見出し画像

【鳥獣戯画ノリ】毎週ショートショートnote

その男は骨董屋で、鳥獣戯画を手に入れた。持ち帰ると、額に入れ居間の壁に飾った。

夜。眠っていると、なにやら騒がしいので居間を覗くと、人の背丈ほどあるウサギやカエルが大切な美術品に悪さをしていた。一喝すると霧の如く消えた。男は寺院の僧侶に相談すると、絵に憑いた付喪神の悪戯で魔物だと言う。
僧侶はお経を書いた和紙を水で溶かしてノリを作ってやり、男に額の表面に塗るようにと言って持ち帰らせた。

男がさっそく額の硝子面に塗ると、それ以来カエルやウサギが出てこなくなった。

ある日の夜。家の外で賑やかな騒ぎ声が聞こえる。外に出ると、あのウサギやカエルが、若者たちとラジカセを囲んで、音楽にのって踊っていた。鳥獣戯画を飾ってある壁の裏から抜け出したのだ。若者らに、そいつは魔物だと諭すと「ノリがいい魔物じゃないか」と笑い飛ばした。ノリがいいのか悪いのか、男は眉をひそめて苦笑した。



たらはかにさん企画
#毎週ショートショートnote
お題【鳥獣戯画ノリ】より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?