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【タウリン】長生きする人は摂取している栄養素


今回のnoteで学べること
・タウリンのすべて
・タウリンと死亡率
・浸透圧調整
・胎児と子供の関係性
・生活習慣病の予防


①タウリンとは

基本情報

タウリンとは、含硫アミノ酸の一種で、体内で合成することができます。
体内には約60g程存在しており、主に心筋や筋肉、目の網膜、脾臓、脳、肺、骨髄などに存在していますが、体内の全タウリン量の50~80%は筋肉に存在するといわれています。さらに、免疫細胞にも高濃度で含まれます。
また、無味無臭ですのでドリンクなどに溶かしても飲んでも、違和感なく飲むことができます。

さらに、中国では紀元前から漢方薬の牛黄(ごおう)の成分として、解毒、疲労回復、強心、滋養強壮、長寿 を目的に使用されてきました。
筆者は一度も使ったことがありませんが、この牛黄を摂取すると疲労が一気になくなるらしいです。

豆知識ではありますが、猫はタウリンを合成する酵素を持っていないため、猫にとってタウリンは必須栄養素になります。
キャットフードにタウリンの含有量が明記されているのはこれが理由です。

タウリンの歴史

タウリンは、1827年にドイツの解剖学者・生理学者であるフリードリヒ・ティーデマンと、科学者であるレオポルド・グメリンによって、ウシの胆汁から発見されました。
タウリンという名前は、ラテン語で雄牛を意味するtaurus(タウラス)にちなんでタウリン(taurine)と命名されました。

タウリンと長寿研究

長寿研究ではタウリンの摂取が多い人ほど長寿であると報告されています。

家森幸男氏著の『遺伝子が喜ぶ長生きご飯』では、世界25か国61地域を訪れた家森幸男教授は、世界で集めた血液データや尿検査をもとに長年にわたり栄養と健康の関係を研究され、 その研究結果と進化の歴史から導き出された究極 の栄養素は、タウリンマグネシウムと記してあります。

世界調査でも、タウリン排泄量(≒タウリン摂取量)が世界平均以上の地域を以下の地域と比べると、肥満、高血圧、高脂血症のリスクが明らかに低い事が報告されています。(※1)

このようなことからもタウリンは積極的に摂取した栄養素です。

②タウリンの効果と作用

タウリンの主な効果と作用

  • 心臓機能の増強

  • 高血圧予防

  • コレステロール値の改善

  • 肝臓保護作用

  • 筋肉損傷の抑制

  • 腓返りの改善

  • 目の網膜機能維持

  • ホルモン分泌の促進

  • 交換神経の抑制

  • 抗酸化作用

  • 抗炎症作用

  • 胆汁分泌作用

  • 浸透圧の調整

  • 乳児・子供の成長

  • 解毒作用

挙げ始めたらきりがありません。。。
今回は特に注目すべき働きを解説していきます。

高血圧予防

タウリンは抑制性神経伝達物質として働くとともに、視床下部神経細胞からアルギニン・パソプレシン放出を調節し、腎臓でも水分を再吸収する作用があるため、血圧を下げる効果が期待できます。

アルギニン・パソプレシンとは腎臓でも水分の再吸収促進作用があるペプチドホルモンです。そのため、このペプチドが放出されると血圧が上がります。

メタアナリシスではタウリンの摂取によって収縮期血圧と拡張期血圧が共に減少することが報告されています。(※2)
摂取量は1〜6gとなっておりタウリンのサプリメントの一般的な量になっています。また、摂取期間が1〜12日ということで即効性もありそうです。

コレステロール値の改善

タウリンは胆汁の分泌を促進し、コレステロール値を下げる作用があります。(※3)胆汁の主成分である胆汁酸はコレステロールが材料になるため、胆汁の分泌が促進され排出もされればコレステロール値が下がります。

また、胆汁酸は水に溶けにくく毒性が強い物質ですが、腸に分泌される前にタウリンと結合することにより胆汁中に溶けやすくなり、水溶性が増して毒性が低下します。

皮膚とタウリン

表皮にある顆粒層は、バリア機能をつかさどるタイトジャンクション(密着結合)が多く存在します。

表皮の構造:https://www.sunsorit.co.jp/skincare-labo/skincare_column_18/

この顆粒層にあるタイトダンクションにタウリンが高濃度で存在しているのです。また、タウリンは表皮細胞においてバリア機能を果たすだけではなく、浸透圧調整によって水分を適切に保持させる働きがあります。
この水分保持によって、乾燥によるダメージを防いでいるといわれています。

解毒作用

タウリンは体内に入るアルコールや薬物、体内で合成されたアンモニアなどを分解して無毒化し、尿や便として排出する作用があります。

解毒は主に3つのフェーズに分けることができます。
フェーズ1:有害物質をCYP450で水溶性にする
フェーズ2:グルタチオンやタウリン、グルクロン酸などを抱合する
フェーズ3:尿や汗、便で排出する

タウリンは主にこのフェーズ2で働くことによって、有害物質排出を促します。また、フェーズ1では活性酸素が発生するのでが、ここにおいても抗酸化作用を発揮します。

タウリンを摂取することによってアルコールの解毒作用が強化されたことが報告されています。(※4)

タウリンと免疫

タウリンは白血球に高濃度で含まれています。(※5)
他の組織では1~20μgに対して、白血球には約5万倍の50mM含まれていることからもタウリンが白血球において重要だということが伺えます。

白血球におけるタウリンの働きは、過剰に産生された次亜塩素酸(殺菌成分)がその他の組織を攻撃しないようにすることです。
なので、免疫UPというよりも、免疫調整の作用が強いと考えられます。

③タウリンの摂取方法

タウリンの多い食品

タウリンは特に魚貝類に豊富に含まれます。
特に多いのがサザエやコウイカ、カキ、マグロ、マダコ、ブリなどです。
サザエは100gで約1500mg、コウイカとカキは約1200mgマグロは約900mg、マダコは約800mg、ブリは約600mgとなります。

タウリンは熱に強く、水に溶けやすいため、スープと一緒に摂取するのもおすすめになります。

タウリンの摂取量

摂取量としては、1000〜3000mg程で効果が体感できるでしょう。
寿司屋に行けば1000mg程は摂取することができるので、魚貝類を多く食べる人はサプリメントなしで補うことが可能です。

副作用に関してですが、サプリメントで高容量摂取した時に稀に吐き気や頭痛、胃痛などが報告されています。(※6)
しかし、欧州食品安全機構(EFSA)のガイドラインでは1日あたり最大6000mgが安全摂取量としているため、よほどの大量摂取をしなければ問題ないでしょう。

参考文献

(※1)Yamori Y, Taguchi T, Hamada A, Kunimasa K, Mori H, Mori M. Taurine in health and diseases: consistent evidence from experimental and epidemiological studies. J Biomed Sci. 2010 Aug 24;17 Suppl 1(Suppl 1):S6. doi: 10.1186/1423-0127-17-S1-S6. PMID: 20804626; PMCID: PMC2994368.
(※2)Waldron M, Patterson SD, Tallent J, Jeffries O. The Effects of Oral Taurine on Resting Blood Pressure in Humans: a Meta-Analysis. Curr Hypertens Rep. 2018 Jul 13;20(9):81. doi: 10.1007/s11906-018-0881-z. PMID: 30006901.
(※3)Elvevoll EO, Eilertsen KE, Brox J, Dragnes BT, Falkenberg P, Olsen JO, Kirkhus B, Lamglait A, Østerud B. Seafood diets: hypolipidemic and antiatherogenic effects of taurine and n-3 fatty acids. Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):396-402. doi: 10.1016/j.atherosclerosis.2007.12.021. Epub 2008 Feb 1. PMID: 18242615.
(※4)Kerai MD, Waterfield CJ, Kenyon SH, Asker DS, Timbrell JA. Taurine: protective properties against ethanol-induced hepatic steatosis and lipid peroxidation during chronic ethanol consumption in rats. Amino Acids. 1998;15(1-2):53-76. doi: 10.1007/BF01345280. PMID: 9871487.
(※5)Schuller-Levis GB, Park E. Taurine and its chloramine: modulators of immunity. Neurochem Res. 2004 Jan;29(1):117-26. doi: 10.1023/b:nere.0000010440.37629.17. PMID: 14992270.
(※6)Boccanegra B, Verhaart IEC, Cappellari O, Vroom E, De Luca A. Safety issues and harmful pharmacological interactions of nutritional supplements in Duchenne muscular dystrophy: considerations for Standard of Care and emerging virus outbreaks. Pharmacol Res. 2020 Aug;158:104917. doi: 10.1016/j.phrs.2020.104917. Epub 2020 May 30. PMID: 32485610; PMCID: PMC7261230.


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