本と大学と図書館と-37- 読書(本を読むこと)の効用 (Fmics Big Egg 2022年1月号)

 ラノベ,コミック,アニメを読んで観る毎日です。学園ラブコメが愛読書なのは,暗い学生時代の反動であり,学びからの逃避なのでしょう。日本のコミックは,海外でも驚くほど多く翻訳・出版され,米国の公共図書館でも所蔵されています。わが国のサブカルは,国内外への重要な文化・戦略資源といえます。日本社会の内実を知らない海外の人たちは,学園ラブコメをファンタジーとして読むのだそうです。FMICSの例会で学生の方から教えてもらいました。なるほど,納得です。他者との対話によるコミュニケーションは,読書による自己との対話(著者との自分のペースでの対話)を超えた驚きに満ちています。

 先月,紹介したように,英語に翻訳された電子コミックを自宅から借りることができます。英語の勉強にもなります。読み方・目的は様々です。読書,本を読むといっても,小説,新聞,雑誌,マンガ,専門書,学術論文から,Webサイト,ブログ,ツイッターなど,文字・活字を中心としたメディアを読む広範囲な行為です。

 年齢による読書の発達段階もあります。幼児期は,言葉を覚えて文字を認識・獲得し,学童期は,学校で言語を体系的に学び,読書の技術を習得します。ここまでの段階を経て,青年期は,語彙の獲得と内容の深い理解です。読書は,自己変革と主体性の確立であり,集中力と理解力が必要です。情報や知識の獲得以上に,何よりも豊かな人間性の涵養が読書の効用といえるでしょう。

 以下の図書は,司書教諭養成科目のテキストの一つで,読書のなかにどのような学びがあるのかも述べています。天道佐津子『読書と豊かな人間性の育成 改訂版』(2011 青弓社) (p.106-110)

「人間以外の動物は生る力の多くを本能として身に備えているが,人間はこれを学びによって獲得しなければならない。人間は世界からの問いかけに答える存在であり,直面する問題を解決しながら生きる。教育を受け,先人の遺した知恵を引き継ぎ,知識を蓄え,生きる技術を磨き,課題に答える。更に,問題の発見・提起,新しい問いを発し,知恵を獲得し後世に遺す。問い・答え・問いのサイクルこそが人間」

 読んで,調べて,学んで,分かって,更に疑問がわいて,愉しいエンドレスが読書の効用です。

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