4月までに彼氏ができなかったらジムに通おう⑥

【episode5】採算をとりたがる男

いろんな男性に会う中で、ふと、元彼を思い出してしまった。

彼とお別れしたのは、ちょうど1年前のお話。

彼は、製薬会社の営業マン。いわゆるMRというやつ。
それはそれは仕事ができるテキパキ男だった。

(ちなみに、私がこのシリーズをしたためようと思ったきっかけ、まーくんもMRだけど、彼とはライバル会社、笑)

彼は、なんでもスマートだし、いつでもエスコートしてくれる京都出身のはんなり紳士だった。
一生女の子扱いしてくれて、デートの費用は全て彼が持ってくれて、気にする私にコーヒーだけはご馳走させてくれた。
本当に彼氏としては申し分なく、大切にされてる実感もいつもあって、たしかに幸せだったとは思う。

ただ、育ちの違いというか、言葉に表しようのない感覚の違いが積もり積もって、最後はお別れをした。

たとえば、

「友達の結婚式行ってきた〜!!」

と、言った時、最初にどんな言葉が返ってくることを想像するでしょう?

私が欲しかったのは、
「へえ〜いいね!写真見せて!どうだった?」
みたいな他愛のない返事。
それで、新郎新婦の後ろで笑ってる私をアップにして、
「春子が1番可愛いじゃん〜!!」
とか言われたら最高。

というところで、

実際は、こうだった。
「何人規模?」

私が、思わずびっくりして、
「え?、、、、っえ〜っと、たぶん新郎新婦合わせて100人弱くらいかな〜?」
と答えると、

「それは採算取れへんなあ〜
結婚式っていうのは、規模が大きければ大きいほど、リターンが多いねん。200人以上で黒字やな」

この返し。

これ、たぶん、職業病なんだと思う。
常に利益を考える。
悪いことじゃない。
でも、私は、常に損得勘定で動くその感覚に、なんとなく寂しさを覚えた。

私は、ただ、楽しかったんだね〜って
笑って言ってくれるだけでよかったのに。


たとえば、

旅行先で、ガラス張りのレストランから自然公園を周遊するバスが見えたとき。

私はぼーっとそれを見ながら、
「このバスの運転手は、毎回、同じルートを同じ説明をしながら運転してる日々を繰り返してるんだろうけど、なにをやりがいにしてるのかなあ」
と、思っていた。
(これはこれで我ながら、余計なお世話だけど、笑)

同じ時、彼は、
「一回の乗車で20分2500円、朝10時〜16時の営業だから、一回につき何人乗れば採算取れるか?」と、計算していたのだ。

これを価値観の違いって面白いねって笑い合えてたらよかったのだけど。

当時の私は、彼のそんな考えに、無機質で冷たい、という印象を持ってしまった。

利益とか考えて、
損しないように考えるってたぶん生きる術としては必要なことだけど。

人間関係において、特に恋愛において、
損得で計算しようとするのはきっと難しくて。

一見、無駄と思う行動の中に、思いやりとか、温かさとか、愛情を感じるもの。


星野リゾートに泊まる箱根旅行も、夜景の見えるレストランの食事もいらないから、

もし、夜中に地震が来たら、
「地震びっくりしたね。大丈夫?」
てひとことLINEがほしい。

1年に1回の豪華な海外旅行より、
毎日の何気ないLINEとか、私の手料理を食べて美味しい〜って笑ってくれる方が嬉しい。

彼とは、そんな心の温もりを育むことができなかった。



そして、最終的に私は振られた。

特にこれといった理由はなく、ごめんなって言われて泣いた。

「俺から春子を手放すことはない」と言ってくれていたのに。
でも、心のどこかで、いつかこんな日が来ることを分かっていたし、待っていたような気もする。


まあ、今になって、冷静に振られた本当の理由を考えると、
私との恋愛は採算とれなかったんだろうな、と思えるから。

「未練があったり、成就しない経験を持っている方が人生に彩りができる」

誰かが言ってくれてたっけ。

うまくいかなかった過去も愛しい思い出に変えていけるように。

今日もめげずに前向きに、新しい出会いを求めて生きようとする私は、きっと、たくましい。

この記事が参加している募集

今こんな気分

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?