概要

(令和5年6月1日現在)

日本トラウマティック・ストレス学会

〈子どもの心のケア〉
災害を体験した子どものストレスとそのケア:保護者や学校教職員の皆様へ[PDF:111KB]
https://www.jstss.org/docs/2012111400214/file_contents/fujimori0317.pdf

☑ 災害時障害者のためのサイト

☑ 令和6年能登半島地震災害義援金|国内災害義援金・海外救 援金へのご寄付|日本赤十字社(寄付控除あり)

☑ 支援者向け関連資料集のまとめ ~仲本光一Dr~

引用:
・基礎ゼミ社会福祉学;世界思想社 
・福祉社会学ハンドブック;中央法規 
・現代の地域福祉;建帛社   
・公認心理師必携テキスト;学研

こちらから引用させていただきました。

社会福祉、地域福祉の視点から被災者の命の支えのために必要な観点を、いつも自分が手に取る教科書から少しだけまとめさせていただきました。ご覧いただきましてありがとうございました。


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